デスちゃんとティニーちゃんとクマ
「ど、ど、ど、どうしよう咲ちゃん!」
「落ち着いてよ希ちゃん」
「だってだって、私達捕まっちゃたんだよ!」
彼女達はリョウのクラスメイト、つまりは魔法少女であるが、シーエリアで一番人気の海賊ショーを見ていたらいきなり現れたクマの怪人に捕まってしまったのである。
「うえーん、うえーん」
「怖いよママ!」
二人だけでは無くリョウのクラスメイト16人と
「くっ、やられた」
担任と
「やべー、楽しすぎて敵の侵入許してしまった」
「ダメだ、間違いなく職務怠慢でおやつ抜きにされる」
「支部長怖いからな」
彼女達に付いているマスコットも、ちなみに彼らはデスティニーパフェを堪能し、デスティニーランドのアトラクションを心から楽しんでいた。少女を守ると言う職務を忘れて
「くくく、まさか魔法少女科の生徒がいるとはな、貴様らには国との交渉のための人質になってもらうぞ」
「ママ〜!」
魔法少女科のみんなが泣き叫ぶ、女子高生でも恐ければ泣き叫ぶ様だ。
「貴様! 生徒に手を出したらタダじゃおかないからな!」
担任は怪人を睨みつける、口元に生クリームをつけながら
「ふん、引率の教師がパフェに夢中であっさり捕まっておいて、そんな凄んでも何も怖くないぞ」
「ぐっ」
担任は何も言えなくなる、彼女はデスティニーランドが楽しすぎて敵の侵入を許してしまったのである。マスコットとどっこいどっこいなのであった。
そんな光景を四人の魔法少女……(一人は男だが)が眺めていた。
「みんなが捕まってる」
「はぅ、どうしようどうしよう魔藤君、これよくないことじゃ」
「先生まで捕まってますわ、確かにマズイわね」
「どうしたら助けられるのかな?」
「助けるか」
俺は少し考える、それは相手のクマの怪人に勝てるかどうかである、この前怪人と戦った時は手も足も出なかった。
師匠の元で鍛えては見たがハッキリ言ってそこまで実力を上げたとは言えない、魔法少女科の授業も真剣に聞いていた、魔法が使えればかなりのアドバンテージになると思ったからだが、正直に言うと成績はクラスでドベ、魔法を使いこなすとは言えず、この状況で解決できる力があるとは言えなかった。
「リョウ、ここは君たちが動くより、デスティニーランドのセキュリティに任せた方が無難だよ、まだまだ学生の君たちが動くのはこの場合的確ではないよ」
ミミティが忠告してくる、その言葉に他のマスコットも頷いている。
「セキュリティ?」
「ここは魔法の国が運営しているんだよ、セキュリティに魔法使いや戦闘用のマスコットもいるさ」
「そうなのか?」
「もちろん、ほら来たよ!」
俺はミミティが指差す方向に向くとそこには、デスちゃんとティニーちゃんがいた。
「わぁー、デスちゃんとティニーちゃんです」
「何かしら、チェーンソーを持ってますけど」
「なんだか怖いです」
デスティニーランド一番人気のマスコットがチェーンソーを持ちながらやって来る、ハッキリ言って可愛らしいマスコットとチェーンソーの組み合わせはかなり不気味である。
「なぁ、ミミティ」
「なんだいリョウ?」
「あのマスコットは何者なんだ?」
俺はミミティに質問する、そして聞いて後悔する、世の中は知らない方が良いこともあると知った。
「あれは魔法の国の処刑人デスとティニーだよ、魔法の国にあだなす全てのものを殲滅する狂戦士さ」
「あ、そうですか」
そしてデスとティニーが動き出す
「くくく、こちらに人質がいる事を忘れたのかな」
クマの怪人はデスとティニーの動きに合わせて少女に蜂蜜を近づける。
「?!」
旧ブレーキをかけたように止まるデスとティニー、そしてクマの怪人を睨みつける。
「くそ、なんて奴だ、蜂蜜を近づけるなんて!」
「えっ、なになにがあるんだ?」
俺は戸惑う、蜂蜜の何が危険なのか?
「なんて卑劣な、あんな甘い蜂蜜を口に入れたら虫歯になってしまうわ」
「むぅ、卑怯です」
「はわわ、恐ろしいです」
辺り一帯の観客を驚愕していた。そんな空気を切り裂くように俺が叫ぶ
「んなもん、歯を磨けば良いだけだろうがーーー!」
そんな叫びに全員がはっ!とする
「言われてみれば!」
「確かにですわ」
「そう言えばそうか」
「盲点だったよ」
そしてデスとティニーも気付く
「くっ、気付いたか」
「あま〜い!」
どうやら蜂蜜は美味しいらしい
「まあいい、お前ら程度俺で充分だ!」
クマがデスとティニーの前に船から降り立つ。
「さあ始末してやる」
こうしてデスとティニー対クマの戦いが始まる。
それは激闘だったが、リョウ達は
『よしこのまま裏手からみんなを救いに行くぞ』
『う、うん』
『そうですわね』
『はぅ』
怪人の隙を付いて救出作戦を決行する、流石にWSS学園の生徒である、行動力は凄い
『見張りはそこそこだな、見張りは怪人ほどの力は無さそうだ』
『変身しといた方が良いかしら?』
『そうだな、魔法無しではキツイだろ』
『分かったよ魔藤君』
『はぅ、分かったです』
四人は変身する、静かな変身を遂げ作戦の確認を取る。
『よしみんな変身を終えたな、作戦としては単純だ、俺が撹乱するからお前達はその間にみんなの拘束を解け』
『う、うん魔藤君は大丈夫なの?』
心配そうに三人が見てくるが
『安心しろ、こう見えても逃げ足は速いほうだよ、危なくなれば逃げれるから安心しろ』
『それなら大丈夫だね』
『デスちゃんとティニーちゃんがクマと戦ってますがあのクマなかなか強いわね、少しデスちゃんとティニーちゃんが押されてます、急ぎませんと』
『分かってる、いくぞ!』
こうして俺はみんなを救出するために動き出す、俺にとって初めてのヒーロー活動として