略奪
それから早くも一週間がたった。俺は全ての準備を終え、アバターと戦った場所に来ている。時間はまだ朝の5時だ。空が白み始めるころだ。誰もいない、わけじゃない。目の前には多くの軍人、警察官がいる。そして後ろには頼れる相棒の和真、そしてその仲間たちがついている。しかし、数だけで言えば圧倒的に不利である。しかし、俺には知っての通り、最強クラスの能力が数多くある。
「お勤めご苦労様です。俺がここに来ることわかってたんですね」
「ええ。久しぶりですね、WHOLE。」
「えーっと。誰ですか?」
「私はNEXUS、一つあなたに提案があります。ここは手を引いていただけないでしょうか。」
「なぜだ?愛知の支配のために来たのにそれでは本末転倒だろ?」
「こっちは、最終防衛ラインなんですよ」
「知らねぇよそんなこと」
ああ、これでは相手のペースに飲み込まれてしまう。
「和真、自警団と少し下がってくれないか?」
「別にいいが?」
「どうしたんですか?怖気づいたんですか?」
「そんなものはみじんも感じていねぇよ。少し、手品を見てもらおうと思ってね」
「いいですねぇ。どんなですか?」
「てめぇらが一瞬で消えるマジックだ」
「その前に、片づけてしましましょう。総員総攻撃準備」
「技名を考えるのはめんどくさいが、これだけは決めていた。星空襲・改」
そういって俺は手を空に掲げた。そして光の矢が空へと昇っていく。降り注ぐまでには一分はかかる。元からこれが狙いだが。
「美しいですねぇ。でも、攻撃してこないなら怖くないですね」
「「総員総攻撃!!」」
そう同時に言葉を発した。その掛け声をきっかけにいろいろなものが飛び交っている。氷や炎、宝石、能力を持たない者の肉弾戦。飛び交う鮮血。味方の怪我をしたものに触れてどんどん回復させていく。
「戻って来い。危ないから」
「まだ一分もたってないですよ?」
「いいから」
そう俺が言うと全員戻ってきた。
「もうあきらめたんですか?」
そういっていたが、太陽の光で気づかなかったのだろうか、降り注いだ光の矢が当たり、後ろで多くの警察や軍人が倒れている。
「零度くん。頼んだ」
「はぁ、わかりました。氷原・牙」
そういって、地面に手をつけ大きく上にあげた。すると地面から大きな口のように氷が出てきて相手にかみついた。一度つかんだ獲物は放さない猛獣の牙だ。
「流石、零度くんは強いな。」
「さっさと行きますよ」
そういいながらも頬を赤らめていた。しかし、そこで異変に気が付いた。空が異様に近く感じた。
「空が近い。これは、」
そういって、俺は刀を取り出し切り込んでみた。固い。これは空間が歪んでいる。空間ということは。
「伏せろ。」
「え?」
「伏せろ!死ぬぞ!」
そういって、飛んできた何かに水をかけた。
「それはもう対策済みやで」
さらに、空中から突如として刀で攻撃してきたそいつに俺は見覚えがあった。取り敢えず、俺は、剣道部時代の感覚で鍔迫り合いに持ち込んだ。
「やるのう」
「久しぶりだな、檸檬」
「せやな。かりを返しにきたで」
「ああそうかい。タイマンをはるか?」
「よさそうやな。」
そういって俺は謎の空間に連れていかれた。連れていかれる直前に和真に、全員死ぬなと伝えた。
「これで邪魔者はいないで」
「ああ。面白いな。」
「何がや?」
「能力の使い方がだよ」
「そうか?まあ、前より力を付けたさかいな。」
「では、その力見させていただこう」
「ほないくで。滅覇波・朧」
視界が歪んでうまく檸檬を見ることができない。それと同時に体が圧迫される。
「うっ。」
「どや?辛いやろ?」
「大したことねぇな・・・」
骨が軋んできた。
「時空断」
それと同時に斬撃が飛んできた。時空系の能力か。それなら、水と風を合わせれば、どうにでもなる。そして、俺は、右手で暴風を起こして、左手で水を放ち、言うならばドラム式の洗濯機の中のように攻撃をした。
「な、なんや!?うそやろ?」
檸檬は風に巻き込まれ飛ばされていった。
「俺をなめすぎたな。」
「まだや、わしはまだ、負けてはいな・・・」
地面にたたきつけられた檸檬は跡形もなく消えていった。
「これは、アバターの時と同じか」
「時空断」
「時空弾」
「今度は二人かよ」
再び斬撃と砲弾のようなものが飛んできた。
「その技はもう見た。烈閃」
俺は持っていた刀に光と熱を宿らせ、斬撃をはなった。それは簡単にはじき返された。
「やるな。」
そのまま、二つの攻撃が飛んでくる。
「死ぬがよい。」
「せやな、それがいい」
そんなことを二人の檸檬が言ってくる。ああ、頭がこんがらがってくる。
「スゥッ。あ”----------------------------------------------!!うるせぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そう大声で叫んだ。のどが爆発したかのように痛みが来る。それと同時に空間の崩壊が始まる。崩壊しきった空間から抜け出した。そこに広がっていたのは倒れている人たちだった。関西軍も、自警団も全員倒れている。のどを回復させてから、
「和真。この程度で死んでないよな?」
と問いかけたが返事がなかった。
「はぁ。仕方ない。」
俺は自警団に向けて木を伸ばし、触れて回復をさせた。死んではいないようだ。気を失っているだけのようだ。傷だけは治しておいた。
「じゃあな。」
そういって、県警に向かっていった。檸檬は倒せていない。
県警の前に来たが、あり得ないほど静かだ。気味が悪い。上空から行こうかと思ったが、体力はなるべく残しておきたかったので、エレベーターを使うことにした。
県警の中には数名の警察官がいた。といってもまだ一回だが。
「いらっしゃい。お前が桐一葉だな」
「ああ、そうだが?」
「お前を逮捕する。裂襲霊極」
そういいながら拳銃から撃ってきた。
「星襲」
そういって、手から光の矢を何本も飛ばす。
「光属性か。ならおれが適正だな」
「お互いに弱いんだから気をつけろよ」
「何を言ってるんだ?属性?」
「属性というのは、能力の得意不得意のことを分かりやすくしたものだ」
「そうか。でも、関係ない。」
俺は目に力を込め、警察を見た。
「おい、目、目が赤くなってるぞ。充血か?まあいいや。裂襲霊極。あれ?発動しない。なんで?」
「夜句茂多菟 伊弩毛夜覇餓岐 菟磨語昧爾 夜覇餓枳都倶盧 贈廼夜覇餓岐廻(やくもたつ いずもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを)」
「は?わ、和歌?何の和歌だ?」
「降神(身):須佐之男命」
「す、スサノオ?神か?」
驚いている警察の前で、神居を発動した。
「天叢雲剣:暴風雨」
一階にいた警察官を一掃して、四つの能力を組み合わせて作った、最強の能力“須佐之男命”。この状態を維持したまま、最上階を目指す。
そこからはイージーモードだった。どんな能力者も一撃で倒してしまえるだけの力だったからだ。そして、苦労することなく最上階に着いた。
「来たのね。」
そううしろからこえをかけられた。
「ああ。お前の座をいただく」
「できるといいわね。祈祷:守壊」
それと同時にFATE、雪野ジュリーの姿に変化が起こった。彼女の周りに結界が張られる。
「天叢雲剣:八岐大蛇殺し」
刀を結界に向かって振ったが、攻撃が通っていない。というか、反動ダメージがやばい。腕がもげそうだ。
「どう?斬れないでしょ?」
「ああ。一撃ではな。天叢雲剣・星襲」
再び攻撃に転じた。今度は光の矢とともに攻撃する。すると少しひびが入った。
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「え、だ、ダメ!わ、割れる!」
そのまま押し切り結界を割った。そして、ジュリーの首に刀を当て、
「お前の負けだ。あきらめて愛知を渡せ。」
といった。
「わ、わかったわ。」
そうして、愛知の支配権を得た俺はすぐに、日本の統一のために動き始めた。
須佐之男命の時に使った能力:ZEUSの能力
旋風
水
刀工