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War of end world~落第殺し屋の岐路~  作者: 宝来來
五章 御坂と恤
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その一歩を

顔を真っ赤にした恤を家まで送った頃には夜が明け、日が顔を出し始めていた。刀願家の正面門には戒兄さん同様の身長を持つ女性が立っていた。

 メイド服に目を隠すように赤の狐の仮面をつけていた。奇怪な仮面が朱鎌家の特徴なので、メイドだろう。彼女はまだ少し頬が染まったままの恤に対し、何も言わず表情筋一つ動かさず、淡々と言った。


「はじめまして、『御影』様。わたくし、『神殿』の元メイドの『石榴』と申します。只今は党首様の命により、『鳥居』様に使えております。どうぞよろしくお願いいたします」


 丁寧にお辞儀をさせている割に、彼女からは妙な敵意を感じる。朱鎌家のメイドを一度戒兄さんが殺してしまったことがあるのでその恨みで敵視してると思っていたけど、それとはどこか違うように感じた。


 それより、恤にメイドがいたことは初耳であったのでかなり驚いて。そういえば先程の公園で、恤が似たようなことを言っていたような………と聞き流してしまったことを少し後悔した。また今度聞いてみようかと思い、別れを告げた。その後すぐに右往博士に連絡した。戒兄さんや黄泉姉さんの居場所を知る為だ。

優秀な兄と姉は任務に引っ張りだこなのだから予定を追わせなければならない。


『もしもし……って『御影』くんかい?珍しいね、君からかけてくるなんて』


 電話越しに聞こえる右往博士の声には駆動音が酷く耳に入りほとんど聞こえにくかった。研究室の方にいるのだろう、コンクリートの床に響く足音とともに駆動音は遠ざかっていった。やがて静寂となる。


「いきなりすみません。忙しいんですか?」


『別に、特に何もないさ。ただ、ちょっとした実験をしていただけだから気にしないでくれ。それで、何の用だい?』


「『冥土』か『幽冥』の今の所在ってわかりますか?」


『………………ふふっ』


 その問いに唖然とし、急に愉快げに笑う右往博士。


「………なにか面白いことでも?」


『あの子もやるもんだねと思っただけさ。流石『逢瀬』くんの妹だよ』


 何故、ここで『逢瀬』が?その妹………恤?なんの関係が………………って入れ知恵したのはこの人か。


「はぁ………余計なことをしてくれますね、右往博士。善人ぶって恤を騙したんですね。心にも無いことを軽々と口にして」


『別に嘘をついてはないさ。全部、本心だよ。それに、私は善人なんかでは無く、根っからの悪人だよ。何より私はあの子の後押しをしただけだから、『鳥居』くんが自分で選択したことさ。現に君はこうして私に連絡をしているじゃないか』


 不満げに重々しく語られた言葉は、微笑に紛れた軽々しく答えられた。ずっとずっとそう、こうゆうところが俺は『再開発』に不信や恐怖を抱いている理由なのだ。言葉を濁し、話を進めることにする。深く考えてまた悩んではまた戻るだけだから。


「……まあ、そうですけど。俺の中でやるべきことが選択されたという点においては現段階では順調ですよ」


『ふふっ、君も大概だよ……って話がそれてしまったね。二人の居場所だろ?』


「日程が違っていてもいいんです。俺がそれに合わせます」


『安心した前、『御影』くん。運良く二人は家にいる筈さ。久しぶりの安息を命じたから君も一度会っただろう?今からでもじっくり話せると思うよ』


 その言葉を聞き、薙灘家までタクシーを再び呼び急行した。数十分後、長い夜を帰宅。門での恒例の合言葉とお辞儀をし中へと。


 そう言えば、何も言わずに家に出てしまったので心配をかけたかもしれないと今更思った。その後、戒兄さんや黄泉姉さんは何をしていたんだろう?黄泉姉さんはきっと心底心配してるんだろう……戒兄さんは、変わらず笑っていそうだけど。 


 廊下の突き当たり、中央の部屋は元は党首の部屋だった。ここはもう本家ではない。けど構造は現本家と一致しており、時折古き記憶を思い出してしまう。稽古に励み、自身の部屋へ戻ろうとしたときに必ず通る道、必ず党首のその隣には、その右腕左腕の戒兄さん黄泉姉さんがいたのだ。

 幼い頃は稽古ばかりで顔を合わせることすらできなかった兄と姉。ずっと一人だった俺はなんだか羨ましかった。党首を少しだけ恨んだ。ズルいずるいって子供っぽくいじけて。


 今思えば恥ずかしい思い出だ。俺はどれだけ寂しがり屋なんだろう。でも少し大人に近づいて、一人に慣れることができた。なのに今も弱いのだから、きっと一人が怖いのだろう。


 寄り添ってくれる大事な人を失う怖さ、親しき人はいつか離れて行ってしまう怖さ、一人で戦う怖さ、自分の弱さが他人を傷つけてしまう怖さを知ったから。


「黄泉姉さん」


 こその、嫌いな自分を好いてくれ、支えてくれる人がいることに気づくことができた。そうゆう人から逃げては駄目だ。俺も寄り添わなければ。


「ちょっ、抱きつくな。暑苦しい」


「お姉ちゃんはとても心配して精神的に疲労が溜まっていまーす。だから、充電中!」


 向き合わなければ、ならない。


「黄泉姉さんと色々話したいことがある……から、少しいい?」


「勿論!かわいい弟の頼みなら何でも聞くわ!あっ、でも戒兄さんは要らないわ。私だけで十分だから、ほらっリビングにレッツゴー!」


「…………………頑張る」


 いつもと変わらぬ………ちょいハイテンションな黄泉姉さんに押されつつ『逢瀬』との約束を守る一歩を踏み出した。


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