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ファーストコンタクト

 私は女子高生だ。私は高一で夏休みだった。台所で冷やし中華をつくっていると携帯が鳴る。

 「はい、河西です」

 「……ハァハァ」

 なんだ気持ち悪い。

 「すいません。いたずら電話なら切りますよ」

 「清美切らないで!」

 「なんだ有香か」

 「変態かと思った。まあ、間違ってないけど」

 「ひど!……よかったいつもの清美だ」

 「何か用?」

 「大変なの」

 「何が」

 「変なの!!」

 「だから何が」

 「田んぼが!!」その発狂とともに電話は切れた。

有香の様子がおかしい。有香がおかしいのはいつものことだが、言っていることがいつも以上に支離滅裂だった。私は飲みかけの麦茶をシンクに捨て家から飛び出す。ママのママチャリにまたがり有香の家に向かった。私たちの住む町は田舎だ。どこまでも田んぼが広がっている。そこら中に田んぼはあるから有香の言ってるのは自分の家の田んぼのことだろう。有香んちは農家だから。昨日の豪雨のせいで道がぬかるんで泥がタイヤに纏わりつく。有香の家に到着すると有香は縁側で泣いていた。

 「私のせいだああああああああああああああんんんんんんもおおおおおおおおおおおおおおおおおんんん」

 そう言う有香の顔はぐちゃぐちゃで見れたもんじゃない。

 「チャコがやってきたんだよおおおおおおおおおおおおお」

 鼻水をTシャツの肩の部分で拭っている。チャコというのは有香が前飼っていた猫だ。有香がチョコ食べさせたせいで死んだ猫。

 「意味わかんない。何があったの」

 「きよみまあああああああああああああああああんんんあああ~んんん」

 「死ね」

 「まあああ~~~~~~~~~~んん」

 鼻をすする音が汚らしいい。てかそのダサいピンクのTシャツ脱げばいいのに死ねばいいのにと私は思う。

 「ッズズ……ッズズ……あのね……っんぼが……見たら……てて……」

 「死ね」

 「ひどいよおおおおおおおおおおおお~~~んっんっん~~~んんん~~~」

 ほんとうるさい。とりあえず有香んちの田んぼを見る。稲はところどころ昨日の暴風雨でなぎ倒されてはいるがいたって普通だ。意味が分からない。

 「……上から見て」

 挨拶もほどほどに有香んちにずかずかと上がり込んで二階に上がって有香の部屋に入る。引き出しの上に乗ってあったディズニーのぬいぐるみを蹴散らして窓から屋根に出る。どこまでものどかな田園風景が続く光景に私はうんざりする。

 「何もないじゃんッ!!」

 「ミステリーサークルでもあんのかと思ったわ!!!」

 「人が死んでんんおおおおおおおおおおおおおお!!」

 「はぁあ!!えっ!あれか!!?」ドダドダドダドダドダ!階段を駆け下りて人が倒れているところへ向かう。なにが死体だ。アホウ、生きてるかもしれないだろうが。靴のまま田んぼに突っ込む。なぎ倒されている稲でわかりにくいが確かにそこに人が倒れていた。

 「ねえ!生きてる?息してる?」

 体を揺さぶる。脈はある。たぶん。どろだらけのおじさんか。さて、人の命とファーストキッスどっちが大事だろうね。思うより先に体が動いた。人工呼吸しておじさんは一命をとりとめる。一応、救急車を呼んでその日は終わった。



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