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翌日、徳馬は、もう1つの悩みに、頭を抱えていた。
そう、沙紀の誕生日についてだ。
一体何をあげたらいいのか、その疑問だけで、昨日は3時間をつぶしていた。
そうしたところで、徳馬は1つの名案を思いつく。
「そうだ! 他の女子に、喜んでくれそうなものを聞いてみよう!」
結局自分では考えられないようで、人に頼って悩みを解決させようと考えた徳馬。
それを実行すべく、徳馬は大学へと向かった。
大学へ着くと、いつものように将司が待ち構えている。
「よぅ! 元気になったみてぇだな」
朝というのに、やけにテンションが高いのには、徳馬はもう慣れている。
「あぁ。もう大丈夫だぜ。ってことで、ちょっと用事があんだ。じゃな」
「お、おい、なんだよ」
腕に手をかけようとする将司を振りきって、女子の元へと向かった。勿論、沙紀に会わないよう、慎重にだ。
「あ、大沢。どうしたの?」
沙紀の友達の、”川上優香”が徳馬に問うた。
徳馬は、少し恥ずかしがりながらも、川上に用件を伝えた。
「へぇ~、そうかぁ。でも、何でも喜ぶんじゃない?」
いい答えを期待していた徳馬だが、1番聞きたくない答えが返ってくる。
何でも喜んでくれる――例えそうだとしても、いや、そうだから、何をあげればいいのか困っているというのに。
「じゃぁさ、例えばどんなのがいいさ」
ここで終わっては意味がない、と引き下がらず、少し質問を変えて聞いた。
すると、今度は川上も真剣に考え始めてくれ、腕を組んで考えているようだ。
30秒ほど静かだった後、川上の口が動く。
「携帯のストラップとかどうかな。蛍のストラップなら、沙紀すごく喜びそうだけど」
「それだ!」
答えを見つけたかのように、大声を出して喜ぶ。
その大きさは、周りの人が一瞬振り向いたほどだ。
それに気づき、徳馬も少し恥ずかしがるも、すぐに目をそらし、何もなかったようにまた川上の方を向いた。
「ありがと! そうするよ! ありがとね!」
本当に喜んでいるようで、つい川上の手を握ってしまう徳馬。
すぐに、あっ、と気づき手を離すも、川上の頬が少し赤らむのを、徳馬は見ていた。
それもあり、早く立ち去りたいと考えた徳馬は、「じゃ、じゃぁ」と言い、その場を去っていった。
そのとき、徳馬とすれ違うものは見たという。人々を魅了する、真の笑顔を――。