光の使者の狙いは?
「大丈夫ですか三島さん!」
「光井さん」
三島さんが運ばれた病院に三島さんの後輩だが上司の光井さんがやって来た。
「ん? おーリョウか久しぶりだな」
「はい、光井さん何故三島さんは一人で」
俺は警視庁所属の他のヒーローはどうしたのか気になった。
「いや、そのな」
光井さんは歯切れ悪く答える。
「完全に光の使者にやられたんだ」
「やられた?」
「陽動だよ、東京湾海上に不審船…いや軍艦だな」
「軍艦!」
ヒーローが活躍する世界でも兵器などが街の近くに来ることなんてありえない事である。
「流石に警視庁のヒーロー総出でかかる案件だったよ、中は空っぽだったがな」
「空っぽ?」
「まぁ善意の市民からの通報だったんだがな、罠と知りつつ無視出来ないんだよ」
東京湾海上に浮かぶ不審船の情報、その不審船が軍艦である情報、その軍艦が持つ武器弾薬の情報、それらの通報を受けてすぐに動き出した警視庁だったがガセならそれまでの話だったが、その軍艦は発砲したのだ。弾丸は海に落ちたが軍艦の持つ兵力とそれに付帯する未確認の戦闘員に対抗するために、警視庁はヒーローを総出で対応するしかなかった。
「上も軍艦のあからさまな行動に陽動だと分かっていたが発砲まですると流石にな」
「それで都内のヒーローが」
「そう、三島さんとあと数人が残ってな」
「そこを狙ってですか? 狙いは?」
「分からん!」
「えっ!」
光井さんの言葉は意外だった。そこまであからさまに行動したのだから都内で何かをするのは明確だった。だったからこそ
「分からないのはまずいんじゃ!」
「正直まずい、三島さんを襲った奴が本命だったらいいんだが、襲われたのは三島さん以外にもいるからな」
「怪しいのは?」
俺は少しでも情報を欲した、そこから推理しようとしたのだが
「全てだな、もしかした軍艦が本命かもしれないってほどにな」
「そうなんですか?」
「戦闘不能にまで追い込まれたのは三島さんとあと二人、新人二人だったからな、もしかしたら狙われたかもしれん」
「それは!」
狙われたかもしれん、その言葉に嫌な事を考えてしまうが高い確率でそれが正解だろうと思う
「情報を漏らしてるアホがいる」
「警察はいつも大変ね」
そこに俺達を助けてくれた女性が話に入って来る。
「三島さんをありがとうございます【麗華】さん」
「どういたしまして、光井君」
「まさか帰っていたとは」
「帰るよ、ここは私の故郷だからね」
「二人は知り合いなんですか?」
俺は気になり質問する。
「ん? リョウ知らないのか?」
「えっ、はい」
「麗華さんは遥か昔に活躍した……」
光井さんが壁にぶつかり気を失う
「少年、どうやら光井君は眠ってしまったようだ、三島も無事だし私は行くよ」
麗華さんは鮮やかな右ストレートを放った拳を戻し病院から出て行ってしまう。
「……はっ、なにが?」
俺は辺りを見回し、麗華さんの出て行った方に駆ける
「待って下さい、俺を! 俺を弟子に!」
三王 ミッドローゼ、その名はヒーロー創世記に輝いた、今尚最強を具現化する者の一人であった。
ここは光の使者、東京本部
「総裁、作戦は多少の不備は御座いましたが概ね成功かと」
「ミッドローゼが現れたのなら仕方ない、何事も満点を取るのは難しいな」
「はい、しかし本命は成功しました」
「そうだな、都内にこれを持ち込むのにここまでの事をしなければならないとはね」
光の使者東京本部の倉庫に存在する世界を浄化する為の道具を見ながら、光の使者の構成員達は次なる作戦の準備を行なっていた。
「ですがその労力に見合う成果は期待できるかと」
「だろうね、さあ神の国を作るよ!」
光の使者総裁は部下に振り向き告げる
【光の柱作戦】
「の発動だ幹部達に告げろ!」
「はは!」
総裁の目の前からヒュッと消える部下、そして
「あの時出会った少年、魔藤亮」
総裁である加藤桂馬は部下のいた虚空を見つめながら
「運命は私と君を……」
加藤桂馬は稀代の占い師であった。その占いは人の運命を知るものであり、その運命を変えるものでもあった。