作戦開始
「ハッキリ言ってさ、僕も最初は男が魔法少女ってどうかと思ったよ、でもさリョウはあの時誰よりも魔法少女だったよ、僕はそんなリョウがパートナーで誇らしいよ」
その日は晴天でまさに遠足日和だった、だがそれ以上にヒーロー日和でもあった。
ふぅ、どうやら見張りは少ないな、これなら俺があいつらを引き付ければなんとかなりそうだ。
「みんな聞いてくれ」
「なんですの?」
「見張りは俺が引き付けるから、お前達はみんなを解放してやってくれ」
「えっ! それじゃあ魔藤君があぶないんじゃ?」
瑞樹が心配そうに見てくる。
「安心しろよ、見張りは怪人って訳じゃ無いし、引き付けるだけだから正面切って戦う訳じゃ無い、みんなを救ってくれたとか見ればすぐに離脱するよ」
「本当?」
「ああ、その代わりみんなを頼むぞ、正直担任の解放が成功すればほぼほぼ俺たちの勝ちだろ、ああ見えても元魔法少女なんだし」
「はわわ、そこはちょっと心配ですよ」
沙織のそんな指摘に
「違いな」
「本当ですわ」
「そうだね」
全員が肯定し笑いが起きる、そして俺は気持ちを切り替える。
「さあ、俺が飛び出したら作戦決行だ、頼んだぞ」
「「「分かった」」わ」
「じゃあ行ってくる」
こうして俺のヒーロー活動が始まる。
まず俺は一人でフラフラしてる見張りを無力化させる、師匠に習った格闘術が役に立つ、隙をつき一瞬で締め落とす、背後から首を絞めるのだがコツを知ると案外簡単に落とせるものだな、師匠に民間人に使うなと言われるのもわかる。
一人の無力化に成功するが見張りは見えるだけで十人、十人だと思い動こうかと思ったらミミティに
「見える敵はあくまで最小限だと認識しろよリョウ!」
「えっ」
「見えてるとこだけに必ず敵がいるとは限らないよ、むしろ見えないのが普通、今回なら最低十人って考えなきゃ失敗するよ」
そんな忠告を言われる、言われなきゃ十人だけと思い込んでた。確かに予備戦力を置いておくのは当たり前だよな、初めての実戦でそういうところ気にしてなかった。
なんだかんだでヒーローである魔法少女のマスコットしてないよな、こんな状況でも冷静だよ。
見える範囲では後9人、だいたい二人組みで動いているが、定期的に一人になる瞬間があるな? なんだろうトイレか? だが都合がいいのは間違いない、あそこの奴が一人になった、よしいくぞ! 背後からそろりと、えい
「ぐへ!」
ふぅ、二人目か、後3人くらい締め落とせれば派手に暴れるか、五人なら逃げれるだろ、たぶん
「魔藤!」
「ん? あっ、先生ここに居たんですか?」
何故か担任がみんなと違う場所に監禁されていた。
「何をしてる、無事なら逃げろ」
「大丈夫ですよ、助けますから」
「バカ、危険すぎる、学生が無茶する事じゃない」
「無茶しますよ」
「なに?」
「だって俺男ですもん、クラスで唯一のね」
「なっ!」
顔を真っ赤にさせる教師、彼女は魔法少女引退後すぐに教師になったので男に免疫が無かったりする。リョウ君の男らしい一面にドキドキしてしまう。
「先生、男はね女の子を無茶しても守るもんですよ」
「そ、そ、うか」
ん? なんか担任が急に黙ってしまった、まあいいや
「後で俺の班の奴が来ます、その時みんなと逃げてください」
「なに、お前はどうするのだ?」
「俺は少し暴れて来ますよ」
そう言って残りの見張りに目立つように動く、ここからが本番だ。
「ちょっと待て!」
そんな教師の言葉を無視して
「そんな、デスとティニーが!」
「くっくっく、我ら光の使者の怪人がテーマパークごときのマスコットに負けるか、バカどもめ」
「……」
「……」
デスとティニーはクマの怪人の前にボロボロにされる。観客はみんなショックを受けていた、人気マスコットのデスとティニーが傷だらけなのだから
「さぁ、これでデスティニーランドの至宝、デスティニーブラジウムを探せるな」
「なんだって!」
「まさかクマの目的は魔法の国の国宝か?」
何故か解説が出来る観客が驚愕の顔でクマを見る。光の使者のデスティニーランド襲撃の全容がクマの言葉で見えて来たのだ。
デスティニーブラジウムとは、スーパーブラジウムを硬質圧縮させた宝石のようなもので、その内包エネルギーは東京ドーム何千個分である。ちなみにこの単位の意味は現在では誰も分からなかった。
「そうだよ、ああ助けはこんよ、その為の人質だからね、ゆっくり探すかなデスティニーランドをな」
「そういうことか」
「どういう事だよ?」
「奴らが人質を取る理由だよ」
「どういう事だい」
「ヒーローを動けなくしてるんだ!」
「ヒーローを?」
「人質のメインは今日遠足に来ていたWSS学園の生徒、しかも魔法少女科だ」
「確かに人質を取れば動きにくいだろうが、魔法少女科だからってなんでだい?」
「魔法少女科は有名だろう、知らないのか?」
「もしかして」
「一人でも死なせたら不味すぎて動けない」
「ヒーローも所詮人の子か」
「それは責められないがな」
クマの怪人は思った、このおっさんらは何者なんだろうと、さっきからなんでそんなに流暢に解説しているのかと、しかし考えても仕方ないのでデスティニーブラジウムを探すために園内に部下を放つ
「さあ探せお前達!」
クマの怪人の指示で何処にいたのか沢山の部下がデスティニーブラジウムのありかを探しに行く
そんな光景を見ていたリョウは
「あっぶねー、あんなに部下いたのか、焦って飛び出してたらフルボッコだったな」
リョウはそんな感想を抱きながら、そろそろ囮のために目立つ行動に出る、それは
「はーっはっは!」
「むっ、誰だ!」
突然聞こえる高笑いにクマの怪人が叫ぶ
「誰か? 誰かだって」
リョウは船の一番目立つ甲板の中央に降り立つ、ちなみにクマの怪人は船から降りているために全く見えていない
「俺の名は!」
その声に反応した人質の監視していた光の使者のモブ達はリョウのいる甲板に集合していた。クマの怪人はずっとキョロキョロしている、いい加減気づいて欲しい。
「俺の名は!」
モブ達が息を飲む、なんたってヒーローの登場シーンである、ちゃんとしなくちゃと真面目な彼らは思う。
「……ごめん、ヒーロー名なかった」
ズテンとモブ達が倒れる。そうリョウはヒーローに憧れているだけでヒーローではまだ無いのだ。
「……!」
そんなリョウに抗議するモブ達、だが何故だか分からないがヒーロー界、いやこの場合悪の組織界だろう、その悪の組織界では雑魚のモブキャラは喋るの禁止なのだ。意味は無い、様式美らしい、甲高いキーとか、コーとかならいいらしいが
「そんなに抗議されても、まだ決めてないんだ仕方ないだろ!」
そう言って抗議を黙らせる、しかしここからが本番である。
「さぁ、覚悟しろよモブども!」
リョウの戦いが始まる。