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War of end world~落第殺し屋の岐路~  作者: 宝来來
五章 御坂と恤
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「…………『御影』さん?御坂さん!!??」


 あんなによろけていたのに、大怪我をしていたのに。腰から崩れ落ちる御坂を受け止める。


 弓矢は心臓をひと差しに、ただでさえ大怪我なのにその姿は余計に弱々しく映る。

 火傷しただれた右手の皮膚、きれいな顔立ちには掠り傷。徐々に侵食する心臓部の赤は着物に滲みてゆく。


 御坂を受け止める手が震える。

 視界も黒く染まり、

 ピントが合わない。

 呼吸が荒く、

 バクバクと心がうるさい。


「なんで!?休んでくださいって…!」

「ばぁーか…『鳥居』。俺が、居なきゃ………任務、失敗して…んじゃ、ん………」

「そうゆうことじゃなくて……!!」


 熱く、なる。目から、自然と涙が出る。

 恤の嗚咽に御坂のとぎれとぎれに答える。恤の涙を拭うように、頬へと手が伸びる。まだ、あたたかいがきっとすぐに熱は冷めるだろう。


 同時に、夢から覚めるときでもある。

 本当の、巣立ちになるのだろう。


「『鳥居』は……『逢瀬』とちが、って…とても弱、……くて泣き虫だよ………いつも苦労、してる」

「うぐっ……っ」


 まだ、まだ、

 たくさん触れていたい、話していたい。

 支えてられたい。

 たくさん、たくさん甘えたい。


「だ……けど、たまらなくそこが好き、だよ」


 大好きな人は皆、私をおいてゆく。

 いつも、いつも。

 私を守って、死んでゆく。


「俺の………人生、何…度救われたか分からないほど………恤、感謝を」


 頬から離れそうになる力ないその手を両手でしっかりと握る。


「私っ……こ、そです……!」


 だけど私は、一人になるわけじゃない。

 こんなにも私は愛されて、幸せものなのだ。


 悲しいけど悲しくない。精一杯の強がりでいっぱいの涙を噛み締める。お姉ちゃんに、御坂産に救われたこの命。繋がなければ、私、も。


「…………御坂さんが、大好きです。お姉ちゃんと待っててくださいです。私の、私が選んだ私だけの生き様をちゃんと…………見てて、くださいね」


 最後、本当の最後。


「私はお姉ちゃんみたいに強くて優しい女性に、御坂さんのように誰かを守り弱い私なるのです………!」


 だから、安心して。

 後悔なんて、しないで。

 笑顔でーーーーーーーーー






 死の間際、人は何思うのだろう。

 御坂は大事な人のことだった。


 薙灘御坂は夢の境にいた。否、死の境のほうが正しいだろう。

 真っ白な世界で懐かしい翡翠の髪の女性を見かける。その背中は華奢で繊細で、触れれば壊れてしまいそうなほどに儚い。だけど最後まで強くあった女性だった。


「約束は守ったよ、『逢瀬』」

「後悔しない生き様じゃなくて、死に様だったですね?」

「でも約束は約束だろ?」

 死に別れてあの日の約束。

 『逢瀬』の妹、恤を助けてあげることーーーだった。

「けど死ぬなんて残念」

「それしか方法がなかったんだ。仕方ないだろ?」

「でも」

「でも後悔はないよ」

「本当?」

「本当………あっ、けど一つ言えば」

「いえば?」

「黄泉姉さんが心配かな。俺を愛してくれてた人だし、ショック受けてないか心配。弟殺しをしたようなものだからな。戒兄さんはきっと大丈夫だと思うけど……」

「あの過保護なお姉さんのこと?いいなぁ」

「なんでだ?」

「だって『御影』はお姉さんのこと心配してるってことは好きってことでしょう?」

「いきなりぶっ飛ぶな……まあそうだけども」

「相思相愛はいいこといいこと♪」


「調子いいなぁ。『逢瀬』はお兄さんがいるんだろ?そことはどうなんだ?」

「うちは仲悪いよ?良くも悪くも明南はすごく真面目だったから、ちょっと私のこと嫌ってたみたいだし」

「……辛くはなかったのか?行為を向けられて伝えられて……とかは嬉しいことだろ?逆に嫌われてたら悲しい」

「そうだけど、私には『御影』がいるのです。『御影』は私のこと、好きなんでしょう?」

「いいや違うね」

「えー、傷つくなぁ」

「俺は『逢瀬』を愛してるから」

「…………ふふっ、なかなか照れること言ってくれますな」


「ーーー後悔はないって言ったけど『逢瀬』はどうだったんだ?」

「なんで今更?別に私は後悔なくしてずっと生きてきた」

「でも心残りとかはありそうだ」

「ん、一応あった。だけど、約束したでしょう?妹のことは愛する『御影』に任せたからね」

「他力本願」

「仕方ないです。これが『御影』が愛すべき私なの」

「………………恤は、俺達が思っているよりも弱くて脆くてーーー成長しがいのある子だったよ」

「うん。私もそれは予想外。なんだか寂しーな、置いてれちゃった気分」

「俺も今からは置いていかれる側だから問題ない」


 一人より、二人だろ?

 特に愛し合う二人なんだから。

 寂しさも怖さも分けていける。


「頑張ってほしいな」「うん、応援しよ」


 最後、本当の最後。

 御坂は無事、邇亜との逢瀬をしともに誓いあった。


 永遠の愛、不滅の絆。

 そして、何よりも大事な宝物の運命を祈る。


 「大好きだよ、さようなら」

 「大好きよ、さようなら」


 ーーーーーーーーーまた会おう、と。

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