気付かなかった昨日の事実
(暇だなぁ~……)
相変わらず学校の授業は退屈だ。先生は面白い話を提供してくれる訳でもなく、ただただ教科書に沿った内容を伝えるだけだ。
(勉強つまんねーっ)
僕は教科書を開きながら寝た。
放課後。学校がやっとこさ終わり、部活をしに行く。僕は弓道部に所属しており、一応団体のレギュラーに選ばれるほどだ。弓が格好良いからという単純だけどそれに憧れたからその部活に入った。初めて2年目だけど楽しい。そして僕は休憩中になると部活仲間と喋る。西山という男と仲が良くよく話をするのだが、例の件を言うと、
「え!? あのアイドルがお前の家にいるのか!?」
「しっ、馬鹿っ。声がでけーよっ」
「しかし何でまた?」
「それはだな、善文から130円借りたばっかしに、いままでの積年の頼み事に堪忍の尾が切れて、僕の頼み癖を治すべく監視役として送られてきたんだ」
「加藤君とは小学校からの中だっけ?」
「そうそう」
「ふーん、積年の頼み事ねぇ」
「そうそう」
彼を見ると幾分ニヤニヤしていた。
「な、なんだよ?」
「いや、何か面白い話になってるなーっと思ってな」
「面白くねーよ。どこが面白いんだよ。ずーっと付き回されているから気になって気になって」
「ふーん、そうか」
「そうだよ」
「けどもし仮にキチッとした監視なら今もちゃんと監視しないと駄目だろ?」
「え? そりゃあまあ確かに。けどそれは彼女だって部活があるから」
「ふーん。まぁ、俺には関係ないから良いけど?」
「何が良いんだ!? こっちは困ってるんだぞっ」
「それより磯山。部長が睨んでいるぞ」
「え? あっ……」
山神が冷めた目でこっちをじっと見ている。部長の名は山神美沙、鬼軍曹と異名を持つ怒ると怖い人。
部活が終わり、はあとため息を吐きながら家に帰ると、鍵が開いていた。ただいま~っと声をかけると、リビングの方からはーいと言う声が聞こえてきた。ぱたぱたと可憐ちゃんは玄関に向かう。
「お帰りなさ~い」
「鍵かけとかないと少し物騒じゃないか?」
「うーん、まぁ少しだけなら大丈夫かなと思って」
「さっき帰ってきたのか?」
「はい。買い物とカレーを温めている所です」
「まぁ、少しだけなら大丈夫かな? けどまあそろそろ予備キーを作った方が良いかもな」
「そうですね。そうしますか」
そして僕は自分の部屋に行って荷物を置き、私服に着替えてリビングに行くと、カレーの良い香りが漂っていた。
「良い香りだ」
「二日目のカレーですからね。昨日とはまた違ってます」
「あれ、そのエプロン……、家にあったっけ?」
「我が家から持ってきました」
「なんか実家みたいだな」
僕は冗談交じりで笑いながら言ったが、彼女の顔が急に紅くなって、
「実家だなんて、そんなっ! まるでもう結婚しているみたいじゃないですか!」
目は泳いで、口をごにょごにょさせる。ん? 何か変なこと言ったか?
「ま、まぁ、あれだ。お腹すいたから、料理頼む」
「! はい!」
そして嬉しそうに鼻歌を歌いながらキッチンへと向かう。そしてよく見ると後ろ姿がまだ学校の制服だった。着替える暇なかったのだろうか? それにしても制服にエプロンという組み合わせ……、何かエロいな。そしてカレーが出来二人で食べた。ご飯を食べ終わるとリビングでのんびりする。しかし、
「あのさ、可憐ちゃん」
「はい、何でしょう?」
「制服じゃあくつろがないだろ? 着替えたら?」
「え!?」
「え?」
「制服姿お気に召しませんでしたか!?」
「いや、そんなことないよ。眼福でし……いや、何言わせるんだ!?」
「……だいたい男の人は制服萌えと……」
「え? 制服萌え?」
「……まぁ、分かりました。着替えてきますね」
そう言ってリビングを出て数分後、私服になって戻ってきたが上着は普通の白のシャツだが、下はかなり際どい短パンを穿いていた。
「……」
「どうしました先輩?」
「少しズボン短くないか?」
「脚を長く見せるためです」
「そ、そうか……」
「それと夏だから暑いですし」
エアコンしているのに?
「何ですか~、気になるんですか~?」
彼女はニヤニヤしている。
「別に?」
「ふーん」
そして別の気になったことを訊く。
「なぁ、いつまでこの生活が続くんだ?」
「まぁ、それは先輩の頑張り次第ですね~♪」
あまりにも漠然とした内容に少し困惑する。
さて各自風呂に入り(流石に今日は別々だった)、時間も23:00を迎える。
「そろそろ寝るか」
「はい。そうですね」
僕は自分の布団をリビングから自室に持って行くと、彼女も後ろから付いてくる。
「……あの~、可憐さん?」
「はい、何でしょう?」
「何で僕の部屋へ一緒に付いてくるのかな?」
「監視役ですから」
「いやいや、そこまで付いてこられても困るというか……」
「大丈夫ですよ。私も一緒に寝ますから」
え? 今何て? そこまで頭が回ってなかったから何も思わなかったが、そう言えば昨日彼女はどこに寝たんだ??
「昨日可憐ちゃんはどこに寝たんだ?」
「え? それは~……」
可愛らしいパジャマ姿で少しもじもじする。ま、まさか……、
「一緒に寝ました」
やっぱりーーーっ!
「だ、駄目じゃないか! 付き合ってもいない年頃の二人が一緒の布団の中でね、寝るなんて!」
「布団がないんだから致し方ありません」
うーんという表情をしながら、仕方なさそうに腕を組む。本当にそう思っているのかこいつ……。
「で、僕の部屋に来たのは?」
「もちろん一緒に寝るためです!」
それはいくら何でもまずい。考えろ考えろーっ。他に方法は……、あっ……。
「ありがとうございます……」
彼女はブスッとした顔で僕が渋々ベッドの横に敷いた来客用の布団の中に潜る。
「先輩の温かい布団が……」
なんかブツブツ言っているっ。
「良いか? 僕の布団の中には入ってこないこと、分かった?」
「……」
返事なしかよ!? その返答を待っても仕方ないので、部屋の電気を消して僕達は寝た。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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