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そして迎えた26日。偶然にも、この日は大学創設日らしく、大学は休みだった。
徳馬は、夜7時に待ち合わせで、まったく焦る必要はないのだが、6時に目を覚ましてしまっていた。
興奮と緊張が、既に徳馬を襲っているようだ。ひとまずトイレに行き、顔を洗い、朝食を取る。
だが、その過程でも、時計をちらちら見てしまうなど、落ち着かない様子だった。
ひとまずやることを済ました徳馬は、ソファに座り、どのように切り出すかを考えていた。
『ここは、ぱっと渡せばいいかなぁ。それとも、じらしてじらして渡すかなぁ』
正直、どっちでも良い様な事で悩んでいた。
性格には、暇なので、悩まざる終えなかった。
『まぁ、普通に誕生日おめでとうでいいかな』
ひとまず納得して、時計をちらりと見る徳馬。時間は6時47分だ。
「あー、落ちつかねぇ。たかが誕プレ渡すだけでよぉ」
徳馬は、皆さんも分かっているだろうが恋には奥手なタイプだ。
故に、どうすればいいのかなど、さっぱり分かっていない様子である。
何とか時間をつぶし、迎えた6時。徳馬はぼちぼち服を選び始め、公園へ向かう用意を始めた。
「あー、どっちがいいだろ。こっち? いや、こっち?」
普段あまり気にしない服にも、今日は何故か気になっているようだ。
おそらく、沙紀の誕生日という、重要な日であるからだろう。
服を選び終わると、6時12分になっていた。
徳馬は玄関へ向かい、靴を履く。そのっま扉を開け、鍵を閉めると、公園へと向かっていった。
6時54分――。沙紀が、公園に姿を現した。
「ごめん、まった?」
「いや、俺が早く着すぎただけだよ」
沙紀の問いに優しく答えると、沙紀とベンチへと向かい、座った。
「で、今日はどうしたの、徳馬」
徳馬が切り出す前に、先に沙紀が喋る。
「んだよ、分かってるくせに」
「えへへ」
沙紀は笑みを浮かべながら、手を伸ばす。
徳馬は、その意図を理解し、ポケットからプレゼントを取り出した。
「ま、誕生日おめでとう。沙紀」
プレゼントを沙紀の手におく。すぐさま沙紀は、綺麗に包装をとり、プレゼントを開けた。
「どうかな……。気に入ってくれたらいいんだけど」
落ち着かぬ様子で、徳馬が話す。沙紀はプレゼントを眺めたまま、小さな声で言った。
「……綺麗」
その言葉に、徳馬が興奮して沙紀の目を見る。
「ほ、ほんとか! よっしゃぁ。良かった」
「ありがとね、徳馬」
満面の笑みを浮かべて徳馬を見つめる沙紀。徳馬の顔が、真っ赤に赤らんだ。
徳馬を見つめる目を閉じ、徳馬へと顔を近づける沙紀。それに伴い、徳馬も目を閉じた。
2人の唇が重なる――。
2度目のキスだった。沙紀も、徳馬も、お互いに笑いあっている。
きっと、この日々はいつまでも続いていくんだろう――徳馬は密かに、心の中でそう思っていた。