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War of end world~落第殺し屋の岐路~  作者: 宝来來
五章 御坂と恤
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親友の日笠

 数時間後、やつれた様子で御坂は高校へ登校した。睡眠不足もあるが戒兄さんと黄泉姉さんの根気強さに参ったのだ。黄泉姉さんと話していると突然の戒兄さんが割り込み、兄姉の喧嘩、そして仲裁を何度もした。何より質が悪いのはどうおもう?!とか矛先向けてくるところだ。居心地が悪いったらあらしない。そして今、長話になるところを学校の後でと無理やり逃げてきたのだ。


 逃げたけれど、少しは前進できたと内心は思っている。この調子だとこちらに疲労が貯まるので、本当に少しずつの成長を図りたいところである。


 そして朝、なんだか違和感を覚える。そういえばいつも朝一に挨拶に来るおちゃらけたあの日笠を見かけないのだ。日笠湊は御坂の中で友人的存在にいる。自分とは間逆な性格でアホっぽいくせに頭は冴えるやつなのだ。だから、授業中に居眠りすることはあってもぼーっと考え事をする質ではないのだ。それが教室を入ってからずっと心ここにあらずと静かに考えているように見えた(授業中に先生に名簿で軽く頭叩かれていた)。


「めずらしーな、日笠が授業中にぼーっとするなんて」


「………………それは俺の真似ですかー、御坂さん?」


 日笠が御坂にしたように声の雰囲気も寄せて話しかけると、少しキョトンとしたがニヤリと笑って答えた。


「なんか悩みでもあるのか、日笠。お前らしくない」


「……………………」


「どうしたんだよ、そんな間抜けな顔して」


「いや、なんかお前変わった?」


「なんでだ?」


「お前が他人のことに干渉して……心配するなんて初めてだからな……ってお、い、照れんなって!」


 なんだか気恥ずかしくなり、静かに立ち去ろうとしたが手をしっかりと掴まれ引き戻された。


「俺の悩み、聞いてくれるんだろ?」


「………………まあ、そうだけど」


 時間は有限、授業の合間だったので放課後喫茶店『やえ』似て話すことを約束した。学校にいる間は空元気でやり通していたが、喫茶店ではいつものおちゃらけた日笠とは一変、真剣な趣だった。


「俺には妹がいるんだけど。ほら、近くの明解女学院の中3なんだけど」


 明解女学院といえば恤が通っていたなとぼんやり思いながらコーヒーを飲んでいたら、日笠の口からパワーワードがでてきて吹き出しそうになった。


「んで、その妹が近々結婚するんだけど」


「…………うん、まあ続きをどうぞ」


 違和感こそ覚えたが、明解女学院はお嬢様学校なのだから縁談や婚姻とかあってもおかしくはないのだ。御坂は一度落ち着き、耳を傾ける。


「俺の妹、すげー美人でさ。それで相手もあの篠宮財閥の超イケメンでお似合いなんだよ」


「………?薄々思ってたけど、そこからお前の悩みにどう繋がるんだよ。イケメンで気に食わないから婚約破棄させたいとか?」


「そんなガキみてぇな理由なわけ無いだろ。まあ、婚約破棄させたいってのは近いかもしれないな」


 窓越しの空を見据える日笠の横顔は先程よりは和らいで見えた。ちょっとした冗談のおかげか、余裕を持ったみたいだった。先程まで世界の終わりみたいな顔してた人には見えない。


「……………妹の為になにかしてぇんだよ。ここ最近、笑顔を浮かべちゃいるが、上っ面だ。家族だから分かるんだよ、無理してるの。なぁに悩んでんのか聞いても、思春期だからか聞いても答えてくんねー」


「うざがられてんじゃん」


「うるせぇよ」


 苦笑し、唐突に矛先をこちらに向けてきた。不意に目線を合わせてくるのでつい目を逸らしてしまう。


「そうゆうお前もきょーだいいないのかよ。こう、俺の妹にとってなにかしたいって気持ちみたいな、そう思える家族」


「俺に意見を求めているのなら期待しないほうがいい」


「なんだぁ、照れてんのか?」


 頬を小突いてくるので適当にあしらった。


 いつもの調子を取り戻したようで、俺をからかいに来た。役に立ててよかったとは思うけど、これはこれでうざい。でもこれが俺の日常なんだと思った。おちゃらけた日笠がこうして話じゃれることに、心から嬉しく思う。


「…………まあ、いるよ。兄と姉が一人ずつだけど。でも、お前ほど大事にはできてない…と思う」


 血筋は同じはずなのに、性格は本当に真逆で自分とはまるっきり合わないのだ。向き合ってみたのはいいものの、うまくはいかない。


「多分、合わないんだよ。黄泉姉さんも、戒兄さんも眩しい」


 あんなふうには絶対になれない。黄泉姉さんの笑顔の裏表とか好意を晒すこととか。戒兄さんの嘘のない生き様とか気持ちを直接伝えてくれることとか。

 感情を、心を、晒しだすことが苦手な自分には到底無理だ。だけど、終わらせると決めた。


「まあ、シスコンな五月蠅い親友の日笠の悩みを解決してあげる」


「悩みをどうやって、それにシスコンって言ったか!?ただ俺は…………………って」


 机を叩き怒っていた日笠が沈黙し着座する。どうしたんだいきなり。


「………親友、いったか?」


「二度は言わないぞ」


 財布から千円を出し、机に置いて立ち上がる。食い止める日笠の声を無視して、時間に間に合うように。


「おい、待てよっ!」


 日笠との関係をはっきりとさせる。そして、日笠の悩みを解決させる。だって親友の為なのだから、当然だ。


 扉に手をかけ、首だけ振り向かせ笑ってみせた。


「またな、日笠」

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