2話
アルマスたち4人は食堂で一緒に夕食を取っていた。基本的に食事の献立は全員一緒になるが、ナセルだけは皿の上にある肉の量が少なかった。
「わりーな」
ドラヘがナセルを煽る。ナセルは何も言い返せ無い様子で少なくなった肉に手をつけていた。
「そんなことより今週の新聞のオークの話だよ」
ナセルが話の流れを断ち切ろうと、いつもは彼から出てこ無いような話題が飛び出る。3人は彼の思惑は読みつつもその話題を出すことには少し驚く。
「もしかしたら俺らの班も駆り出されることになんのかなー?」
ナセルは話題ができるだけ逸れるように3人に向けて問いかける。実際オーク国家の蜂起はパイセス国にとっては大きな問題となる。
中央大陸と東西諸島の5種族間には交流がある。そして、他の種族は2つ以上の国ができているがオーク族だけは国が1つである上に、その国はパイセス国の傀儡国となっている。オーク国を傀儡政権としていることは他の国からはよく思われていないようで、度々他国との対立の原因となる。そして、最近オーク国内で独立を目指す蜂起が発生している。
アルマスとブルアベが会話に乗る。
「ありえるなぁ、オーク国広いし戦いも面倒になりそうだ」
「在留軍置きたいところだけど、クランスともピリピリしてるし難しいか」
中央大陸の北西とそこから伸びるパイセス半島を主な領土とするパイセス国。そのちょうど南にはクランス王国が存在している。過去にクランス王国もオーク国に攻め入ろうとしたことはあるがクランス王国とオーク国の間にあるパイレ山脈により侵攻を阻まれた。一方、パイセス国はパイセス半島から海路でオーク国にたどり着いた。
隣国出あるパイセス国とクランス王国は仲があまり良いとは言えず、オーク国が原因で度々対立する最大の相手国だ。
また、クランス王国はパイセス国の反対側、中央大陸の南西に位置するイティアノ国とも仲が悪く、隣接する2つの国と仲が悪い攻撃的な国となっている。
「最近クランスが獣人国家とつるんでるって話もあるらしいな」
アルマスが情報を付け足す。するとそれまで興味が薄そうな反応しかしていなかったドラヘが会話に入ってくる。
「なんかきな臭えよなぁ」
内容とは裏腹にその声色はどこか楽しそうだ。
「俺らもそろそろ歩兵部隊から異動するか?」
パイセス国軍は歩兵部隊、戦車部隊、艦船部隊、航空部隊の大きく分けて4つの部隊に分かれる。4人が現在所属している歩兵部隊は、必要に応じて単独での行動だけでなく、戦車部隊や艦船部隊と行動を共にする部隊だ。そして、他部隊への異動が可能だ。
戦車部隊は戦車と呼ばれる4から5人乗りで、機動力と主砲、副砲を用いて戦う乗り物を主に用いて戦う部隊、艦船部隊は10人程度が乗員の小型艦から200人程度が乗員の大型艦までの艦船を用いて戦う部隊、航空部隊は5人乗りの大型機から1人乗りの小型機を用いて戦う部隊となっている。
中でも航空部隊は特殊で、戦車部隊や歩兵部隊の陸上基地から出撃する陸上機と艦船部隊の大型艦から出撃する艦載機が存在する。陸上機は迎撃、艦載機は攻撃を想定されている。
「異動かぁ、特に考えてなかったな」
ナセルがサラダに手をつけながらつぶやく。すかさずドラヘが食いつく。
「最近新兵器が開発されて新設された航空部隊とか最高に気になるだろ!?時代は空なんだよ!」
ドラへは1人で盛り上がっているようで1人でさらに続ける。
「俺魔法は全然使え無いけど空飛べるんだぜ?空!」
人族は魔力は持っているが、魔法は上手くはなく、あまり使われ無い。大きな魔法陣を用いつつ大量の魔力を消費すれば使えないわけではないが、複数人で行うことになり、そこまでする意味があるかという話になる。
人族が使える飛ぶ魔法はあるが、魔法陣の上を上下移動しかできない上に、1人を飛ばすために5人ほどの力を借りることになる。
「空は確かに飛んでみたいかもな」
「だろだろ?」
ブルアベが空という単語に興味を示し、そうだろうとドラへが迫る。ドラヘの空に対する熱気に包まれ3人は夕食を済ませながら航空部隊への異動について考えていた。