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War of end world~落第殺し屋の岐路~  作者: 宝来來
四章 『御影』と『逢瀬』
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長い長い理屈

「君はいいの?仲間が泣いてるよ?死ぬよ?」


「いいわけねぇだろ!だが、今はてめぇをぶっ殺すことが先だぜ」


「心が無いね」


「うるせぇよ。よそ見してっと怪我するぜぇぇぇ!!」


 突き出した鉄パイプの尖った部分は糸をきれいにくぐり抜け殺人鬼の左肩に刺さる。殺人鬼は距離を取り、見えないが糸で止血したように見えた。


「任務失敗、その上負傷。これ以上は分が悪すぎる」


「それならこっちはこの上なく好都合だぜ」


「…………退却、する」


 両手を広げ、その指先から天井につながる無数の糸が月に照らされた。弾性力の高い糸なのか簡易に網状にトランポリンを作る。跳躍し、天井に強度の高い糸をひっつけぶら下がる。


(あ、まじぃ。これは逃げられる)


「とでも言うと思ったかぁぁ!!!」


 作られていたトランポリンは解かされていた為、倉庫一体に張り巡らされた攻撃性に特化した糸をすり抜けて足場にする。あとは階段のように追いつくだけだ。糸は1ミリ以下。いかに糸に体重をかけないか、バランスを取るのか考えるなんて無駄だ。


(俺の力を信じるだけだぜ!へでもねぇよ、こんなこと)


 傀儡殺人鬼に向けて手に隠し持っていた妙な形状のナイフを数本投擲した。刃の先が釣り糸のように曲がっているものだ。不安定な空中上、避けることは難しいが安定に糸で防がれる、だけでなくナイフが引っかかったのだ。


(殺人鬼の野郎は絶対不可視な糸を隠し持って、突進する俺を仕留めようとしていたことには気づいてたからな。この糸攻撃に特化しすぎて触るだけでもぱっくり切れちまうからなーーーー見えさえすれば脅威でもねぇ!)


 糸にかかったナイフの柄を握り、片手で勢いよくぶら下がり、その反動で傀儡殺人鬼の足首を掴む。


「………感心した。その底力とも言える馬鹿力は尊敬するよ。けど」


「だろ?」


 ほくそ笑む『幽冥』。が、そんな至福はいっときであり次の瞬間には全身が浮遊感に覆われていた。


「ーーーーーーーーあ?」


 落とされた、というよりは落としたに近い。傀儡殺人鬼は躊躇なく自身の膝から下を糸で切断したのだ。


「はっ、自分の体大事にしろよ!」


「大丈夫」


 掴んだままの殺人鬼の足に糸が絡みつく。引っ張り上げるのかと思えば、とっさに『幽冥』は掴んだ手を手放す。『幽冥』の手があった位置には糸が掛からんとしていたのだ。


(こいつっ、人の心が無いのかよ。糸で俺の手を通関させて足を回収するつもりだったぞ)


それでは自分の足も傷ついてしまうのに。


「ちっ、絶対逃さねぇ!死んでも追いかける!待ってろや!」


「今度こそ、ばいばい」


 淡々とした傀儡殺人鬼は去り、『幽冥』の咆哮は倉庫中に響いた。




「御坂……」

「ごめん、一人にして」

「………っ、うん」


喉まででかけた謝罪を飲み込み、『冥土』は『幽冥』と共に傀儡殺人鬼を追うことに。その前に、と『再開発』と端末越しに会話していた。


「約束したのにな………守ってくれたのかな」


俺が『逢瀬』と交わした約束。


「誰かの為に死ぬなんてことは許さないって言ったのに……」


 俺の為に死んだのか?そう聞くときっと『逢瀬』は私の為に死んだんだと言いはるのだろう。俺が死なない為に私が変わりに死んだ、と。それが俺は嫌なのに。けれど今回は『再開発』に全て背負わせたいという思いもある。


 『白蛇』の保護の任務、『幽冥』『冥土』との共闘、敵の増援、『白蛇』の正体、傀儡殺人鬼の襲来及び『白蛇』殺害、寄生虫による『逢瀬』の乗っ取り。

 『冥土』が俺の足を切断することも、その俺の近くに『逢瀬』がいることも。全部全部、『再開発』の計画だったら……………こうなることも全部読まれていたら。


「ーーーーこれが新しい依代か」

  

 痙攣し静止し遺体となったはずの『逢瀬』が立ち上がることも、計画通り。


「前回の腐敗した老獪よりはいいな。若く未成熟な成長過程の脆弱な肉体のほうが動きやすい」


 その口調も雰囲気も『逢瀬』とはまるで違う。声と姿は一致しているのに。きっと中身は『白蛇』なのだろう。漸く、『再開発』の言葉を理解する。中身は本物だが外見は偽物でしかない、『白蛇』は寄生虫を指し依代を代々変えることにより長い年月を生き延びてきたのだ。


「ん?君は誰だい?」


 わかりきったその言葉を『逢瀬』の声で姿で言われるのはキツイ。でも、受け入れなければ。

 

 『逢瀬』に邇亜に失礼だ。


 薙灘御坂にとって『逢瀬』はただの相棒で、ずっと間違い共に堕ち、隣にいつもいて、大事な存在。俺が『逢瀬』に望んだのは自分の為に生き抜くこと、で俺の為に死んだも同然の状況なのだ、今は。幾ら『再開発』の計画がそれだったとしても。

 

 あの時、俺が『冥土』の斬撃を避け大人しく寄生されていれば『逢瀬』はこうならなかったのだ。色々な後悔が胸を締め付ける。傀儡殺人鬼だとか『再開発』だとか『幽冥』だとか『冥土』だとか、そもそも俺と『逢瀬』以外に介入した人物によりこの任務は乱されているのだ。それらが悪い?否、違う。そもそも任務を受けなければよかったのだ。党首様直々だって?そんなもの無視して他の殺し屋に任せればよかった。他力本願でもいい自分勝手でもいい、ただーーーーーーーーーーーー『逢瀬』に生きていて欲しかった。


 結局の性根はそれで、弱く脆い俺だ。そんな動作仕様もない俺のせいで死んだ。けど俺と気持ちは同じだから私のために死んだ、無償の自己犠牲はきれいでしょ、とか『逢瀬』は言うんだろう。


 『逢瀬』は約束を守った。

 なら俺は?


 約束を守る力も無く、擦り切れた自分に何が出来る。約束は守りたい、けどどうすればいいのか。だから精一杯考えて、出した答えがある。それが『逢瀬』と交わした口約束だ。

 

 『幽冥』『冥土』と仲良くすること。

 そして【戦争】を生き抜くこと。

 

 これが一番俺にできることだった。真摯に向き合う為に『逢瀬』のことを視野から一旦離すことにした。それが正しいと信じて。


「お初にお目にかかります『白蛇』さん。俺は薙灘御坂、その依代の元相棒です」


 現実から目を背け、逃げた、のだ。

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