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War of end world~落第殺し屋の岐路~  作者: 宝来來
一章 『御影』と『鳥居』
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新任務

顔だけ後ろに向けて楽しそうに笑った。恤はそんな右往博士にビクリと体を震わせて、御坂の後ろに隠れる。無理もない。悪魔のように、今の状況を楽しんで笑っているのだから。


 「20年前…………いまその、苦綯さん?は何歳なんですか?」


 少なくとも、20歳以上なことはわかる。御坂も詳しく知ろうとは思わなかった為、多少の興味はある。


 「ふうむ、些か女性の年齢を口に出すのは難しいものだ。自分で知っててどうかと思うがね。まあ、殺人鬼というのだから人間ではなく鬼だな」


 「鬼…………えと、結局何歳、なんですか?」


 「彼女は今29歳だ。だから、9歳だな」


 「!!」


 9歳。まだ少女の年齢だ。恤より6つ下で、本来なら小学生だ。


 (でも意外だな………三十路には上がってるもんかと思ってた)


 老けているわけではないが、妙に大人びている気がしたから。それに、なにか知ってるような気がした。御坂が感じただけだが。


 「それに苦綯白羅はあの戦争を生き抜いたわけだからね」


 「戦争…………………?」


 恤は御坂の方へと疑問を問うた。


 (恤は知らないのか…………でもこれは知らないほうがいいもんだし……)


 御坂は右往博士に助けを求める。話していいものか、と。本家が話してないなら、ここで話すのは規定違反になる。


 「『御影』くん、どうせいつかは知られる話なんだから言ってやりな」


 御坂は呼吸を整えて、いつもより少しこわばった様子で言った。


 「殺し屋と殺人鬼と呪術屋の戦争のことだよ。数年前までは規模も馬鹿でかかった。だから、そこらじゅう歩けば、死体だらけさ。今となっては大人しくなったもので…………………俺から言えるのはそこまでだ」




 ようやくついた部屋。そこには、他の部屋よりは片付いているが、辺りには段ボール箱が重なり、机には資料が山積みにある。荷物が積まれたところから、右往博士はガサゴソとしばらく探して、お湯沸かしポットとマグカップを3つ取り出した。マグカップは簡易キッチンで軽くゆすぎ、お湯を沸かした。


 「さあ、座ってくれ。話があるといっただろう?」


 どこに座るか迷ったものの、椅子を惹かれたのでそこに座ることにした。御坂の隣には恤が座り、向かい合う形で右往博士がいた。


 「新しい仕事の話だよ、二人とも」


 「「…………………」」


 重い空気が流れる。前回、仕事内容は達成したものの、苦々しい結果だった。それについては報告されていないので、安心といえば安心だ。逆に不安になってしまうくらい。


 「前回の仕事でのヘマは誰がかばってくれたんですか?」


 「君の知ってる人だよ。よく見知った、『御影』くんが後ろめたくなっている人さ」


 「…………………………………………またかよ」


 御坂は後歯を強くかみ、うつむく。そんな御坂を不安そうに見るのは恤だ。恤は御坂の顔から読み取れる感情を知っていた。似たようなことが何度もあった。その中でも格段、意思が、感情がはっきりと感じられた。


 「『冥土』さん、ですよね?あの人………なにかと色々助けてくれてるん、です?」


 控えめに恤は言った。仕事のことで心が縮こまっている上に、無意識だろうか。恤までも下を俯いた。


 「余計なお世話だよ。助けられているのは嫌だけ

ど」


 御坂は吐き捨てるように顔を歪めた。

 これで『冥土』に助けられるのも何度目かわからない。そのたびに、自分の負の感情が表に出てしまう。劣等感、優劣感ーーーーーーただただ惨めである。


 そんな御坂をみて、楽しむように笑う右往博士。趣味が悪い。この人はわざわざ人をおちょくらないと、話が進められないのだろうか。御坂は睨みつけた。


 「おおっと、そんな目で見ないでくれ。悪気はないのさ」


 「……………………」


 右往博士はここでお湯が湧いたことを確認して、コーヒーをそそぐ。近くにあった小瓶から角砂糖を取り出して、自分のに一つ入れた。御坂と恤のも入れて、角砂糖とセットに渡された。


 「本題に入るよ。君たちに頼みたい仕事は〘天女〙の目の強奪だ。詳しい資料は渡しておくから、目を通しておいてくれ」


 そう言って、山積みの資料のうちのかなりの厚さの資料を渡される。御坂はそれをパラパラと読んでいる。恤もはじめのうちは一緒に見ていたが、飽きてしまったのか右往博士の方へ向いた。


 「…………一つ、いいですか?」


 「ん?なんだい、『鳥居』くん」


 「戦争について知りたい、です。これ以上聞くことは駄目、です?」


 先程は追求しようと思ったところを右往博士に止められた。君はまだ知らない方がいい、と。


 (なんの為に私は戦っているのか、知りたくなったです。不躾だって分かってるけど……姉についても分かるかも)


 恤はスカートを握りしめ、息を呑む。しかし、返ってきたのは拍子抜けな声だった。


 「話すのは構わない。けど、君の相方くんが話したくなさそうだからね」


 恤はすぐさま御坂を見る。御坂の表情は強張り、なにか悔やんでいる、悩んでいるようだった。


 「それはそれ、あれはあれ。ということで、早速仕事に行ってもらおうか」


右往博士は任務を復唱する。



「〘天女〙という化けの皮を被った化け物の目の強奪にいってらっしゃい!」




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