戦い
「それで日笠さんに女子の中での美人ランキングをとっていたことが判明しまして」
あれ?そうか、公園に恤と行ったんだっけ。
「なんと私は2位だったのです。こんな私が、です」
思いに吹け、ぼうっとしてしまった。
「あ、そういえばもうすぐクリスマスですよ御坂さん」
俺が無言の間恤は話し続けていた。日常や最近のことなど、楽しげに話す。
「私はぜひ、御坂さんと過ごしたいと思っているです。だから………どうですか?」
「………………」
「クリスマスって任務はいっちゃうのです?それなら、イブだけでも…………あ、初詣とかでも。とにかくどこか空いた日に御坂さんと過ごしたいのです」
「………………」
「今は無理でも。連絡、してくれると嬉しいのです」
「………………」
「あっ、そういえば御坂さんにプレゼントがあるのです。さきほど言った日笠さんと一緒に選んだものなのです」
そう言うと、ポケットから色鮮やかに装飾された包装紙に包まれた箱を取り出した。プレゼントとその『逢瀬』に似た優しい笑顔を向けられて、俺は…
「いらない」
「………でも、せっかく」
「いらないっ!」
「………!?」
差し出された手ごと払いのけた。プレゼントは離れた場所に飛ばされ、恤ははじめは驚いてたけど黙って落ちたプレゼント拾う。そして、俺の言葉を待った。
「………慰めなんか、好意なんかいらないんだよ」
恤は慕ってくれている。それは分かるのだ。
「俺を……助けたいだとか思ってんるのか、別にそんなこと頼んでないし恤の迷惑になるだけだ。余計なお節介なんか必要ない。俺のことは俺がどうにかするんだ」
『逢瀬』のことも、自分の不甲斐なさ、不器用さをーーーー弱さを。
「他人の手なんか借りない。俺のことは俺で終わらせる」
『逢瀬』との約束も、果たせるはず。このまま、強くなって弱い自分に勝って果たすのだ。そうすれば全部、全部終わる。
弱く脆い自分は戒兄さんや黄泉姉さんに後ろめたさを抱いてしまうし、自己嫌悪に浸ってしまう。『再開発』にはあの日の恐怖を思い出して、なんとなく話しづらい。どこか、距離を開けてしまう。あけてしまわねば、という絶対的な定義づけされた日があの日でもあるのだろう。
親しき人を、時をともに過ごした人を、強いと思っていた人をなくすことはこれほどまでに恐怖と悲痛を与えるのだと。
人には必ず終わりが訪れる。それは当然の摂理で、あたりまえだ。だけど、それを自らの手で終わらせてしまっとなら?他人のそれまで続いていた長い人生を自分の為になんか終わらせてしまったら?
ただ後悔がつのるだけの虚しい一人ごっこだ。
一人で全部背負って、終わらせるのだ。
全部、一人で。だってそれだけの責任を負わなければならないことをしたのだ。当然の、義務。辛くなんかない。俺が『逢瀬』にした間違いに比べれば。
「一人じゃ無理なのです」
「…うるさい」
「一人じゃ苦しそうなのです」
「うるさい」
「一人じゃ終わらせられません」
「うるさい!」
カッとなって顔を上げると、ベンチに座っていた恤がいつの間にか腰を浮かし俺の目の前に堂々と目を見つめていた。咄嗟に視線を反らし、また俯く。
「………………恤には関係ないことだろ。俺一人のことなんだ」
「関係あります。私は御坂さんの相棒です」
「所詮、相棒だろ」
「そんな言い方…」
「だってそうだろ。どうせ、死ぬまでの付き合いなんだから。片方が死ねば終了の一時的なものでしかない」
近すぎず、遠すぎず。程よい距離感を。遠くする。そうすることで自然と避けられる。責任も好意も慰めも。
「それに俺は恤の優しい優しい姉を見殺しにした最低なやつだ。むしろ関わらないほうがいいんだよ」
そう。嫌われればいいのだ。距離を話すためには嫌われて、仕方なく相棒として隣にいる。それでいい。それが、いいのだ。
「…………………」
恤は急に黙り込む。気の弱くいつも言葉をつまらせ我慢する恤の癖の一つ、拳を強く握りしめるがでていた。追求されて、弱さを暴かれることを止めた恤に少し安心して、公園から去ろうとする。その時、静かに優しく話していた恤が公園中に響く大きな声をだした。
「ならっ、御坂さんは私の勝手で助けます!!」
俺は足を止めない。
「御坂さんの為じゃない、私の為に!」
俺は逃げたくなった。恤が『逢瀬』の生き写しに見えて、その声も表情ももとが似ていたせいか錯覚でも感じてしまう。恤はやはり『逢瀬』にそっくりだと。
が早足になるもその足を止めたのも恤だった。
「それにそんなことで御坂さんを嫌いになんてなりません!」




