エンドロール
「…………『御影』さん?御坂さん!!??」
あんなによろけていたのに、大怪我をしていたのに。腰から崩れ落ちる御坂を受け止める。
弓矢は心臓をひと差しに、ただでさえ大怪我なのにその姿は余計に弱々しく映る。
火傷しただれた右手の皮膚、きれいな顔立ちには掠り傷。徐々に侵食する心臓部の赤は着物に滲みてゆく。
御坂を受け止める手が震える。
視界も黒く染まり、
ピントが合わない。
呼吸が荒く、
バクバクと心がうるさい。
「なんで!?休んでくださいって…!」
「ばぁーか…『鳥居』。俺が、居なきゃ………任務、失敗して…んじゃ、ん………」
「そうゆうことじゃなくて……!!」
熱く、なる。目から、自然と涙が出る。
恤の嗚咽に御坂のとぎれとぎれに答える。恤の涙を拭うように、頬へと手が伸びる。まだ、あたたかいがきっとすぐに熱は冷めるだろう。
同時に、夢から覚めるときでもある。
本当の、巣立ちになるのだろう。
「『鳥居』は……『逢瀬』とちが、って…とても弱、……くて泣き虫だよ………いつも苦労、してる」
「うぐっ……っ」
まだ、まだ、
たくさん触れていたい、話していたい。
支えてられたい。
たくさん、たくさん甘えたい。
「だ……けど、たまらなくそこが好き、だよ」
大好きな人は皆、私をおいてゆく。
いつも、いつも。
私を守って、死んでゆく。
「俺の………人生、何…度救われたか分からないほど………恤、感謝を」
頬から離れそうになる力ないその手を両手でしっかりと握る。
「私っ……こ、そです……!」
だけど私は、一人になるわけじゃない。
こんなにも私は愛されて、幸せものなのだ。
悲しいけど悲しくない。精一杯の強がりでいっぱいの涙を噛み締める。お姉ちゃんに、御坂産に救われたこの命。繋がなければ、私、も。
「…………御坂さんが、大好きです。お姉ちゃんと待っててくださいです。私の、私が選んだ私だけの生き様をちゃんと…………見てて、くださいね」
最後、本当の最後。
「私はお姉ちゃんみたいに強くて優しい女性に、御坂さんのように誰かを守り弱い私なるのです………!」
だから、安心して。
後悔なんて、しないで。
笑顔でーーーーーーーーー
死の間際、人は何思うのだろう。
御坂は大事な人のことだった。
薙灘御坂は夢の境にいた。否、死の境のほうが正しいだろう。
真っ白な世界で懐かしい翡翠の髪の女性を見かける。その背中は華奢で繊細で、触れれば壊れてしまいそうなほどに儚い。だけど最後まで強くあった女性だった。
「約束は守ったよ、『逢瀬』」
「後悔しない生き様じゃなくて、死に様だったですね?」
「でも約束は約束だろ?」
死に別れてあの日の約束。
『逢瀬』の妹、恤を助けてあげることーーーだった。
「けど死ぬなんて残念」
「それしか方法がなかったんだ。仕方ないだろ?」
「でも」
「でも後悔はないよ」
「本当?」
「本当………あっ、けど一つ言えば」
「いえば?」
「黄泉姉さんが心配かな。俺を愛してくれてた人だし、ショック受けてないか心配。弟殺しをしたようなものだからな。戒兄さんはきっと大丈夫だと思うけど……」
「あの過保護なお姉さんのこと?いいなぁ」
「なんでだ?」
「だって『御影』はお姉さんのこと心配してるってことは好きってことでしょう?」
「いきなりぶっ飛ぶな……まあそうだけども」
「相思相愛はいいこといいこと♪」
「調子いいなぁ。『逢瀬』はお兄さんがいるんだろ?そことはどうなんだ?」
「うちは仲悪いよ?良くも悪くも明南はすごく真面目だったから、ちょっと私のこと嫌ってたみたいだし」
「……辛くはなかったのか?行為を向けられて伝えられて……とかは嬉しいことだろ?逆に嫌われてたら悲しい」
「そうだけど、私には『御影』がいるのです。『御影』は私のこと、好きなんでしょう?」
「いいや違うね」
「えー、傷つくなぁ」
「俺は『逢瀬』を愛してるから」
「…………ふふっ、なかなか照れること言ってくれますな」
「ーーー後悔はないって言ったけど『逢瀬』はどうだったんだ?」
「なんで今更?別に私は後悔なくしてずっと生きてきた」
「でも心残りとかはありそうだ」
「ん、一応あった。だけど、約束したでしょう?妹のことは愛する『御影』に任せたからね」
「他力本願」
「仕方ないです。これが『御影』が愛すべき私なの」
「………………恤は、俺達が思っているよりも弱くて脆くてーーー成長しがいのある子だったよ」
「うん。私もそれは予想外。なんだか寂しーな、置いてれちゃった気分」
「俺も今からは置いていかれる側だから問題ない」
一人より、二人だろ?
特に愛し合う二人なんだから。
寂しさも怖さも分けていける。
「頑張ってほしいな」「うん、応援しよ」
最後、本当の最後。
御坂は無事、邇亜との逢瀬をしともに誓いあった。
永遠の愛、不滅の絆。
そして、何よりも大事な宝物の運命を祈る。
「大好きだよ、さようなら」
「大好きよ、さようなら」
ーーーーーーーーーまた会おう、と。




