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蛍の絆  作者: 吉川翼
第二章 蛍の恋
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4



『うぉー、始まった。でも、分かるものは分かるけど、分からないものは分からない、だな。しっかり見極めて処理していこう』

あくまで冷静を装う徳馬。だが、確かに、彼の首筋からは、冷や汗が流れていた。

それでも、しっかりシャーペンを握り、問題用紙に目を通し始める徳馬。そこには、絶対やってやる、という気持ちが、大いに感じられた。


そうして、分かる問題と分からない問題の取捨選択を始める徳馬。

『この文を英語に直す……無理だ、捨てよう。次の文も……無理だ。次は英語を日本語にか。えっと……無理だ。あ、あれ?』

想像以上に分からない問題が多い徳馬、しかし、この結果を聞いても、他の者達はいささか不思議には思わないであろう。

なぜなら、徳馬の英語は、中学3年で止まっているのだから。


それでも諦めず、問題に目を通す徳馬。ここまで33問を見てきているが、解けた数は3つ。

内、自信があるものは、1つであった。

『やっべぇー、やべぇけど、やってやる!』

あくまでも気力だけは本物の徳馬。しかし、それが回答に反映することはない。


『また英語を日本語に直すのか。こうなりゃ、適当に書いてやるぜ』

ついにやけっぱち作戦にでる徳馬。どうやら、英文を見て、なんとなくで日本語に直してみるらしい。


『Whose paper is the paper which you have? Possibly, isn't it mine? か。paperはペーパーだし、きっとこれは、ペーパーは誰が持ってますか?だな、うん

 その後ろのは、mineが入ってるし、私のです、だな、うん』

1人で納得したように頷く徳馬。ちなみに、不正解である。

正解は、<あなたが持っている紙は誰の紙ですか?もしかして、私のではないですか?>である。

なんとなくあっているが、不正解は不正解だろう。


続いて、日本語を英語に直す問題。徳馬は、これでもやけっぱち作戦に出る。

その結果、英語とは到底言えない謎の文が完成し、それを見て涙ぐんでいたという。


その後も問題を解き続け、いや、文字を書き続け30分後、チャイムが鳴った。

それは、試験が終わったことを意味するチャイムだ。

徳馬は、ふぅ、と息をつき、シャーペンを置く。試験官がプリントを持っていくのを見届けると、その机に倒れこんだ。


「では、終わります。試験は終わりです」

試験官がそう告げると、立ち上がる。そして、かばんを肩にかけると、焦点があっていないまま、部屋を後にした。


「どうだった!」

将司が勢いよく話しかける。が、徳馬の耳には届いていないようだ。

「あちゃー、こりゃ残念みたいね。ってことで、飯決定な!」

1人で盛り上がる将司、そして、その隣で放心中の徳馬。将司は、「じゃぁな」とだけ告げると、徳馬の下を去った。


「あれ、徳馬。その顔は、駄目だったみたいね」

沙紀が、後ろから話しかける。その声には、何とか徳馬も反応し、小さく頷いた。

「まぁ、あの勉強じゃ、今回は仕方ないよ。次、がんばろ!」

優しい笑顔でそう言ってくれる沙紀をみると、徳馬の心も落ち着いてくる。

「あぁ、うん。次は、がんばるよ」

「よし。じゃ、帰ろっか」

元気になった徳馬を見て、また微笑む沙紀。そんな優しい沙紀が、徳馬に聞く。

徳馬は、それに頷いて、変える意思を見せる。それを見ると、沙紀は満足し、徳馬を元気付けるためか、構内にも拘らず、徳馬の手をぎゅっと握った。

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