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第十八話 「私の価値」

 夕飯の買い物をするからと、2人の元から私は逃げ出した。考え到った事実からも。舞台の袖に居た筈なのに、いつの間にか私は舞台中央でスポットライトを浴びせられていた気分だった。


 ……いや、それは違う。


 あの『2人で競争する』約束をしたときから、私は自分で中央に立っていたのだ。自分の意思で。ズカズカと2人の間に割って入ったのだ。


 それがどういう結果を生むか理解せず、考えることすらせず、はなからそうだと決め付けていた結果が今の様だ。


 一体何を間違ったのか。何も間違っていないのか。結果論で如何こう考えても仕方が無いのは分かっている。


 でも、どうしても思ってしまう。


 一体何時、何を、どう間違えて、こうなってしまったのだろうか、と。


 さなちゃんを全力で応援し、規範となるべきと心に決め今までやって来たのに、私がその最大の障害になっているなんて。


 私が姉として至らな過ぎたのか、それとも、さなちゃんと競う事が間違いだったのか。それとも他の何かか。


 多分全部そうなのだろう。


 だけど、何から何まで間違っていて、それが正解だと思える一方で、それは私の思い込みで全くの勘違いをしているとも思ってしまう。そんな風に幾つもの考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えと、同じ場所をぐるぐると回っていた。


 気が付くのではなかった。考え到るべきではなかった。只の私の思い込みだと勘違いできれば良かったのに、何故かハッキリと“そうだ”と思ってしまった。そしてそれに疑いの余地が無いことも。

 どうしたらこの考えを否定できるだろう。いっその事勘違いで通してみるのはどうだろうか。そうすれば上手くい……ける訳はない。余りにも人を馬鹿にした考えを浮かべた自身を殴りつけたくなる。


 本当は、解りきってはいるんだ。


 何をどうしたって八方丸く収まる事など無く、今の私はただ、見た目綺麗な言い訳を探しているだけだ。どう考えようとも私の立場は変わらない。私はただの無粋な乱入者であり、速やかに退場するべきだ。


 でも、それはあまりにも2人に対して無責任。と言うより、私が居なくなっても根本的解決にならない。だけど居座り続けるのだって誰の為にもなら無い。

 どちらに進もうとも、結果的にさなちゃんと勇に多大な迷惑をかけることになる。今まで迷惑をかけた事はあったが、今回の規模は今までとは桁が違いすぎる。それが、これから私がしなければならないことに対して躊躇いを生んでいた。


 今、私がしなければいけないのは、改めて迷惑をかける事を承知で、私の身勝手で2人を弄ぶ事になり、迷惑をかけて御免なさいと謝ること。

 勇には好意は嬉しいが受け入れる事はできないと断ること。

 2人の心を弄んだのに、余りに虫が良すぎる話だ。

 競おうと、恋しようと、それが2人の為だと、口先で見栄えのいい事ばかり並び立てた挙句こんな事をする身勝手さ。

 きっと私は嫌われる。

 さなちゃん、勇、由梨絵、他様々な知己から誹りを受ける。そう思うだけで自分が砕け散りそうだ。

 それにそれを打ち明けて、そのまま平然と2人と一緒に居られるわけも無い。


 結局私は『前の自分のままだった』事を改めて自覚した。


 千鶴子として生きて、何かを成した気でいたが、何もかも出来ていなかった。

 生まれ変わったつもりで色々と頑張ってきた事は、前の自分に蓋をするように必死に見てくれを作り上げただけで、それは“さなちゃんにとって理想の姉である千鶴子”になる為では無く、元の自分から眼を背ける為だけだったのだ。


 何一つ、私は変ってなど居なかった。


 ネガティブな思考も、その場を取り繕う応対も、1人だった事も、何もかも自分は自分だった。


 だが、今更自覚しても、もう遅い。

 とっくに賽は“私自ら”によって投げられている。けじめは着けなければいけない。


 そうしてグダグダと考えつつも何時の間にか買い物を済ませ、荷物を手にした自分は店の入り口に立っていた。

 こういう所だけ体に染み付いていることが、如何に私が外面だけに固執していただけなのだと証明しているようで、思わず自嘲の声が漏れた。



「……私は実に馬鹿だな」



 そんな自分の小さく呟いた筈の言葉は、予想もしなかった人物によって聞き咎められた。


「東条、こんな所で何を妙なことを口走っている?」


 突然声をかけられた事に多少驚きはしたが、今の自分にとっては何もかもが億劫だった。ただ反射的にノロノロと顔を上げてみれば、見下ろすように金剛寺君が目の前に立っていた。


「……なんだ、金剛寺君か」

「なんだ、とはまた随分なご挨拶じゃないか」


 言葉は自分のぶっきらぼうな応対を非難しているが、その顔にはそんなものを気にした風は一切見て取れず、ただ少しはにかむような笑みを浮かべていた。でも、その笑みは今の自分に向けられて良い物ではないと思え、慌てて顔を逸らしてしまった。


「……ん? どうした、東…条?」


 その行動が不審に思えたのか、少し覗き込むようにこちらを窺ってきた彼だったが、その行動を訝る言葉は途中で不意に途切れた。そして、ほんの少しの間を置いて、突然彼は買い物袋を持つ自分の手を掴むと強引にこの場から連れ出そうとした。

 流石にその行動には驚き抵抗の声を上げようとしたが、不意をつかれたその行動に気を取られたのと、大きな声を出すことすら億劫に感じていたから、結局自分はなすがまま彼に手を引かれ、馴染みのスーパーを後にした。


 握られた手はゴツゴツとしていて、そして自分の心の温度と差が有るためか、妙に熱かった。







 気が付けば商店街から少し離れた路地に連れて来られていた。


「……一体何のつもりだ、金剛寺君」


 流石に一方的に有無を言わさず連れ出され、人通りのある商店街を縫うように結構荒っぽく歩かされた事で、少しだけ頭の中がネガティブ思考一色の状態から抜け出していた。それに今日履いていたウェッジサンダルは荒っぽく歩くようには出来ていないものだから、アンクルストラップが結構食い込んで少々痛みを訴えていた事で、意識が別の方向に向いたのだろう。


 そうして少しばかり落ち着いてみれば、有無を言わせずこちらの様子を振り返る事無く連れ回すような事をした金剛寺君に、理不尽な苛立ちが今更ながらに心の中に沸いてきた。

 しかし、自分のそんな苛立ちを載せた言葉など意に介する素振りすら見せず、彼はおもむろにガサゴソと自分の荷物を漁りはじめ、何かを手にとって自分へと差し出してきた。


「さっき商店街で配ってた奴だから綺麗だぞ。使え」


 取り出されたのはポケットティッシュだった。


「……だから、何のつもりだと言っている」


 彼の行動の意図が全く理解できず、彼の顔と差し出された物を交互に見やる。ってかホントに何だ?

 そうして私が訳も分からず視線を行ったり来たりさせていると、彼は先ほどと同じ様に強引に手を取って買い物袋を奪うと、変わりにそれを掴ませくるりと背を向けた。

 一体何がしたいんだかさっぱりな行動に、流石に少々大きな声がでた。


「いい加減にしてくれ。行き成りこんな所へつれて来られた挙句、こんなものを渡されてもサッパリだ!」


 少々苛立ちを含んだ自分の声に、何故か彼は大きく溜息をつくと振り返る事無く、そして簡潔に告げた。


「なんで気が付かないのか分からんが、東条……お前、泣いてるぞ」

「は?」


 泣いてる? 私が? 何の冗談か?

 自分に全くそんな意識は無く、だけど頬に手を当ててみれば、掌に伝わってきたのは暖かい液体の感覚だった。しかも、止め処なく今も尚溢れていた。よく見てみれば、服には雫が落ちて濡れた跡がそこかしこにあって、それが本当であることを証明していた。

 そこで初めて自分が泣いている事実に気が付いた。慌てて「何で泣いてるんだ?」と泣き止もうと思っても、流れる涙は穴の開いた水道管のように止まってはくれなかった。


「あれ……意味が判らない……何故泣いているんだ……」


 自分の事なのに本当に訳が分からない。何で自分は泣いているんだろう。だけれど、泣いていると自覚した事で、堰を切ったかのように嗚咽まで漏れ始めてしまった。

 こんな様、誰にも見せる訳にはいかないのに。

 『泣く』という事が、まだ私だと思っていた頃に己に戒めていた“規範となる姉になる”という事さえも破ってしまったと思え、より一層の情けなさが自分の心を殴打し涙を溢れさせた。


「なんで止まらないんだ……そんな…つもりは…」


 自分の意思とは裏腹に流れ続ける涙が止まらない。

 流れる涙を拭いながら立ち尽くしていると、流石にそれが気になったのか金剛寺君が普段とは変わって静かに声をかけてくれた。


「あー……、無理に泣き止もうとは思わない事だ。泣ける時は思いっきり泣いた方がいい。それにここなら俺が前に立ってるから人通りから目は着かん」


 気を遣ってくれているのか、一向にこちらを振り向く事無く声をかけた彼は、自分を周囲から隠すようにしてくれていた。

 そんな彼の背中を見ながら、やっぱりどうしたらいいか分からなくて、ただ無言で声を漏らさぬよう泣き続けた。







「……もう、大丈夫だ」

「そうか」


 どれだけ時間が経ったのかは判らないけれど、貰ったティッシュは遠慮なく使わせてもらい、結局全部使い切ってしまった頃、ようやく涙は止まってくれた。

 ただ泣きながら、どうして泣いているのかを考え続け、自分でその答えを言っていた事に気が付いた。


 泣いた理由。


 それは『前の自分のままだった』という事。


 自分自身が信じてきた『全てはさなちゃんの為』という一本芯は、誰の為でもなく只自分の為であり、それが嘘だったと理解してしまい、ぽっきりと折れてしまった。折れたというより、化けの皮が剥がれたと言うべきだろう。

 さっき自覚した通り、外見だけの千鶴子というモノは、中を覗いて見れば利己的な昔のままの自分でしかなかったのだ。


 勇が好きになったのは『千鶴子』であり、自分ではない。

 つまりは誰も自分を認識していない。

 出来ない。

 出来る訳が無い。

 それは自分自身しか知りえない事であるのだから。


 自分が死んで、居もしない自分を『千鶴子』という外見を作り上げた事で目を逸らし、それが周りの為だと偽っていたのだ。なんてあさましいのだろうか。


 そう。


 自分は“自分”が本当に死んで、もう何処にも居ないと言う事実に、今更ながらに目を向けたのだ。


 そして、自分という存在は今ここにおいては不要で、必要なのは千鶴子なのだという事に。その千鶴子だって、今ではさなちゃんにとって最大の障害でしかない。


 私は、自分は『不要』なのだ。


「…体調が優れないのか分からんが、一体どうしたんだ? 東条らしくも無い」


 自分が大丈夫と言った事で、彼もどうやら話しかけても問題ないと判断したのだろう。少しだけ躊躇いの間を置いて気遣い気味に問いかけてきた。だけどそんな気遣いも、今の自分には惨めに感じるだけだった。


「私らしくない?」


 思わず言葉尻が上がり、睨むように彼に問いかける。


「ああ。何時もの東条は自信に満ちていて、毅然としていた。そんな自虐的な顔をするような事はしなかった」

「それはそう見えていただけだ。私の事は放っといてくれ」


 よくよく考えれば、彼も自分の行動による被害者の1人だ。彼が見てきたのは見てくればかり整えた千鶴子なのだから、私らしくないと思っても当たり前だろう。申し訳なくは思うが、そこまで親しい訳でもないのでその程度だ。だから千鶴子を想っての彼の言葉は、今の自分を否定する言葉にしか聞こえなかった。


 ああ、やはり自分は不要なのだ、と。


 だけど、彼は私の拒絶を否定した。


「放っとける訳無いだろう。そんな酷い顔しているのに」

「顔とかどうでもいいだろう。私はそんな風に心配される資格なんて無い。だから、もう放っといてくれ」


 そう言い放ち彼の顔を見ぬよう脇を抜けようとしたけれど、彼によって止められた。


「待て、東条。今のお前は相当変だぞ。一体何がどうした? そもそも資格が無いとか、なんだそれは」


 自分の腕を取り強引に彼のほうへ向き直らされる。顔を上げれば真剣な目が自分を覗き込んでいた。その目の前にあるのは真剣な気遣いだけだ。

 何故、彼はこんなに私に固執するんだ。

 ああ、そういえば彼は千鶴子に対して思慕の情を抱いていたのだ。

 であれば、それは今の自分へと向けられるべき物ではない。だから、その視線から逃れるように顔を背けると、改めて拒絶の言葉を口にした。


「私は君が好いた千鶴子なんかじゃない。毅然としていたとか、そんなのは只の演技だ。私はもっと身勝手で、見てくれだけで、中身の伴わない只の馬鹿だ。大馬鹿者なんだ。だから私は好意を向けられるような人間ではないし、そんな他人から好かれる資格など無い」


 言葉にすることで、又しても視界が滲む。握り締めていた手に爪が食い込むが、それも只の自己満足行為に思えて情けなさに拍車が掛かった。

 そして一度口にしてしまえば、自分に対する罵詈雑言が湯水のように溢れ出た。


「私が行っている事は何一つ誰の為でもなく、自分の為、独善的で卑しい行為なんだ。それが只単に回りには見た目よく見えていただけ。いや、そう見せていたんだ。君はそれに騙された。結果的には私が騙したようなものだ」


 言葉を重ねれば重ねるほどに涙がどんどん溢れてくる。


「今日だって私は、私を想ってくれている人を傷つけた。いや、もっと前から傷つけ続けていた。それを私は無意識、いや見て見ぬ振りをしていた。人の心を玩んで、私はそれを見て笑っていた。それは相手の為だと想って、そうなってよかったと浮かべた笑みではなく、自分の思い通りになったから出たものだ。嫌らしいだろう、私は」

「……何もそんなに自分を悪し様にいう事は無いだろう」

「全部本当なのだから仕方ない。だから放っといてくれ」


 自分の言葉に呆気に取られたか、それとも言葉に気圧されたのか、少し躊躇いがちではあるけれど、自分を慮る言葉をかけてくれる。

 だけど自分は間髪を居れずそれを否定する。

 もう、何なんだろうな。呆れて笑ってしまいそうだった。

 もちろん彼にではなく、自分に対して。こうして心配してくれている人に対してすら、取り付く島すら見せない。本当に自分は身勝手で、どうしようもなく救いようの無い人間だ。


 だからポロリと、酷く、何もかも全てを、さなちゃんを、勇を、由梨絵を、さち枝お祖母ちゃんを裏切る言葉が出た。



「本当に救いようがない。私など無価値だ。死んでしまえばいいんだ」



 周りの喧騒が聞こえる中で、ここだけがそれと無縁な静けさに包まれる。


「東条」

「……なんだ」


 先ほどまで柔らかめな調子だった彼の声が、腹に響くような重い物に変わった。 


「謝らないからな」


 その一言と共に、彼のゴツゴツとした手が拳骨となって脳天に落ちた。

 仮にも外見は女だというのに、目がチカチカするくらいに手加減無しの重たい拳骨だった。


「お前は自分を何だと思ってるんだ! 言っていい事と悪い事ってのがあるが、今の言葉は最悪だ! 死ぬとか軽々しく言っていい言葉じゃないぞ! それこそ独善だ!」


 怒気を孕んだ一喝が容赦なく叩きつけられ、頭にジンジンと響く痛みと、彼の大きな声に体が固まる。


「……だって、事実なんだから仕方ないじゃないか」


 彼の声に、思わず拗ねた様に反論の声が漏れた。だけれど、彼はそれを一切気に留める事無く、まるで親が子を叱り付ける様に言葉を続けた。


「事情を知らないが、何かしら失敗したんだろう。それで自分を責めるのは別に良い。それは独善とは言わないし、自分が悪かったと自覚しているからだ。だが、今の言葉は自分を責めるのではなく、ただの逃げの言葉だ!」


 何時の間にか両肩に手を置かれ、真正面から向き合う様にさせられていた。

 少しだけ腰を落として自分の顔を真正面から見据えている彼の瞳は、勇が試合の時に見せる真剣な眼差しと同じように、揺らぐ事無い真っ直ぐなものだった。


「自分が悪いとか、あの時こうしておけばとかなんて、それは只の結果論だ! 自分が悪いだの何だのグチグチ言う前に、悪い事をしたと自覚したならまず謝れ! それくらい幼稚園児だってするぞ!」


 流石に今の言葉にはカチンときてしまった。ぐうの音も出ないほど当たり前の事を言われたのだ。言われなくても謝らないといけない事位分かっているし、こうしていればなんてさっき山ほど考えた。

 でも結論は出なかった。

 そんなに簡単に答えがでるなら自分だってこんな苦労はしない。それに幼稚園児って、精神的には私の方がはるかに年上なのだ。そもそもなんで彼にこんな事を言ってしまっているのかも分からないし、そんな事を彼から言われる筋合いだって無い。

 だけど頭の隅で彼は関係ないと思っていても、口から出る言葉を止める事は出来なかった。



「私だって好き好んでこうしてる訳じゃない!」



 彼の声量に負けない位の大声で挑むように声を張り上げる。


「私だって頑張ってきたつもりだったんだ! それが周りの為だって! 周りの為になるって! でも、それが嘘だったなんて気が付いたら、こうなるしかないじゃないか! 今更謝るなんて、そんな虫のいい事できる訳ないじゃないか! 謝らないといけないなんて、そんなのとっくに分かってる! でもそんな事をして、今更どんな顔をして2人とこれから過ごせばいいんだ!?」

「謝ってもない内からそんな事を考えてどうする! 先ずはそこからだろう! それとも何か? お前を想ってくれた人ってのは、お前がした過ちをネチネチと根に持つ奴なのか?」


 彼の言葉に更に頭に血が昇る。

 自分の事はともかく、さなちゃん、勇はそんな子ではない。

 それだけは断固否定しなくてはいけない事だ!


「そんな訳がある筈無い! 絶対だ! 2人はそんな陰湿な人間じゃない!! その言葉、撤回しろ!! 私のさなちゃんは世界一いい子だ! 勇だって決して根に持つような性根はしていない!」


 他に言い様があるのに上手く言葉に出来ず、2人を説明するには既存の言葉では足りない位なのに、ただ口をつく言葉をそのまま声にすることしか出来なかった。

 そんな私のただ喚き散らすだけの言葉を、金剛寺君は真っ直ぐに見据えて受け止めていた。そしてさっきとは打って変わって、静かに言い切った。


「だったら、お前がするべきことはたった一つ。素直に謝れよ。泣くほど自分を悔いているお前と、お前がそこまで言う2人なら、きっと受け入れてくれるさ。信じろ。2人を。きっと悪いようにはならんよ」

「……そんな安易な事になる訳無いじゃないか」


 そんなのは自分にとって都合のいい解釈、そうなってくれたらという願望に過ぎない。

 でも、確かにさなちゃん、勇は、人を悪し様に悪く言うような事は決してしない。

 一瞬だけ真っ暗な心の中に、一筋の光が差す。だけれど、それは余りにも弱々しく、直ぐに暗闇の中に埋もれてしまった。


(どうしてこんな事になったんだろう……)


 何もかもが黒く霞んで何1つまともに見えない。

 金剛寺君の言葉とさなちゃん、勇の顔がごちゃごちゃになって、自分が分からなくなる。

 自分は1つ、たった1つ願っていただけなのに。


「……私はただ、さなちゃんさえ幸せになってくれたら、それで良かったんだ。私のたった1人の大切な家族。それだけが、それだけが私の幸せだった……のに…」


 そう呟いて力無く俯けば、雨垂れのように涙が地面に染みを広げていく。今の自分の心の中のように、アスファルトに黒い染みが広がっていく。それをぼぅっと眺めながら俯いていると、私の頭を暖かなものが包み込んだ。


 それは楓の葉の様に大きな彼の手だった。



「東条、お前意外と馬鹿だなぁ」



 顔を上げると、先ほどとは打って変わって何故か穏やかな表情をした彼が私を見つめていた。


「そうだ。私は馬鹿だ」

「そういう意味じゃない。そりゃお前は、東条からしてみればそれでいいんだろうが、それじゃ無理だ。誰も幸せにはならんよ」

「なんでそんな事が言える」


 私の頭に手を置いたまま、彼は言葉を続ける。


「妹さんはよく剣道場に来るからそこそこ話した事はあるが、生方と同じ位に東条の話が出てきたよ。まぁ、その半分以上は俺から振ったんだが。その会話の中に姉である君を尊敬している風な感じがそこかしこに見て取れた。そんな妹さんが自分が幸せで、姉の君が幸せでない事がどうでもいいなんて、思う訳ないだろ」

「それは……」


 確かにその通りで言葉に詰まる。さなちゃんは決して人の不幸を願うような子ではない。そんな当たり前の重々承知していた筈の事に、何故か改めて驚いてしまった。


「それに誰が言い始めたかは知らんが『辛い』ことでも、もう一人いれば『幸せ』という字になるそうだ。上手い事言う物だな。だから片方だけが幸せである事に、特にお前達姉妹には意味は無いと、俺は思うぞ」


 そうしてニコリと笑う彼の言葉は、何故か私の心を大きく貫いた

 1人では幸せにはなれない?

 確かに由梨絵も言っていた。他が幸せなら私も幸せ、なんて考えは腑抜けた事だと。自分はそれを確かに認めつつも、心の中ではさなちゃんが幸せであれば自分は幸せだと思っていた。

 でも、それでは幸せになれないと金剛寺君は言う。


 じゃあ自分の幸せとは何だ?

  

 千鶴子として生きることを決意したとき、自分はこの家族を、得られた幸せを大切にしなければいけないと考えていた。それは今でも変わっては居ないが、それが違うなら一体自分の幸せって何なんだ?


「私の幸せって……何だ?」


 独りごちた言葉は僅かではあるけれど自分の心に波紋を生んだ。そして、その自分の言葉を聞いてか、少し苦笑したような顔をして金剛寺君は答えてくれた。


「一般論で言えば人それぞれだから明確な答えは無いだろ。だから、これはまぁ俺の考えだが『家族を持つこと』、いや『新しい家族を作る事』ではないかと思っている。長い人生、1人では意味は無いし寂しいだろ。共に分かち合う人がいればこそ、だ。喜ぶ事も、悲しむ事も、全部独りで背負い込むのは荷が勝ちすぎる」


 彼の言葉を受けて、はたと今更ながらに気がついた。


 家族を大切にすると考えた事に、家族の一員である自分、つまり『千鶴子』を勘定に入れていなかった事に。


 そして事ここに至って、とても大切なことを思い出した。


 それは東条千鶴子の事。自分は3歳の時に、唐突に前世の記憶を思い出した。記憶自体は元からあって、何かのきっかけで3歳の時に思い出したのかもしれないが、それには1つ重要な事実がある。


 それは、元から居た『東条千鶴子』を、自分の記憶が塗りつぶしてしまったかもしれないと言うことだ。なぜなら気が付く前の千鶴子としての記憶が全く無いからだ。


 端的に言えば、自分は彼女の意識を殺して、体を乗っ取ったと言うことかもしれないという事だ。


 記憶が戻ったあとの事でゴタゴタしたと言うのはこの事だ。色んなモノが心を押し潰しそうになって、生きていると事に対する喜びなど一切感じること無く、ただ、ひたすらに自分を責めた。


 多分そうじゃない。そんな事は無い。

 でも、もしかしたら。いや、そうだ。そうに違いない。

 自分は1人の人間を殺したのかもしれないんだ、と。


 そのときの私は3歳の娘と言うことを差し引いても、見るに耐えないほど自暴自棄で周りに当たり散らしたのだ。熱で頭が回っていなかったというのも理由としてあるかもしれないが、それはただの言い訳だ。


 それでも『千鶴子』の家族は、ずっと優しくて、暖かかった。


 そんなに愛されていた『千鶴子』。それを塗りつぶしてしまったのは事実で、そんな千鶴子であることを否定するのは、本当に彼女の存在自体を殺してしまったことになる。


 それは絶対に駄目だ。


 だから、駄目な自分が出来る限りの中で『千鶴子』と言う人間を、恥ずかしくないようにしなくてはいけないと思ったのだ。

 そうして自分は彼女を取り巻くものを守ること、そして己を律しようと心に決めた。

 だからこそ、今改めて思う。


 彼女の幸せはなんだ?


 なんでそんな重要な事を考えていなかったんだ?


 周りが幸せであること、さなちゃんと勇が幸せになる事は自分にとって勿論だけど、『千鶴子』が幸せであることはどうなのか。

 もしさなちゃんと勇が結婚したとして『千鶴子』はどうなる?


 そうか。


 前の自分がずっと1人だったから、これが普通だと思っていたけど違うんだ。

 『千鶴子』には幸せになれる権利があるのだ。

 更に彼女になった自分は『千鶴子』も幸せにする義務があるんだ。千鶴子として生きるなら、勇とも一緒になる幸せの方向もあっただろう。だけど、そうでないなら他の誰かと一緒になる幸せの方向だってある筈だ。


 そうしてハッキリと自覚した。


 自覚したとは言っても、さっきから自分、いや私自身何度も言っていた。


 『自分』はもう居ないのだ。それを認めるのが怖かったのだ。


 そう。

 女になるという事は、前の自分と決別することも意味するのだ。忘れるという訳ではないが、私は千鶴子なのだから。

 そして千鶴子として生きてきたことは、紛れもなく事実で、確かに千鶴子はここに居るのだ。それを自分が否定してどうするというのだ。


 自分はもう居ない。今ここに居るのは千鶴子だ。

 

 私は『千鶴子』として生き、『千鶴子』として終える。


 でも、勇の気持ちをどう受け止めたらいいのだろうか。

 私は勇をどう思っているんだろうか。

 確かに勇はカッコイイし最近背丈も私を越えた。思い出せば色々とこちらに気を使ってくれていた事を思い出す。子供の頃は色んな馬鹿も一緒にやったし、そうして過ごしてきた時間は楽しかった。でも、それはさなちゃんと3人一緒だったからだ。


 頼りになるけれど、やんちゃな弟という印象だけしか今は思い浮かばない。


 でも、それは今は、だ。さなちゃんとの約束はまだ生きている。なら、私はもっと勇を見なければいけない。ただでさえ高校と中学で2年間の間があるのだ。もっと見続ければ何か変わるかもしれない。

 けれどそれは、さなちゃんが悲しむ事になるかもしれない。

 でも、あの晩2人で話て決めたのだ。


 だったら、私が取るべき行動は1つしかない。


 私が信じて貫いてきた事は、間違いはあったとしても、それが千鶴子であり、最後まで貫き通さなければいけない。選択肢なんてものは人に与えられるものではなく、私自身で作り出していく事を千鶴子として覚えたじゃないか。

 ならば、さなちゃんと約束した通り、1年で私自身を磨いて、そして全力でさなちゃんにぶつける。


 胸の内に熱く太い一本の芯が通った気がした。


 そしてその瞬間、心の靄が消え、回りの情景が戻ってきた。考え込み過ぎて、一切合財回りが見えてなかったようだ。

 目の前の金剛寺君を見てみれば、彼は相変わらず私の頭に手を載せたまま、こちらをじっと見つめている。多分私が何かしら考え込んでいる事を察して、黙っていてくれたのだろう。



「ありがとう」



 そんな彼を見て、さっきまで言い争うような事をしていたのに、するりと感謝の言葉がでた。そうして顔を上げると、私が声を発した事で安心したのか、ようやく頭の上に載せた手をどけてくれた。


「いつもの東条に戻ったな」


 爽やかな笑みを浮かべる彼の視線は暖かだった。

 ふと、今更になって殆ど無関係の金剛寺君に酷い醜態を晒した事に気がついてバツが悪くなったが、顔を逸らしたら負けな気がして真っ向からその目を見返した。


「あぁ、もう迷わん。私はただ怖がっていただけだった。今その事を再確認できた」


 その言葉を聞いた金剛寺君は何が面白いのか不意に笑い出した。


「なんで笑う!?」


 流石にいきなり笑われてはいい気はしない。問い詰め寄るように金剛寺君を睨み付ける。そんな私を見て参ったといわんばかりに諸手を挙げ、何故か酷く優し気な表情を浮かべて金剛寺君は軽く頭を下げた。


「いや、すまんすまん。悪い意味ではないんだ。泣いたり笑ったり怖がったりと、色んな東条を見れた事が嬉しくてな」

「はぁ!?」


 いきなり変な事を言われて、思わず顔に血が上がる。


「いやはや。鋼鉄の生徒会長と謳われた東条でも怖いものがあるんだな」

「……私だって人間だ。怖い物なんて幾らでもある」


 ムスッっとした声になるが、流石にそれは仕方ないだろう。人のいろんな面が見れて嬉しかったとか、私が怖かったなんて言ったら、からかう様にそれを話題にしてくるのだから。でも、なぜか心に嫌な感じは沸かず、どちらかと言えば熱を持ったようにくすぐったくて心地よかった。


「普段の東条からは全くそう思えんがな」

「一体私を何だと思っているんだ」

「まぁ、見た目の印象だけを言えば、至る所死角無しの完璧人間だな」


 なんだそりゃ。私はそんなチート野郎じゃないやい。ちょっと妹が大好きなだけの姉だ。私のそんな心の反論も声に出さなければ意味は無く、目の前の金剛寺君はニコニコとこちらを見続けていた。


「私はそんな大それた者でも何でもない。ただの大馬鹿者だ。私が私のやりたい事をやっていただけに過ぎない」

「そうだな。でも、一切妥協しないだろ。そこが凄いんじゃないか。もっとも、今回みたいに隙があってもいいとは思うがな」


 醜態を晒した事を指摘され、更に顔に血が昇る。


「こ、今回はちょっと混乱してただけだっ! というか、言うなよ。いいか、この事は誰にも絶対に言うなよ!」

「言わん、言わん! そんなもったいない」

「もったいない?」

「当たり前だろ。俺だけが知ってる東条だ。誰か他の人に言うなんて事できるか」

「っ~~~~!!」


 なんでこいつはそんな恥ずかしげな事を平気で言ってくるんだ!?

 聞いてるこっちが恥ずかしいじゃないか!!

 なんか終始主導権を握られて、弱みを握られたままではなんか癪だ。

 なにか気の利いた厭味の1つでも返してやりたいが、生憎と彼の事をそこまで知らないため、口をつぐんでしまうしかなかった。


 ああもぅ! くっそ! 借りを作ってしまった。歯痒くて仕方ないが、何も言えないのではどうしようもない。こういう時は……。



「私はもう帰る!」



 戦略的撤退!


 に、逃げるんじゃないぞ? 状況を鑑みて引く時に引くのは正しい事なんだ。

 そうして逃げ帰ろうとして、1つしていない事に気がついて足を止めて振り返った。


「金剛寺君」

「なんだ?」



 こちらを見送ろうとしてか、その場に立ったままの金剛寺君に対して、私は最敬礼の角度で頭を下げた。



「本当に、色々とありがとう」



 していなかったのはお礼。なんであれ靄のかかった私の心を晴らしてくれたのは彼のお陰なのだから。助けてもらったなら、必ずお礼をするんだよと、さち枝お祖母ちゃんからも言われていたしね。


「気にするな。たまたま出会って、たまたま上手く話がまとまったに過ぎない。それに結論を出したのは東条自身だろ。やっぱり俺の感じた事は間違っていなかった」


 殊勝にもそんな事を言ってのけて、サムズアップしてみせる金剛寺君。主将だけに殊勝なんて。駄洒落か? ってか感じた事が間違って無かったって何だよ!? まだ諦めてないのかっ!!

 ああー、もう何だか色々恥ずかしくて、頭がどうにかなっているな、私。自分で思った駄洒落のあまりのくだらなさと、金剛寺君の臆面も無い台詞に内心のた打ち回るも、なんとか顔に出ないよう、言葉を捲し上げ続ける。


「と、ともかくだ。今日ここで見聞きした事は誰にも言うなよ、絶対だからな!」

「わかってるって」

「ホントにホントだからな? もし誰かに言ったら……」


 少し凄んで金剛寺君を見据えると、ふと彼があごに手を中て黙考した後、ちょっと意地の悪い表情を浮かべて妙な事を提案してきた。


「そんなに気になるなら、取引といこう」

「取引?」


 行き成り何を言い出すんだ。思わずきょとんとしてしまった私に対して彼は言葉を続けた。


「そうだ。俺は東条の秘密を漏らさない。変わりにお前は俺のいう事を1つだけ聞く。それでどうだ。信用ならんというなら俺の竹刀に賭けても良い」


 いや、竹刀に賭けるとか言われても全く説得力が無いんですが……。

 でも内容にも寄るが交換条件であれば多少安心は出来るか? って、まさかこれを元ネタにして、付き合えとか言うんじゃないだろうな!? いや、でも金剛寺君は今までの感じからすれば、そんな交換条件は出してこないだろう。……多分。


「……公序良俗に反する要求には応じ「そんな要求するかっ!」」


 思わず不安が口を突いて出たが、光の速さで遮られた。流石にちょっと嫌らしい言い方だったか。反省しよう。彼は私を助けてくれたのだから。


「そう身構えるな。なにか物をくれとかそういう話ではない」


 彼の要求内容を全く想像できないため、思わず身構えていたが、どうやら杞憂に終わりそうだ。

 そうして彼から要求された内容は、本当に呆気ないものだった。



「俺の事は今度から苗字じゃなくて名前で呼んでくれ」

「はぁ?」



 その程度でいいのか?と、思わずこちらからハードルを高くするような事を言いそうになる程、彼の要望は小さなものだった。


「俺の苗字はやたらと厳ついだろ。だから個人的には下の名前で呼ばれる方が良いんだ」


 なんだ、そういう事か。ってか小っさっ! 体でっかいのに要求小っさ過ぎ! まぁでも、これが彼なんだろう。お前は何処の時代の武士だっていう位、今時にしては珍しく実直な性格をしている。だから約束を違えるような事はしないだろう。それくらいで秘密が守られるなら安いものだ。


「分かった。その要求を呑もう」

「そうか、ありがとう」


 変な奴だな、名前を呼ぶ位で「ありがとう」だなんて。

 まぁいい。これで頭を悩ませる案件は無くなった。

 ちらりと腕時計に目をやれば結構な時間になっていた。急いで帰らないとさなちゃんに心配をかけてしまうし、そもそも今日は2人に気を使わせ過ぎたのだ。これ以上負担をかけるような真似はできない。


「それじゃあ本当に失礼する。またな、成次君」

「気を付けて帰れよ、東条」


 そうして私はその場を後にして家路へと着いた。


 今日は本当に色々と疲れた。

 けれどその殆どは私の所為だ。

 それに今この場で私の葛藤は解消されたといっても、2人には未だ何も話しては居ないのだ。逃げるようにしてしまった事についても、これから家に帰ってさなちゃんと勇とも話しておかないといけない。


 そうして気合を入れて帰ってみれば、家の前を行ったり来たりしているさなちゃんと勇に開口一番怒られた。


「こんな遅い時間まで連絡もなしで何してたのよ、姉さん!!」

「そうですよ! 遅くなるなら遅くなるで連絡くらい下さいよ!!」


 別れ際があんなのだったし、メールしても返事も無い、電話をしても連絡がつかないとで大変心配したそうだ。電車に乗ってる間は携帯の電源を落としておく癖がついていたから、2人と別れた後、携帯の電源がそのままだったのだ。慌てて電源を入れてみれば、2人からのメールが十数通一気に届いた。


 素直にすまないと頭を下げ顔を上げると、先ほどまでの怒りは何処へやら。2人とも笑顔で家に迎え入れてくれた。


「まったく。姉さんってば時々抜けてるんだから」

「何言ってんだか。ついさっきまで警察警察って騒いでたのは早苗だろ」

「ばっ! 勇一郎だって竹刀持って飛び出そうとしたじゃない!!」

「あれはお前が変な事言うからだろ!! 誘拐とか事故とかあんな事言われたら……」


 別れ際はあんなに静かな、言ってしまえば暗い雰囲気であったのに、何時の間にか普段の空気に戻っていた。予想外の展開に折角入れた気合が抜けてしまった。

 きっとさなちゃんが何とかしてくれたのだろう。2人の中の良いやり取りに、自然と笑みが浮かぶ。


 だけれど、これからは本当にぶつかり合うのだ。

 きっと、悲しい顔も、怒った顔もさせてしまうだろう。


 でも、決めたのだ。

 私も私の幸せを考える、と。


 感じたのだ。

 ああ、本当にこの2人と出会えてよかった、と。


 千鶴子として生きてこれてよかったと、今までしてきた事が無価値でなかったと、改めて思った。


 そして、居るか居ないかは判らないけれど、きっと心の中で一つになっているだろう本当の千鶴子と、今では顔も思い出せない自分に静かに感謝と別れの挨拶を告げた。



(私、もっと頑張るよ。もう何も怖くない。独りぼっちじゃないって分かったから)



 そんな私の心の声に答えるように、夜空に星が瞬いた。

定番といえば定番なんですが、ネガティブ回でございます。

次回からはコメディに……なるなる詐欺……でも多分きっと大丈夫な筈。

それに色々と埋め込みましたし。

引っ掻き回し役その2もここに来てようやく本編に絡める事ができました。

計画性ないですねぇ……ともかく次回からも頑張ります!!


――――――――――――

2013/9/29 誤字脱字修正 ご指摘ありがとう御座います。

2013/10/1 一部表現追加

2013/10/6 一部表現追加


幕間

どこかの商店街にて

「ちょ、あれ生徒会長じゃない?」

「え、ああっ!本当だ!」

「手を繋いでんの誰? 誰?」

「あれは確か剣道部主将の金剛寺君だよ!」

「えっ? 付き合ってるの!?」

「私の聞いた話だと断られたって……」

「ってか生徒会長泣いてない?」

「泣いてるっ! 泣いてるよっ!」

「何事!? 何事が起こってるの!?」

「泣いてる生徒会長。鬼気迫る表情をした剣道部主将に手を引かれて……」

「匂いますね」

「追っちゃう?」

「追っちゃおうか」

「追わないでか」

「って早っ! なんであんな雑踏の中スイスイ歩けるの!?」

「ああ、見失っちゃうっ!」

「者共、散れっ! 散会し各個にて索敵行動に移れ!」

「いえっさー!!」

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