希望との出会い
俺は可憐な少女に変身した。
「えっ? いやそれはない」
化け物は真顔で否定した。悔しくなんかないが俺のSAN値は持たないかもしれない
「せめて笑え、クソ野郎が!」
俺が何も考えずに放ったハイキックを軽く受け止める化け物
「くっ、やはり俺の蹴りなんか効かないか!」
予想通りとはいえ悔しかった。
「そりゃまあな、一応プロの怪人だからな」
化け物は申し訳なさそうに目を逸らす、いや笑えばいいじゃないか! 何故気を使う?
「そのここはいいから、ほら助けでも呼んでくる名目でもいいから、そのいきな!」
「チキショー!」
あまりの悔しさに走り去ることしか出来なかった。待ってて三島さん! すぐに助けを呼んでくるからね……変身を解いてから
「ヒーロー界も大変だな」
化け物は最後にそんな事を呟いていた。
とりあえず悔しいのは悔しいが急いで助けを呼ばなければ三島さんが死んでしまう。行くべきは警視庁だ!
「おっと!」
「わっ!」
急いでいて誰かとぶつかりそうになる
「熱烈なアタックだが女性には優しくしなさい」
ぶつかりそうになった女性が猛スピードで走る俺をふわりと一回転させ対峙する形になる。
「あれ?」
「少年、そんなに急いでどうしたのだ?」
その女性は結構歳をとってるように見えるが、それでも生気に溢れ立ち姿の美しさはどの様な花より美しかった。
「す、すいません、化け物に知り合いが殺されそうなんです。急いで助けを!」
そこまで言うと
「確かにそれは急がないとな少年、どこだい?」
「えっ?」
その女性は真っ直ぐ俺を見ていた。その目を直視出来ない俺に女性は
「安心した前、私はプロのヒーローだよ」
そう言って、ヒーローの証である手帳を見せてくれた。プロならばと俺は三島さんの事を告げる。
「そうかグリプスターが、少年! 君はここにいたまえ、私がなんとかしよう」
そう言って先ほどの現場に向かう女性、俺はその後ろ姿を何故か追いかけた。見て見たいと、ただ彼女の戦う姿が見て見たかった。
俺が現場に戻って見ると先ほどの化け物と女性が対峙しており、三島さんが安全な場所に移動させられていた。
「君は何者だい? グリプスターをここまで追い込めるとはね」
「ひゃーひゃひゃ、我が名は光の使者の使徒怪人【サテュロ】だ。貴様こそ何者だ?」
「私かい? 私は……だよ」
「なぁ!」
サテュロと言う化け物が凄く驚いていた。女性の名は聞こえなかったが、サテュロの表情を見る限り有名人なのだろうか? でも見た事ないヒーローだけどな?
「ひゃーひゃひゃ、これは俺にも運が回ってきた!」
「何故だい?」
「お前を倒せば我が名は怪人界で英雄となる!」
「こんなおばさん倒した程度で英雄になれるのかい、ずいぶんな業界だね」
「そうだなそんな業界だよ!」
サテュロが動く、俺は見る事に専念して目を凝らして集中して戦いを見る。
サテュロが蹴りを放つのだけは分かった。分かった瞬間に女性のハイキックがサテュロに決まり、それで勝負が決まる。
サテュロが糸が切れた操り人形の様にその場に倒れる、俺はその事に全く驚かなかった。何故なら女性の蹴りに目を奪われ、その全てに見惚れていたからだ。
「綺麗だ!」
そんなチープな言葉が自然と出ていた。
「それはありがとう少年」
「えっ!」
気付くと女性が目の前にいた。
「うわ!」
俺は驚いて尻餅をついてしまう。
「そんなに驚かないでくれないか? 少年」
女性は俺に手を差し伸べる。俺はその手を掴みこう言った
「あなたの美しさを俺に下さい!」
今思えばなんで言葉を言ってしまったと思ったよ。
「くす、少年口説くのは構わないが今は三島を病院に連れて行こうか?」
「えっ! いやそうじゃなくて、あの」
「ふふ、分かってるよしょーねん!」
女性は笑みを浮かべながら三島を担ぎ病院に向かうのだった。
「あっ、待って下さい!」
俺は慌てて後をついて行くのだった。
そんな戦いの跡地で
「ぐぬぬ、私が一撃か流石最強のヒーロー
【三王 ミッドローゼ】
だが私はまだ負けてないぞ、くくくひゃーひゃひゃ!」
サテュロは立ち上がり暗闇の方はきえていくのだった。