おむすびころりん
山で畑仕事に精を出していたお爺さんは、そろそろお昼にしようと近くの切り株に腰を下ろした。持ってきた竹皮の包みを広げ、おむすびを一つ手に取ろうとした時だった。ふとした拍子に、おむすびはお爺さんの手からするりと落ち、山の斜面を転がっていった。
「しまった!!」
慌てたお爺さんは、転がり遠ざかるおむすびを追いかけた。おむすびは転がり続け、凸凹の斜面を何度か跳ねては転がり、やがてねずみの巣穴に吸い込まれる様に落ちていった。
「なんて事だ。せっかく早起きして作ったおむすびなのに…」
お爺さんが巣穴の前で途方に暮れていると、ねずみ達は潔癖だったのか、まるで、「こんな土まみれの汚いおむすびなど食えるか」と言わんばかりに、おむすびを巣穴から放り出した。
その光景を目の当たりにしたお爺さんは、転がるおむすびを追いかける程食い意地の張っていた己を恥じた。