担任のお名前は?
「うりゃー!」
俺はモブ達と戦う、しかしモブと言っても戦闘員、まだヒーローにすらなっていない俺では戦闘員ですら手こずる。
「キー!」
「キー!」
モブ達は5人、実力的に考えてギリギリだろう
「せい!」
しかし今回は倒す事が目的では無い、目立ちこちらに注目を集める事だ。
「あー、魔藤君だ、魔藤君が助けに来てくれたよ」
「本当だ、頑張れ魔藤君!」
俺に気づいたクラスメイトが声援を送ってくれる。その後ろにエリカ達が忍び足で救出しようとしている。このままこいつらを引きつけていれば上手くいくはず
「とりゃー!」
俺はモブ達の攻撃を必死に躱し、2人ほどやっつけられた、師匠の修行の成果を感じる。
「何をしてるんだ!」
大きな声を出してクマの怪人がこちらにやって来る。いよいよ本番だな
「貴様何者だ?」
クマの怪人はこちらに質問して来る。
「今はヒーロー志望の学生だな」
「ほぉ、ヒーロー志望か、うーん、ヒーロー志望だよな?」
クマの怪人は俺をまじまじと見つめる、確かに今の俺はヒラヒラのスカート姿だ、だがヒーロー志望の学生には違いないはず
「変態では無いのか?」
「うっせー、これが俺のコスチュームなんだよ!」
そりゃモブ達が複雑な顔で俺の事を見つめていたことに気付いてはいた、だからこそあえて無視したのに
「まぁ、人の趣味はそれぞれだ、俺はいいと思うよ」
クマの怪人は物分かりのいい大人らしい
「趣味ちゃうわ!」
「そ、そうだな、それならいいんじゃないか」
くそー、こいつ完全に変態を見る目でみやがって、殺す
「うおーー、必殺ドラゴンキック!」
ただの飛び蹴りだが魔法の力で威力を高めてある、師匠曰くドラゴンな格闘家の蹴りを参考にしたらしい、誰だろう?
「むぅ!」
クマの怪人は腕でガードする、俺はそのままクマの怪人に蹴りをお見舞いするが、クマの怪人は少し後ろにズレた程度でなんのダメージも負っていない、俺の最強の必殺技なんだけどな
「ほぉ、学生にしてはなかなかだな」
クマの怪人はニヤリと笑う、クマの怪人は余裕たっぷりの顔で言ってくる
「まぁ、若いうちに無茶をするのは構わないが、我が光の使者に刃向かうのはオススメせんよ、何故なら死んでしまうからな」
「なに!」
クマの怪人は俺の足を掴み、片手でぐるぐる俺を回す、あーー、目が回るーー!
「ほれ!」
クマの怪人が俺を投げ飛ばす、俺は高校生の中でもかなり大きい方なのに軽く投げ飛ばすクマの怪人の力に驚く
「魔藤逃げて!」
俺は吹き飛ばされながらエリカの声を聞く、そこにはクラスメイトの救出を終えた光景が目に移る。
「なんだと!」
クマの怪人はようやく俺の目的を理解する、正直投げられたのは好都合と、そのまま戦場から離脱しようとしたのだが
「許さんぞ、この小娘が!」
エリカが捕まる、クマの怪人のスピードは予想外に早く、エリカは逃げ切れなかった。
「きゃー!」
くそ、せっかく上手くいきかけてたのに、これじゃあ助けに行かねばならねえじゃないか
「エリカを離せー!」
俺はなんとか投げ飛ばされたとこから立ち上がり、クマの怪人に突っ込む、正直作戦なんて何もない、無我夢中だった。
「魔藤!」
エリカの声、それは恐怖に怯える声だった。そんな声を聞いて俺の中で何かが吹っ切れる、俺はどこか魔法少女科で本気に向き合ってなかった気がする、当たり前だろう、だって俺は男だ少女じゃ無い、だからこそ授業もどこか上の空だった。
そんな俺がクラスで最下位なのは当たり前なんだろうな、だって他の奴らみんな目を輝かせて授業を受けてるんだから、あいつらの夢は純粋で真剣で本気なんだ。俺が勝て無いのも道理だ、でも俺の目標だってあいつらの純粋で真剣で本気に負け無いはずだ。
だから俺はヒーローになる、ここでみんなを助ける、どんな事をしても、そうだその為に魔法少女にならなければなら無いなら受け入れる。
「俺は魔法少女でヒーローの、男だ!」
「なに?」
力が溢れる気がする、そういや師匠に何度も言われたな、ブラジウムは心に反応するって、魔法も気持ちで変わるって、だから俺は本気の魔法を使う、このステッキを持って
「スターショット」
授業では上手くいかない魔法少女らしい可愛くて威力のある魔法攻撃、それを俺はクマの怪人に放つ
「ぐわ!」
「エリカーー!」
クマの怪人が怯んだ瞬間にエリカを抱き抱え船から飛び降りる。
「うおーー!」
「きゃーー!」
正直着地まで考えていなかった、遊園地の船と言っても高さ的には三階立ての建物ぐらいにはある、やばいエリカだけでも救わねば
「やれやれ、無茶をする」
そんな言葉が聞こえると担任が俺達に魔法をかけて救ってくれる。
「あれ? 助かった」
「へぇ? あれ私無事ですの?」
俺とエリカは無事だった、先に船から脱出していた担任に救われ、みんなと合流する。
「きゃー、魔藤君がエリカちゃんを救ったわ」
「きゃー、まるで王子様みたい」
「エリカちゃんいいなー」
クラスメイトがなんだか盛り上がっている、どうやら全員無事みたいだ。
「魔藤君、エリカちゃん無事?」
「はわわ、大丈夫ですか?」
瑞樹と沙織が駆け寄る。
「あ、ああなんとかな」
「だ、大丈夫ですわ」
そんな風にみんなと語っていると、船の上からクマの怪人が飛び降りてくる。
「き、貴様! 俺をコケにしてくれたな」
クマの怪人は怒り心頭である。正直やばいかと思ったが
「もう生徒には手を出させんよ」
担任が前に出る、そして変身する。
「うわっ」
誰の声だったのか、担任の魔法少女姿に自然と出た声に担任は
「どこの誰だ! ぶっ殺してやる!」
怒りに包まれていた。
「魔法少女まるまるラミーか」
「そうだ」
おー、担任ってそんなヒーロー名だったのか、そういや名前知らないな、あれ? そういや担任って自己紹介したっけ?
「なぁエリカ」
「なによ」
エリカは真剣にクマの怪人と対峙してる担任を見つめている。その表情は真剣だ。
「担任の名前なんだっけ?」
「へっ、な、何を言ってますの、先生の名前を忘れましたの?」
「いや、自己紹介されたっけ?」
「何を言ってますの、先生は………あれ?」
「どうしたエリカ」
「あれ? そういえば先生のお名前知りませんわ」
その言葉が発端となり、クラスに波及する
「そういや先生の名前を聞いてないや」
「本当だ先生の名前知らない」
「先生は先生だから、先生なんだよね」
「うーん」
そんな光景を見たクマの怪人は
「お前生徒に自己紹介したのか?」
「………いや」
「しろよ!」
うちの担任はかなりのおっちょこちょいだとこの時判明したのだった。