嘘
「私って婚約者がいるの」
「……………えと、確か日笠さん有名財閥の令嬢です?」
「うん、そうだよ。明解女学院と言えばお金持ちが集まるからね。刀願さんは?」
肩書きを聞いているのだろう。日笠さんなら『財閥令嬢日笠海々』だ。
「財閥というか派閥というか、警察?みたいなことをしてるです」
依頼さえ出してくれれば誰であろうと秘密裏に殺す。それこそが刀願家や御坂さんの薙灘家に課せられた使命。仕事であるのだ。
それこそ刀願家の他、薙灘家、翠鎌家、朱鎌家と有名どころでいえばこの4つである。その中でもそれぞれに役割がある。
刀願家は護衛が主な仕事。
薙灘家は組織の壊滅が主な仕事。
翠鎌家は暗殺が主な仕事。
朱鎌家は執事やメイド、サポートが主な仕事。
各々の家系に合った教育が施され、基本13~15歳から仕事を引き受ける。就職するにも、罪を犯すのにも早い。まだ、少年罪が受けられるだけマシだと思うのもある。
バレたら、ヘマしても終わり。
始めたなら、辞められない。
後はただただ堕ちていくだけ。
呪詛のように自身の手で殺した人の怨嗟が、恨みと妬み、「殺してやる」「早く死ね」と常に耳に囁かれている。幻聴だとわかっていても、恐れてしまう。今ではそれにも慣れて、無視するしかできない。
目で見ないフリして、蓋をした。
「ーーーさん!刀願さん?どうかした?」
「あ、うん。ごめん…ぼーっとしてたです」
気持ちを切り替え、私は日笠さんと向き合いました。
「それで、日笠さんはいわゆる政略結婚に巻き込まれたわけですね」
「そうだけど……巻き込まれたというか私が生まれた時から決まってた事だしね。仕方がないよ」
まただ。日笠さんは笑っている。けど、目は笑っていない。
「···············」
こうゆうとき、どう声をかければいいんだろう。分からない。
素直に真っ直ぐに伝えても、無視されるかはぐらかされるか。そんなことばかり。
その度に私は傷ついて、悲しむんだ。黙ることしか出来ない。
でも、沈黙を破ってくれたのは日笠さんだった。
「ーーー分かってても恋しちゃったんだよね、刀願さん。政略結婚は免れないけど、この恋だけは……初恋だけはすっぱりと忘れて、受け入れたいの」
駄目。そんなことそんな顔で言わないで、日笠さん。そんなーーーーーーーーー悔いた顔で。
「··········忘れ、たいのです?初恋を」
「ーーーうん」
日笠さんは嘘をつきました。
忘れたくないのに、叶えたいはずなのに、強がって、笑って、初恋を諦めたいと。
悔いた顔で無理して笑い、都合子いい自分であり続ける日笠さんは、御坂さんとそっくりで。
「···············分かりましたです。私、日笠さんのお願い、聞いてあげるです」
日笠さんとおなじ、私もひとつ嘘をつきました。




