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第二十四話 「嵐の前」

水着回だー!

と、思ったら剣道の内容で埋まってしまいました。

私が一番残念だよ、ちくしょう!

「小手あり!」


 冬桜を示す赤の審判旗が上がる。


 鍔迫り合いから相手が手元を上げたその一瞬の隙。多分引き面を防ごうとしたのだろうけれど、片手であったことが仇となって小手が空いた。

 そこを見逃さず、小手を見事に打ち込んだ。

 いわゆる『引き技』に該当するのだと思われるが、私自身剣道を嗜んでいる訳ではないので細かい事は判らない。だが、機の読み合いや一瞬の攻防は通ずるところもあって、見ていて面白い。


「千鶴子ちゃん、今のは勇ちゃんが勝ったのよね?」

「はい。綺麗に小手が決まりました」

「動きが早くて、相変わらずおばさんには何がなんだかだわ」


 苦笑しながらも目は片時も試合場から離さず、手を握り込んで試合を見守っている。

 さなちゃんやそのお友達も同様で、お喋りするのも忘れて食い入るように見入っている。応援団の皆様や一緒に並んでいる女子部からは拍手が上がり、まだ予選リーグ1試合目だというのに決勝戦のような雰囲気が応援席を包んでいた。


 動きの早い剣道の試合は一般の方からすると、技が決まった瞬間が判り辛いので、とっつき難い印象をもたれる事が多い。

 先ほどのおばさまの言葉がその最もな例だ。

 だけど、その一瞬で技を決めた時の爽快感は、やっている当人しか判らないにしても、見ているほうも「おおっ!」と思うほどに、見ていて気持ちがいいものなのだ。


 さて、現在目の前で行われている予選リーグ。


 冬桜は団体の先鋒、次鋒、中堅、副将、大将において、勇を次鋒に据えて出場してきている。先鋒、中堅は2年生が務めており、副将は副部長、大将に成次君という陣容だ。

 勇が次鋒ということは、先鋒の作った試合の流れ、勢いを勝って次に繋げるという、結構重要な役割を与えられていると言う事になる。

 一年で大会団体戦メンバーに選出される。

 それだけ勇が買われているという事が、お隣さんとしては鼻が高い。

 といってもどの役割でも、求められる物、プレッシャーは半端無いので、どの位置だったにしても、こうして知り合いが試合の場に立っている事が誇らしく思えた。


 そんな陣容で団体戦に臨み、先鋒の2年生は2:3で辛くも破れた。

 流石全国から勝ち上がってきた者達。

 簡単には事が運ばないと改めて思い知らされた中で、ここで躓かせないためにも次鋒は勝ちを逃す訳にはいかなくなった。


 そして始まった勇の試合は、幸先よく一本先取で進んでいる。


 改めて試合場で相対する勇を、固唾を呑んで見守る私達応援組み一同。


 相手側は一本取られたので、取り返すために「始め!」の合図と同時に攻め入った。けれど勇はそれを読んでいたのか、小手を狙った打ち込みをギリギリでかわし、そのまま振り上げ面を打ち込んだ。


 面ありの声と同時に再度上がる赤の審判旗。


 3本勝負で見事2本先取し、しっかりと次鋒の役目を果たした勇は、きっちりと終了後の礼法を守り、立礼をする相手を見ながら後ろへ下がり場外へ出る。


 その動作には一部の隙も見当たらない。


 私自身も気が付かないうちに緊張していたのだろうか、勇が場外に出たところでふぅっと溜息が漏れた。


 試合前、そして先ほどの面を決めた後のしっかりとした残心でも思ったけれど、勇からは周囲が歪んで見えるんじゃないかと思えるくらい、試合に対して負けられないと言う意気込み、気魄が見て取れた。

 無論全員がそうでは有るのだけれど、身内贔屓というか、勇の姿に何時も以上のものが感じられた。


 端的に言うなら、人が変わって見えた。


「凄いわね、生方君。何時もとはまるで違うわね」

「ああ、何時も以上に気合が入っている」


 私と似た物を感じたのだろうか、由梨絵も同じ感想を漏らす。


「まぁ全国大会だ。気負って当然だろう」


 そう応えながらも、勇について改めて物思う。


 最近成次君の攻勢に気を取られてばかりだったが、勇の事も自分で宣言した通り、今までは幼馴染、あるいは弟感覚で見ていた視点を『1人の男性として見る』と自分なりに視点を変えてみた。


 ついこの間まで私の身勝手さから『勇はさなちゃんの婿』と思い込み、押し付けようとして、実はそうではない事を知った。だからこそ、正直な話としてかなり労力が必要ではあった。


 そもそもの前提として、男として見るという意味が、私自身よく分かってはいない。


 年下の幼馴染の子という考えは捨て、そうしたフィルター無しで見てみれば、勇は年こそ15といっても、男子の一言金鉄の如しと誠実で、他人への気遣いが出来る、ちゃんとした“男”だというのは理解できた。

 でも、男らしくあろうと常に頑張っていたのを、私が『さなちゃんの為』と捉えていたので気にもしていなかった。

 だから今までの私に対してのそういった気遣いも、それが年上に対する自然なものと思っていた。

 だが、それが“私”だからの行為であったと意識すると、面映いやらなんやら形容しがたい思いに駆られはする。


 けれど、それ以上の気持ちは湧いて来ない。


 理由は単純。


 幼馴染として過ごした9年という月日が、彼を“弟”という領域にカテゴライズしてしまっていて、どうにもそれが剥がせないのだ。

 だが、そこで足掻いても仕方が無い。

 宣言した通り、私自身が新しい勇の一面を見出すしかないのだ。


 そうして最近気が付いたのだが、夏休みに入ってから、正確には夏休みに入る前あたりから勇は大きく変わっていた。何時もの明るく何事にも気負いしない態度はなりを潜め、こう何と言うか覚悟のようなものが腹に据わったように、落ち着いた態度を見せるようになっていた。


 何があったのかは判らないけれど、頼もしさという点では非常にプラスだと思う。


 頼もしいというのは確かに美点で、いざという時に護ってもらえるという安心感はある。

 けれど勇に護ってもらう側に私が立つ、という事に、先ほどの“弟”という観念がどうにも邪魔をして上手くイメージできないでいた。


 結局の所、そんなに今直ぐと焦らずとも、確りと腰を据えて見ていけば自ずと変わってくるだろうと、現状のままとなっている。


 自身が言った事だが、私の見方が変わることで周りも変わるのだ。


 だからこそ、これからの間しっかりと勇を見続けていれば、きっと私も変れるだろう。


「ほら、千鶴子。金剛寺君のお出ましよ」


 掛けられた言葉に、思案の海から意識が引っ張り挙げられる。

 視線を試合場に向ければ、只今私に変革をもたらしまくっている成次君の姿が見えた。

 どうやら考え込み過ぎていた様で、中堅は3:1、副将戦も3:1と共に勝利したシーンを見過ごしていたようだった。

 団体戦予選はリーグ戦で3校で競い合う。なので、勝ちを1点、引き分けを0.5点と計算し、更に試合内の有効打も加算された上で、点数の多いチームが上位となる。よって勝ち点は多いに越した事は無く、大将戦の結果如何では今後の試合展開次第で負けてしまう事だって十分に考えられる。


 勇があれだけ頑張ったのだから、それを無にしない為にも成次君には勝ってもらわねばならない。


 ならないのだが……。


(なんでこうモヤモヤさせられるんだ)


 勝ちを祈る事は間違い無いのに、成次君を応援すると言うことが負けた気にさせられて仕方が無い。


 都度何かある度に、彼の事が気に掛かる。

 そんな気は無いはずなのに。

 そう思っているはずなのに、何故か心臓が高鳴る。


 でも、自分のそんな気分とは裏腹に、目線は試合場の彼から目が離せないでいた。


(きっとあれだ。さっき死亡フラグっぽいのを建てていったから気になるだけだ。うん、きっとそうだ)


 戦争モノ映画にあるように、戦地に旅立つ前に「必ず勝って帰ってくるよ」等と言うキャラクターは、大概劇中において不遇の死を遂げる。

 それと同じ事を成次君がしてみせた所為だと思い込むことにして、頭の中のモヤモヤを隅っこに押し込め、試合の応援に集中した。









「生方君、凄かったですね!」

「うんうん! 二本目なんて時代劇の殺陣みたいに綺麗に決まってたし!」


 勇一郎が決めた技を見て、美和と佳奈美が小声で歓声を上げている。

 ずぶの素人の私ですら凄いと思った先ほどの面打ちは、思わず息を呑むほどだった。


「前の大会の時より凄くなってる気がするよ」


 2人の感想の前に私も言葉を漏らす。

 中学最後の大会で見たときも凄かったけれど、今日の勇一郎は凄みがある。


 その凄みお陰か、試合に危なっかしさは余り感じられない。

 けれど、何時もはもっと自然体というか、気負わずありのままで居たのに、必要以上に力んでいる気がする。


 何が、勇一郎をそうさせたのか。


 なんとなくは想像がつく。きっとさっきみたいな金剛寺先輩と姉さんのやり取りや噂を耳にして、焦っているんじゃないかと思う。


 試合出立を見送った際を思い出す限り、多分この想像は外れていない。


「千鶴子さん、行ってきます」


 勇一郎は姉さんの顔に穴が開くんじゃないかと言うほど見つめ、短くそう口にして頭を下げて出発していった。

 何時もの明るく気負いしない態度とは全く違い、まるで興廃此の一戦に在りとでも言わんばかりの意気込み様だった。


 試合を終えた勇一郎が待機場所へ戻って面を外すと、今まで見た事の無いような、怒っているようにも見える厳しい表情を浮かべているのが、遠めにもハッキリと見えた。

 その表情は、まるでまだ自分の試合は終わっていないと言わんばかりで、試合場をじっと睨みつけている。


 確かにその姿勢も心意気も凄いのだけど、心のどこかが違和感を訴えていた。 


(何時もの勇一郎と違う……) 


 物事に何時だって真剣な勇一郎には違いない。

 だけれど、こんなに自分を追い詰めるかのような事は、いつもの勇一郎ならしない。もっと余裕というか、柔軟性がある立ち振る舞いをするはずなのに。

 きっとこう言う時は視界が一方向だけになって、他が全く目に入らなくなる。

 脇目も振らないといえば聞こえはいいかもしれないけれど、逆に言えばそれだけ他に気を配る余裕が無いと言う事。


 一体何が切欠だったのだろうか。


 そう物思いに耽る間にも試合は続いていく。

 次鋒を務めた勇一郎の後に続いた中堅、副将戦は見事に冬桜が勝ってみせた。観客席は大いに湧き上がり、賞賛の拍手は雷の如しだ。

 そうして向かえた大将戦。

 試合場に立つ金剛寺先輩は、勇一郎とは違って自然体であるかのように見えた。

 審判の声と共に試合が始まり、体育館を揺らすかのような咆哮にも似た掛け声を上げ、両者が対峙する。


 金剛寺先輩は竹刀を上段に構え、相手は攻め倦んでいるのか竹刀を中段に構えて対峙している。

 睨み合ったのはほんの数秒。

 相手が竹刀を上げかけたその一瞬、金剛寺先輩の竹刀がブレたかと思うと、袈裟懸けに斬るように相手の胴を打ち抜いた。


 おぉ、という感嘆の声と共に拍手が上がり、今の一撃が有効である証の赤の審判旗が上がる。


「金剛寺先輩、すごっ!」

「私、目が追いつきませんでした!」


 周りが連勝に湧く中、その瞬間、勇一郎の表情が更に険しいものになったのを、私は見逃さなかった。 


(金剛寺先輩と何かあったのかな)


 ふと視線を姉さんに向けると、姉さんも姉さんで何か思い詰めた感じで試合に見入っている。両手を胸の前で握り締め、真剣な眼差しで試合を応援する様は、まるで少女マンガの一コマのようだ。

 そして思い返される先ほどの試合前の、あの通路でのワンシーン。

 何か見えないところで、私達にかかわる事が動いている。


 そんな感じがしてしまう。


 置いて行かれるような、そんな感覚を抱く私を他所に試合は進み、冬桜は予選リーグで見事勝ち抜き、ベスト8に駒を進めた。


 勝利に湧く応援団の中、一人考え込んでしまう。

 勝利が決まっても試合中からずっと勇一郎の表情が変わらなかったのがは何故なのか、と。



 それが妙に気になったまま、本日の予定は終わりとなった。



 そうして試合に勝った余韻は試合が終わっても覚めやらず、帰途のバスの中は喜びの声で一杯だった。


「すごいね!! ベスト8だよ、ベスト8! それも久方ぶりの出場でなんて凄すぎるよ!」

「本当ですね! 女子の部があるから明日の中日は空いちゃいますけれど、明後日の最終日が楽しみです!」


 大会初日が終わり、剣道部は大会出場校用の合宿所へ泊まる事となっているので、私達応援組はOB会の方々が取られた旅館へと分かれることになった。

 女子部は女子部で応援とは他に遠征合宿があるため、応援組から一時離脱し、約40名ほどで旅館に向かう事となった。


 残念ながら勇一郎のおばさまは仕事のため、試合終了後に別便で帰られてしまった。

 ただ、帰り際に、


「どんな結果だったにせよ、戻ってきたら盛大にお祝いをしましょうね!」


 と、「勇ちゃんに宿泊施設先での空き時間を聞いたから、この時間なら電話が繋がると思うわよ」という、素敵な笑顔でありがたい情報を頂いた。

 どうにも色々とお見通しなのか、照れるやら恥ずかしいやらだけど、折角貰った情報を不意にするにはいかない。


 でも――、何を話したらいいだろう。


 いつもなら話題に困る事はないけれど、あの試合場での思い詰めた勇一郎の表情を見てしまった後では、声をかけてはいけないような気がした。


 試合の緊張感を私の電話なんかで切れさせてはいけないと。


 でも、逆に今何か声をかけないといけない、と思う気持ちも大きくて、その間で揺れてしまっていた。


「……まぁ、悩むより当たって砕けろよね」


 その場で足踏みしたって仕方がない。

 それは今までで得た教訓だ。

 それにメインは海水浴だとしても、仕込みだってしておくに如くはないしね。


「よしっ!!」


 素早くポケットにスマホを仕舞うと、自分に活を入れるように、両の手をぐっと握り締めた。


「早苗?」

「早苗さん?」


 私の独り言が気になったのか2人が声をかけてくる。

 うん。

 美和と佳奈美が居てくれる。私1人じゃないんだから。

 

「ちょっと作戦をね」

「え、なになに?」

「何かされるんですか?」


 私の言葉に身を乗り出して質問してくる2人に、宿に戻ってからと言葉を濁して一人気合を入れなおした。









 勝ってしまった。


 試合後のバスの中で揺られながら、まるで勝ったのが不本意だったかのようにぼんやりと今日の事を考えていた。


 試合が終わってみれば、冬桜は他2校に圧倒的差をつけて予選リーグを突破した。

 勝つのは全然良いことだ。毎日練習してきた勇の頑張りの結果が、目に見える形で結実したのだから。

 だけれどそれが成次君にも結びついている訳で、それも良い事のはずなのに……なんというか、素直に喜べない。


 それもこれも成次君の所為だ。


 全く彼ときたらハラハラドキドキと、こちらを一方的に振り回して憤懣やるかたない思いだ。


 しかし一つこれで分かったというか、気が付いた事がある。

 前に私が勇に対してアプローチするとさなちゃんとした約束。

 その行動の一つの例がこれなのだと。

 つまり私が今抱いているような感情を、私が勇に思わせるようにすればいい訳で、これがある種のお手本なのだ。


 だが、お手本が見つかったとは言え、被験者は私なのだ。身をもって体験すれば覚え易いとは言うけれど、正直勘弁して欲しいのが本音。


 で、私自身がそう思うことを、さなちゃんとやろうとしている訳で。


 勇には迷惑をかけると前もって言ったが、迷惑の度合いを測り間違えていた事に謝りたい気分で一杯だ。だってこんなに事有るごとに悶々とさせられるなんて、思いもしなかったのだから。


 とはいえ既に動き出してしまったものを止める訳にはいかない。


 しかし都度のこの対応力の無さと言うのは、早急に何とかしないといけない。主に私の心の安らぎの為にも。だが恋愛関係なんて何をお手本にしたらいいのか。


「どうしたのよ?」


 ふと由梨絵はどうだろうかと見つめていると、それを気にしてか向こうから声をかけてきた。

 由梨絵はよく本を読んでいる。

 殆ど読書中毒と言ってもいいくらい、鞄の中には何かしら一冊は本が入っている。といっても内容は学術書だったり文学書だったりと、サブカルチャー的な物とは縁遠い。

 しかし、由梨絵だって女の子だ。

 女の子ならば、ちょっと位甘酸っぱいものに憧れたことだってあるんじゃないかな。女の子誰しもが通る道だろう、こういうものは。まぁ、これは元男の幻想かもしれないけれどね。

 ともかく、もしそうだとすれば、由梨絵だってちょっと位、そういった本を読んだことはあるんじゃないかと思う。そう思い声をかけてみた。


「由梨絵、ちょっと聞いてみてもいいか?」

「何よ? 妙に改まって」

「お勧めの少女漫画とか恋愛小説を知らないか?」


 そう尋ねた瞬間、由梨絵は面食らったように目を白黒させたかと思うと、声を殺して笑い始めた。


「ちょっと、由梨絵。幾らなんでもそれは酷くないか」


 肩を震わせ笑う由梨絵に、流石にちょっと傷付いちゃう。だって、女の子だもん・・・嘘です。でも質問しただけなのに笑われるのは、ちょっと納得がいかないと思っても間違いないはずだ。

 だが由梨絵は、本当に何がおかしいのか一向に笑いを収める気配も無く、落ち着いたかと思った途端に笑い出してしまって手に負えず、結局宿について荷物を部屋に片付ける頃にようやく話が出来るようになった。


「いや、ごめんなさいね。貴女の口から少女漫画とか恋愛小説なんて言葉が出てくるなんて、露程も思わなかったから」

「……まぁ確かに私に似合う言葉ではないとは思っているが、ああも笑われると流石に傷付くぞ」

「だからごめんなさいって。で、どういう風の吹き回しよ」


 宿の備え付けの急須でお茶を入れてくれながら、由梨絵が私の問いの意味を問いただしてくる。


 ちなみに宿はそこまでご大層なものではないが、そこそこ施設の整ったところを選んだ。で、男性組と女性組とで別れ、5人部屋で私と由梨絵、さなちゃん、美和ちゃん、佳奈美ちゃんと一緒の部屋割りにしてある。

 さなちゃんたちは夕食までにと、早速お風呂へ連れ立って行った。本当は私も一緒に行きたかったのだが、私は私で由梨絵と一緒に今後と明日の予定をOB会の方と軽く打ち合わせした為、部屋は由梨絵と2人きりだ。


「まぁ…そのだな。最近やたらと成次君が声をかけてくるじゃないか」

「そうね」

「で、だ。その都度心臓に悪い思いをしているのは、私の経験値不足が招いていることだと思ったのだ。だから何かしら手本なり何なり、事前に知識を得ておけば、多少は対応力も上がるだろうと」

「なるほどねぇ……」


 手に持った茶碗をくるくると回しながら話を聞いてくれた由梨絵だったが、回答は至極シンプルとしたものだった。


「止めておきなさい。貴女には似合わないし、正直付け焼刃なんて何の足しにもならないから」


 頼みの綱をあっさり斬られて、慌てて質問を投げ返す。


「いや、世の女子達はああいうのを参考にしているんじゃないのか?」


 そうでなければ、一体世の女子達はああいう事に対して、一体何処で経験を積んでいるのか。全部自力でやってのけているのだとすれば、「女は強い」とよく世間一般に言われる根拠は「女だから」の一言で片付いてしまう。


「たまに貴女って世間知らずよね。あれは只の物語であって展開は決まっている。だから状況なんて人それぞれで、当て嵌まることなんて滅多にないからお手本にしようとしても無駄よ。あれは単に娯楽として楽しむものであって、自分の経験則とは比べ物にならないんだから」


 そりゃそうだ。元男であった身で女性世界の事を熟知しているなんて人は居ないだろう。だからこそちゃんと知っておきたいのだ。


「だが、知識としてあるに越した事は無いだろう?」

「それはそうだけど、所詮物語は意図されたもの。今現状については当て嵌まらないなら役に立たないでしょ」


 まぁ確かに言わんとする事は判る。

 クラスのイケメンに恋してしまい、恥ずかしくて声を掛けれず、たまたまイベントで仲良くなって、そこにライバルが登場云々なんて物語の中の世界だ。


「確かに私だって読んだことはあるわよ。でも正直言って私、その手の本を読んだことって数えるくらいしかないし、殆ど覚えてないのよ」

「ふむ……結局は自力で何とかするしかないのか」

「そういうこと。それが人生経験ってものの醍醐味じゃないのかしらね」


 由梨絵の言葉に手に持った茶碗を眺め黙り込んでしまう。

 空の茶碗は恋愛に全く知識の無い今の私のようで、そこに注がれるお茶は自分で注ぐか、注がれるしか無いのだ。


 そこにどういう種類のお茶が注がれるか。


「難しいな……」


 思わず愚痴るように言葉がこぼれる。

 よくもまぁあの時の私は未知の分野に、こうも軽々しく足を突っ込むと宣言できたものだ。過去に戻れるなら「考え直せ!」と殴りつけたい気分だ。


「ま、深く考えずに、いつも通りの貴女で居ればいいんじゃないかしらね。下手に取り繕っても、後で火がつくのは面倒でしょう」

「……確かに」


 私の不安を見て取ったのか、フォローするように由梨絵が声をかけてくれる。

 不安しか浮かばないが確かに言われるとおり、自分で何とかするしかない。ほかならぬ自分自身の事なのだから。


「でも本当に悪いけれど、久しぶりに笑わせてもらったわ。鋼鉄なんて言われてた貴女が少女趣味を持ちたいだなんて。よっぽど金剛寺君が気になるのね」

「べ、別に成次君は関係ない! もう、そこから離れてくれ。まったく」


 恋愛相談じみた事をしたことに、今更になって顔に血が昇る。

 本当なら勇についてあれこれとしないといけないのに、どうしても成次君の顔が頭の中でチラついて話がそちらに流れてしまう。

 こんなにも振り回されるなんて、私らしくないと思う。

 けれど、私も変ったのかもしれない。

 なら、“今”の私自身で、現状を何とかするしかない。

 

 でも、私らしく…か。それが通じないから困ってるんだが……。


 深く考え過ぎというか、気を回し過ぎて前回失敗したのだ。

 だから今回は流れに身を任せるのも、千鶴子として経験値を上げるのには良いのかも知れない。

 でも、成次君ばかりに気を取られていると、さなちゃんと勇をめぐって争う方面が疎かになってしまう。

 今直ぐに出る答えの類のものではないのは確かだろう。


 とりあえず気分を切り替えるためにもその話はそこで切り上げ、私達も夕食前にお風呂へと足を運ぶこととした。


 なんだかんだといって試合会場は暑くて汗をかいたし、それに最近減っていたさなちゃん成分補給の為、姉妹のスキンシップの時間だ!


 どれだけ成長したかお姉さんが確かめてあげますよー!

 いやらしい気持ちはありませんよ、ええ。これっぽっちも。

 これは姉として妹の成長を見守る義務があるからなのです!


 と思ったら、お風呂に着いた途端3人が上がってた所に出くわした。


 ガッデム!









「え~、それでは本日の剣道部の勝利と、明後日の大会本番での更なる健闘を祈念して、乾杯!!」

「「「かんぱーい!」」」


 OB会会長の音頭の元、あちこちでグラスをぶつけ合う音が上がる。

 夕食はお部屋で取るのだと思っていたけれど、お座敷でのちょっとした宴会のような状態となっていた。 


「生方の勝利を祝って!」

「明後日の本番での勝利を願って!」

「勇一郎のがんばりに!」


 座敷に座った私達3人もそれぞれグラスを掲げて打ち合わせる。

 無論私達は未成年だからウーロン茶だけど。


 応援団での女性陣、言ってなかったけれど私と佳奈美、美和、そして姉さんと瀬尾野先輩、そしておばさまの6人だけだ。現地では女子部も居たのでそうでもなかったけれど、年上の男性ばかりの場に同席しているだけで少し緊張してしまう。

 私達一年グループは、姉さん達とはちょっと席が離れてしまっている。

 そんな中、姉さんも瀬尾野先輩も堂々としたもので、しゃんと背筋を伸ばして何でもないように他の方と話している。用意されていた浴衣は柄が女の子っぽいものではなかったけれど、姉さんや瀬尾野先輩が着てみせると似合って見えるから不思議だ。


 そうして始まった夕食は静かに進むかと思いきや、いきなりの登場者を迎えた。

 いきなりと言っても、私達は姉さん経由で誰が来るのか知っている。


 そう思っていたのだけれど、いざお座敷の襖が開くと、私達は驚きに目を見開いた。


「皆さんがお酒でグデングデンに潰れてしまう前に、今回我々OB会をここまで連れてきてくれる事となった功労者を労いたくご紹介します」


 場内からドッと笑い声が上がる中、先ほどの会長さんがマイク片手に「拍手で迎えてやってください」とお座敷入り口を指し示す。

 そこには剣道部の顧問の先生、金剛寺主将、それに勇一郎が学生服姿で立っていた。


「え、なんで生方まで?」

「早苗さん、知ってました?」

「私もこんなの聞いてないよ」


 OB会の方々にご挨拶するため、当日の晩の宿に先生と金剛寺先輩が来られることは姉さんから聞いていた。でも、それに勇一郎が同行するとまでは聞いていなかった。

 姉さんの方を見てみれば、姉さんも姉さんで驚いた表情を浮かべていた。

 そんな私達の驚きを他所に、3人はお座敷中央まで進んでくる。


「え~まずこちらが、冬桜男子剣道部顧問の日向浦先生。そして、今年の剣道部主将を務めている3年生の金剛寺君。最後に本大会最初の試合で、流れを作るのに大きく貢献してくれた1年生の生方君です」


 紹介される毎に皆から拍手が上がる。

 顧問の先生はOB会の先輩方を前に恐縮しているようだったけれど、金剛寺先輩も勇一郎も堂々と前を見つめ、直立不動の姿勢をとっていた。


「ご紹介にあずかりました日向浦と申します。この度は我が剣道部応援に駆けつけてくださり、誠にありがとうございます。この場に出れなかった部員共々……」


 マイクを握らされた顧問の先生が額にうっすら汗を浮かべながら、OB会への謝辞を述べている。

 続けて金剛寺先輩、そして勇一郎も予め用意されたような謝辞を述べた後、OB会の皆さんの席に一言挨拶をして回っていた。


「な、なんかドラマで見る会社の忘年会とか社員旅行とか、そんな感じだよね」

「え、ええ。なんというかここに居るのが場違いな気がしてきました」

「私も同感。でも将来こういう場に私達も出る事もあると思うから、下見が出来たと思えばラッキーだよ」


 目の前で繰り広げられるプチ社員旅行のような雰囲気が繰り広げられる中、暫くそれを傍観していると、ようやくOB会の輪から抜け出せたのか勇一郎がこちらにやってきた。


「はぁ……こんばんは、3人とも。今日はありがとう」


 こちらにやってきた勇一郎は開口一番座り込んで溜息が出たものの、ちゃんと正座して挨拶してきた。


「お疲れ、生方!」

「お疲れ様です、生方君」

「お疲れ、勇一郎」


 私達と話したことで緊張が解れたのか、表情から力が抜けて何時もの屈託の無い笑顔を浮かべる、何時もの勇一郎に戻った。


「一体どうしたの、態々挨拶に来るなんて」


 周りに聞こえないように少し小声で尋ねる。


「本当は副部長が来る筈だったんだけどさ。残ったメンバーとかの指導もあるから行ってこいって。まぁ一年で出場させてもらってるだけでも有難いんだから、こういう役回りを受けるのも、俺の仕事かなってさ」

「体よく押し付けられたな、生方」


 同じ様に話を聞いていた佳奈美が、ちょっと意地悪く笑いながら勇一郎をひじで突く。多分内心でもそう思っているのだろう勇一郎は、苦笑を浮かべて言葉を濁していた。


「佳奈美さんってば。駄目ですよ、そんな言い方しちゃ」

「ごめんごめん。でもまぁ良かったじゃん。コッチのご飯は合宿所のよか美味しいぞ」

「あ~、実はもう向こうで食べてきたんだよ」

「なんだ、残念」


 楽しそうに佳奈美や美和と話しをしている勇一郎。

 もしかしたらと思ったけれど、試合中にみせたあの表情は今は本当になりを潜めているようで、砕けた様子でお喋りを続けている。

 まだあれを引き摺っているならと、私も少し緊張してしまっていたけれど、どうやらそれは杞憂に終わりそうだ。


 そう思っていた。


「だけどほんと、生方の今日の試合、凄かったよなー!」

「ええ! 私始めて剣道の試合を見せていただいたんですが、すごく感動しました!」


 2人が試合の感想を口にした瞬間、一瞬勇一郎の顔が強張った。

 でもそれはほんの一瞬。

 すぐさま取り繕うよう砕けた表情を浮かべなおした。

 お昼に感じた違和感を覚えていなければ、多分私は見逃していた。


「試合は相手の読み合いだから。今日は読みが上手く当たってくれたんだよ」

「そんな謙遜しなくてもいいのに」

「そうですよ。本当に凄いって思ったんですから。ね、早苗さん」


 やっぱり勇一郎は、何か思い詰めている。

 そう思ったら、体が自然と動いていた。


「ちょ、早苗?」

「いいから、ちょっとコッチ来て。ごめん、佳奈美、美和。直ぐ戻るから」


 そう言うや無理やり勇一郎を立たせると、腕を掴んで廊下に連れ出し、部屋から離れた。


「どうしたんだよ、早苗」


 訝しげにこちらを見る勇一郎。

 表情こそ何時ものものだけれど、なんというか遠ざけたがっているように感じた。


「一体何があったの?」


 連れ出したはいいけれど、どう聞いたら良いのか判らなくて、結局直球に尋ねてしまった。

 案の定、そんな直球の問いに答えてくれる訳は無く、勇一郎は視線を泳がせていた。


「いきなり連れ出されてそんなこと言われても……なぁ」

「またそうやって隠す。前も言ったでしょ、そうやって隠しても無駄」


 そう言ってじっと勇一郎の目を見据える。

 だけれど前と同じ様に、勇一郎は答えない。

 だったら私から斬り込むしかない。


「この間ずっと庭で考え込んでた。今日の試合中、その時と同じ様な顔してた」

「……」

「私じゃ頼りないかもしれないけれど、話を聞くくらいは出来るよ?」

「……」

「1人で悩むのは辛いよ。でも人に言えば少しでも楽になる事だってあるよ?」

「……」


 私の言葉に目線だけは泳がすのを止め、漸く私の方を向いてくれた。

 けれど、私の言葉に沈黙だけしか返ってこない。

 ただ、痛みか何かを我慢しているかのような表情で、じっと私を見つめている。


「……なんだか何時もの勇一郎じゃないよ」


 投げかける言葉に無言しか返してくれない勇一郎に、それが判らないという悔しさが募る。

 私がまだ受け取れるだけの度量を持ち合わせていないと思われているのか、それとも他の何かが言わせないのか。

 少し離れた座敷から賑やかな声が聞こえてくる中、ここだけがそれと無縁のように痛いほどの静けさに包まれる。

 5分か10分か。

 どれだけの時間見詰め合っただろうか、漸く勇一郎が喋ってくれた。


 けれどその言葉は、私が期待した言葉ではなかった。


「……すまねぇ、早苗。今は言えない」 


 そう言って、少し乱暴に私の頭を撫でてくる。

 その心地は言葉にはしづらいけれど、予想通り何時もと違っていた。

 でも、言葉を引き出すことは出来た。


「今は、って事は時間が空けば言ってくれるの?」

「……ああ」


 今は言えない。でも時間が経てば言ってくれる。

 ここまで言葉を引き出せたなら十分だろう。

 いま内心を打ち明けてくれない事は臍を噛む思いだけれど、勇一郎の表情がとても辛そうで、これ以上は時間を置くしかないと割り切ることにした。

 

「わかった。今はこれ以上聞かない」

「すまん」


 何かに耐えるように目を強く瞑りながら、頭を下げる勇一郎に、慌てて面を上げてもらう。


「謝らなくていいってば。私が無理に聞きだそうとしたんだから、私の方が誤らないといけないくらいだよ」


 後ろ髪を引かれはするけれど、無理強いはできない。

 それに私の我侭だけれど、優しい勇一郎だからこそ、こんな顔を何時までも浮かべていて欲しくはない。

 でも、痛々しい表情を浮かべるという事が、もしかしたら本当に大切な部分を隠して私に話すかもしれないと思ってしまった。

 そう思ったら、部屋へ戻ろうした足を止めていた。


 改めて向き直り、勇一郎の手を確り掴んで、まるで乞い願うように未だ痛みを浮かべた瞳を見つめた。


「ちゃんと本当の事、教えてね」

「ああ……近い内にちゃんと教えるよ」


 そう答えてくれた勇一郎の顔は、やっぱりどこか辛そうだった。









「見送りにきてもらって悪いな」

「見送るだけなのだから、気にしないで欲しい」


 ゲストとして登場した剣道部の面々は合宿所へ戻らないといけないため、宴の続く中で中座することとなった。

 で、私は勇を見送ろうと、挨拶に来られた顧問の先生へのご挨拶も兼ねて席を立った彼らに付き添って旅館入り口までやってきた。


 ゲストとして勇が来る事にはなっていなかったので驚きはしたが、さすがに幼少時からさち枝お祖母ちゃんに共に礼儀を叩き込まれただけあって、宴の場での対応もしっかりとした物だった。

 だが何かあったのか途中でさなちゃんに連れ出されていた。戻ってきた2人の表情が何時もに比べて硬いものだった為、何を話していたのか気になった。

 これがさなちゃんだけだったなら「さなちゃんに何したんだ、あ゛ぁん?」と勇を問い詰めていた所だが、2人してとなると私が割って入っても拗らせるだけだ。それに私と2、3言葉を交わした中ではいつも通りの勇だったので、2人の間の問題だろうと敢えて触れない事にした。


「勇、今日は活躍したな。明後日を楽しみにしている」

「ありがとうございます」


 入り口まで来て靴を履き替え終えたところで、改めて声をかける。

 今までなら賛辞を送れば体で喜びを表現していた勇だったが、落ち着きを身に付けた今では、ほらこの通り。敬礼の角度で頭を下げ、顔も引き締まってイケメン度増し増し状態である。


 ん? 引き締まって……?


「2年の錦川が負けた時は少々肝を冷やしかけたが、生方が絞め直してくれたお陰だから、もうちょっと素直に喜んでもいいぞ?」


 一瞬、ふと何かが気になったが、私の賛辞に乗じるように成次君が勇の肩をバンバン叩きながら褒めに入った為、言葉を掛けるタイミングを逸してしまった。


「いえ、主将。錦川先輩だって十分勝てる相手でしたよ。今日のミーティングで明後日の対策を練れば、きっと大丈夫です」

「なかなか言うな、生方。では戻って早速ミーティングだな。先ずは相手校の今日の試合を見てからだな」

「そっちの手配は副部長が済ませておくと言ってましたよ」

「頼れる奴が副部長で大助かりだ」

「俺は主将が機械の扱いが、てんで駄目だからと聞きましたけれど」

「…アイツめ。俺だって録画ボタンと再生ボタンの違い位はわかるぞ」


 目の前で勇が成次君と会話している。そういえばこの2人が話しているところを見るなんて無かったが、こうして見ると何だか兄弟みたいに見えるな。

 そうして微笑ましく見えるやり取りを見ているうちに、先ほど気になりかけた事は頭の中から消えてしまっていた。

 そうこうしている内に顧問の先生から戻るぞとの声が掛かり、改めて2人と向き直った。


「2人ともお疲れ様。明日も炎暑だというから、合宿所に戻っても体調には十分に気をつけるんだぞ」

「ああ。じゃあ、また明後日だな。今回の礼はまた改めて」

「それはもういいと言ったろうに」

「千鶴子さんも。今日はお疲れ様でした」

「ああ、勇もお疲れ様。明後日、また会場で会おう」


 そう言いながら、2人が乗り込んだタクシーが見えなくなるまで見送ったところで、ふと安堵の溜息が漏れた。


 もし変に気負った所をみせたら何か言おうかと思っていたが、勇も成次君も、どちらも緊張した雰囲気はまるで感じられなかった。思わず体調面にまで口を出してしまったが、これは流石に老婆心が過ぎたようで、思わず我が事ながら苦笑してしまった。

 そして私が気にするのはおこがましいだろうが、あの様子であれば、明後日の試合も十二分に期待できるだろうし、その結果がどうであっても後悔は残らなさそうだ。


 この大会に海水浴と、今年の夏は今までに無い程に熱くなる。


 そして、きっとこの後、この夏を思い出して『楽しかった』と思える、そんな予感がする。


 夏の夜の熱い風が頬を撫でていくのを心地よく感じながら、そんな思いを胸に未だ酣なお座敷へと足を向けたのだった。



 ちなみに夜は女子会だ! 浴衣だけどパジャマパーティーだ! ひゃっほう! と思っていたら、さなちゃん達が夏休みの課題を持ってきて『勉強を見て欲しい』と言われた為、プチ勉強会となり、結局そのまま由梨絵とお風呂に行って就寝してしまった。


 いや、良い事だけどね、勉強を忘れないって。


 だが敢えて言いたい。


 GOD DAMN!!

遅々として進みません。ええ、泣きそうです。

早く海シーン書きたいのに、前振りで1万5千文字近いって…

そして多分次は最終日前夜と試合内容で終わりそうな予感がヒシヒシです。

元々は試合結果なんて一行だけのつもりだったんですけどね……

ともかく次も頑張ります!


――――――――――――


閑話

本当はコッチをメインで書きたかったんじゃよ(つω;)


「いいお湯ですね~」

「家のお風呂と違ってさ、全身伸ばせるからいいよね。はぁ~極楽極楽~」

「佳奈美、なんだかおじさんっぽい」

「早苗ひどい~」

「なんだか一足先に修学旅行に来たみたいで楽しいですね」

「うんうん! この後のご飯も楽しみだな~」

「思いっきり満喫してるね」

「折角でかけたんだから、こうして楽しまないと損だよ、損」

「そうですよ。羽目を外しすぎてはいけませんけど、楽しみませんと」

「ま、確かにね~。露天とかじゃないけれど、広いお風呂は確かに気持ちいいし」

「折角で思い出したんだけど、東条先輩と瀬尾野先輩誘わなくて良かったの?」

「確かOB会の方と少し打ち合わせが有るとか」

「まぁ誘っても良かったんだけど……佳奈美、心理的ダメージを考慮した方がいいよ」

「え、そんなに凄いの!?」

「姉さんだけならまだしも、瀬尾野先輩も一緒だとダメージ2倍だよ?」

「あああ~。水着だけでアレだもんねぇ……でも、それはそれで見てみたい」

「東条先輩は身長もあって、その上あの体形ですから……私は直視したら立ち直れないかもです」

「美和はまだいいじゃない。でも、上を見てても仕方ないもんね」

「くそ~。高校3年になればあたしだって、こうバーンと!」

「夢も程ほどにね、佳奈美」

「ちょ、美和~。佳奈美がさっきからヒドイよ~」

「日常的にアレを見てるとそうなるの。私だって3年後を期待したいけれど、今のところその兆候さえないんだもん……はぁ」

「まぁまぁ、早苗さんも佳奈美さんもその辺で。でも、お2人とも受験も控えているのに、こうして応援団のお手伝いをされたり大変ですよね」

「ん~、まぁ姉さんだし大丈夫だよ。瀬尾野先輩と毎回考査で1位、2位争ってる位なんだから。それに生徒会の任期だって10月までだし」

「そう考えるともう8月ですよね。早いですね、時間が経つのって」

「ほんとだね。……あんまり進展してないけど」

「まだまだ8月だよ! これからこれから!」

「ですです! これからですよ!」

「うん、……そうだね!」

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