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War of end world~落第殺し屋の岐路~  作者: 宝来來
三章 『鳥居』と『逢瀬』
27/63

沼にはまって、壊れて、そして…

前回と同じ部屋にて、私と右往博士は話をすることになった。前より段ボール箱が増えて、フリーに使えるスペースがなくなっていて、山積みの資料も崩れ、気をつけないと転びそうだ。


紙を踏まないように避けながら椅子へと座る。


「すまないね、コーヒーしかなくて。コーヒー飲めるかい?」


「あっ、あの……すぐに済む要件なのでいりません」


それに、私コーヒー飲めないです。

1回チャレンジしたことありますけど、ミルクたっぷりお砂糖たっぷりでもダメでした。


苦くて、御坂さんの顔面に吹いちゃって……本当に申し訳なかったです。


「…………右往博士はコーヒー好きなんですか?」


「そうだね。でも『鳥居』くんにはおすすめできないかな」


「なんでです?」


「ほら、コーヒー飲むと背縮むって言うからね」


「あれって本当なのです!?」


「証明はされてないけどね。実際にはコーヒーに含まれるカフェインの成分が興奮させるものだから、それで夜に眠れなくなって伸びないだとか。まあ、可能性はゼロではないんだからね」


それに君、身長気にしてるだろ?、と付け加える右往博士。私はうっ、と反論しようとしたけど言葉が詰まってしまう。


多分、言い返してもまたからかわれるだけだ。


「ーーーーーーそんな風に黙っていたのかい、『鳥居』くん」


「え?」


「間違えて、後悔している誰かに。君で言う『御影』くんかな?」


最近で言うと、日笠さんにもなる。口では諦めたいと言っているけど、心では仕方が無いと思っているけど、初恋を諦めきれない彼女に。


「そんなつもりじゃっ………ないです」


なんて言っていいのか分からないだけ。

でもそれだけの事ができない私は、私が悔しい。


黙り込む私に右往博士は息を吐く。


「……すまない。少々からかいすぎたようだ」


「いえ…………」


謝られてしまった。


「君、思っていた以上に落ち込んでるからね」


「落ち込んで、はいますけど………」


主に御坂さんと日笠さんのこと。2人がやっていることは正しいんだと思う。


御坂さんは自分を守る為に。過去に縛られ。

日笠さんは家族を守る為に。未来に縛られ。


傷を負った道を、決められた道を歩こうとしている。間違ってもないし、正しいはずだ。


けど、やりたいことを我慢している。口をつぐんで俯いて無理やり笑顔を作って。そんなふたりは未定で痛々しい。助けてあげたい。


だけど、それが出来ない私に落ち込んで。


私はまた、俯く。すると予想外の回答が返ってきた。


「『神殿』のこと残念だったと私も思うさ」


「え?」


「え?」


どうやら、右往博士は勘違いをしていたみたいだ。御坂さんのことには繋がるけど、右往博士としては私が『神殿』が死んでしまったことを落ち込んで、『御影』くんに八つ当たりで喧嘩でもしたのかなーっと思っていたらしい。


「言っておきますけど、私『神殿』…………明南お兄ちゃんとは仲良くないです」


「そうなのかい?」


「だって、です。私にとっての明南お兄ちゃんは党首様なんです。近寄り難いです」


幼い頃も、家の中でずっと眺めているばかりだった。私が言葉を勉強してる間に、遊んでる間に、いつも忙しそうで。


刀願家の道場では、剣道と武道どちらか選べるのだけれど、私は剣道を選んだ。きっとそれが初めて(兄)と呼ばれる存在と話した時だろう。三歳から始め、刀願流剣技門下生の1人として教えて貰っくらいで。


厳しくて、でも出来たら褒めてくれて。


「1度も話したことがないかもです。家でも忙しくて……………いち、ども…話してない、です」


「どうしたんだい『鳥居』くん?」


たどたどしい口調になる私に右往博士は不思議そうに聞いてくる。


「い、え………本当に、私は明南お兄ちゃんのこと全然知らないなって思って」


なにかが、欠ける音がした。ガラスが、宝物が、大切にしていた。傷つかないように守ってきたものが欠ける音。否、元から欠けていたのかもしれない。


今、この瞬間。気づいてしまった。


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