エピローグ03
地下深く、コンクリートの壁で覆われた広大な部屋。床には配線が張り巡らせされ、機械の駆動音、水中で泡の音がよく響く。つんと耳につく嫌な音だが、もう慣れたものだった。そもそも中身のことを考えると胸が高鳴り、不思議と高揚感に見舞われる。
それは自身の研究の集大成であるだからだろう。
「………もう少し」
無数の配線は一つの培養ポットにすべて接続されている。
長身の白衣を着た男は静かに笑う。培養ポットの薄紅の透明水の中、体を丸め屈める裸の女性にむけて。
「もう少し」
ここまで完成させるまでの道のりは長かった。
「『白蛇』さん。あなたの意思は、目的は、永遠の命とともにもう時期叶いますよ」
『白蛇』ーー培養ポットの中の女性に確かに語った。
目を細め、懐かしむように。
「『御影』くんに『鳥居』くんは実に働いてくれた。〈天女〉の目は勿論だが、『鳥居』くん。君は『御影』くんを救い、そして殺してくれた」
『御影』くんは情が移りかけていた。こう見えても根は忠実、優しくされれば好いてしまう。『白蛇』には及ばないが、だからこそ『逢瀬』も『御影』も自分の手を煩わせず死へと誘うことができた。
すべて計画通りに事は進んでいる。
「『御影』くんにとっても次に『白蛇』の姿を見れば泣いてしまうだろうから、魂だけでも『逢瀬』くんと会えるといい」
ただ、一つ問題があるとすれば『冥土』のことだ。薄々感づかれていたことは分かっている。だからこそ、今回の任務で弟殺しをさせ、自殺させようとした。
が、人の心というのはかんたんには動かせないらしい。
当然も当然。
「まあ、戦争の終わりはもうすぐさ」
とは言ってもまだ一手足りない。
私の目的は『白蛇』の願いを叶えることだから。願いは壮大だが、叶わなくもない。故に地道に積み重ねてきたのだ。
特に、今回のことはプラマイゼロである。党首からは信用はもぎ取ったが、『冥土』あたりからは不信感を持たれたはずだ。だが、立場上はこちらが上なので問題はない。
だから次は殺人鬼だ。殺人鬼は少数だが、ここの質が非常に高い。そして家族としての繋がり、結束がある。弱点でありながらも、強者たる特徴であるのだ。恨みを買えば、こちらが消され元も子もない。
できれば殺人鬼と呪術屋あたりを当たらせ、戦力を削りたいところだ。呪術屋が潰れてくれれば大いに助かる。
「……………やるべきことは決まった」
白衣の男ーー『再開発』から笑みは消える。
陰謀は計画を慎重に、狡猾に、練る。
愛しき恩師『白蛇』の為に。
「さあ、第二の小さな戦争ーー殺人鬼VS呪術屋の殺し合いを始めよう」




