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プレゼントという悩みも解消し、いつでも沙紀の誕生日を迎えられる状況になっていた。
沙紀の誕生日は3日後の5月26日生まれ。徳馬は、沙紀にプレゼントを渡さなければいけないので、沙紀にその日待っておいてくれと伝えることに。
大学へ着くと、沙紀の元へ向かう。沙紀は友達と話しているようだった。
そんな沙紀を手招きし呼ぶと、1度咳払いをしてから言った。
「なぁ、沙紀。26日、何か用事あるか?」
「ううん、ないよ」
その回答を聞くと、徳馬は1度息をつく。
「じゃぁ、その日自然公園に夜7時に待ち合わせ……いい?」
「うん、いいよ。分かった」
徳馬は用件を伝え終えると、じゃぁ、と廊下を走り去った。
少し顔が赤らんでいるのは、沙紀にも分かっているようだった。
『うーん、やっぱり徳馬、何かくれるのかな……。うれしいな』
想像しただけで、顔を赤らめる沙紀。沙紀の周りの友達は、そんな沙紀をからかっていた。
「よーし、これでオッケェだな」
やるべきことはやった、と自信満々に講義へと向かう徳馬。
その途中、徳馬は背後から誰かが近づいてくるのを感じた。
振り向くと、後ろには将司が居る。
「よぅ徳馬!」
朝っぱらから元気だな――徳馬にとっては少々雑音だった。
「なぁ、お前、彼女さんへのプレゼント買ったか?」
どうして誕生日知ってるんだ、と言いそうになるも、徳馬はこらえて質問に答えた。
「あぁ、買ったよ。昨日な」
「おぉ、さすがだねぇ」
茶化すように言う将司。徳馬は少しムッとしながらも、それを誇るように胸を張る。
「まあな!」
茶化したはずが、逆にそれを誇られている――将司は面白くなさそうな顔を浮かべた。
だが、また反論する言葉が見つかったのか、ニマッと不敵な笑みを浮かべる。
「なぁ、徳馬。覚えてるよな、約束」
「約束?」
一瞬本当に忘れたように聞き返す徳馬。しかし、すぐに思い出し、あっと声をあげた。
「飯、奢ってくれるんだよな」
「え、あ、いや……あれはお前が勝手に」
「あれ、徳馬君ってそんな軟弱者なの?」
その言葉に、徳馬の顔がこわばる。
「あぁいいさ。奢ってやるよ。まぁ、次回は、俺が高得点とって、お前が涙目になるけどな」
何故か強がって喋る徳馬。しかし今涙目なのは徳馬だ。
「よし、じゃぁ、28日の夜、ステーキのボムな! よろしくたのむぜぇー」
何故か強がったその姿勢のまま、徳馬はその場に立ち尽くしていた。
ちなみに、ステーキのボム、最低金額のステーキは、5200円だ。