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愚者達の戦記  作者: 六三
皇国編
251/443

第160:薔薇

 薔薇は正しくない。


 1つ1つの花弁は波打ち歪み整わぬ。花弁が規則正しく並んでもいない。漠然と不規則にならぶ。だが、人々はいうのだ。薔薇は美しいと。


 デル・レイ王アルベルド。大陸で最も名高い王である。長きに渡って他国に侵略されていた領土を取り戻し、小国ケルディラを助けんと大国ランリエルと戦った。そしてついには、ランリエルに奪われたケルディラの領土を取り戻さんが為、折角取り戻した自らの領土を放棄してのけたのだ。


 その華やかな業績の薔薇を人々は褒めたたえ喝采を送った。その花弁の1つ1つの歪みに気付かず。


 グラノダロス皇国の皇祖エドゥアルドは一代で巨大皇国を成した。だが、その業績、名声に比べ前半生が謎の人物である。ある国の家臣として召抱えられ、他の家臣達を主君に仇名すと討伐し勢力を広げ、ついには主君すら追放した。だが、それでも周辺各国から見れば小国の主でしかなかった。


 エドゥアルドは大国エランテリアと同盟した。国力を見れば従属したに等しかった。そのエランテリアの力を背景にエドゥアルドは隣国ハテアとも同盟し、ハテアの力も合わせエスナを従わせたのだ。エドゥアルドとハテア、エスナの連合軍がエランテリア滅ぼしたのはその2年後だった。


 領土分配でエドゥアルドはエスナには十分報いハテアには薄かった。ハテアは不満を訴え、エドゥアルドはエスナと共にそれを討った。その後エスナをも滅ぼしたのである。こうして絶大なる力を持ったエドゥアルドは、更に周辺諸国に軍勢を進め巨大皇国を築き上げたのである。


 そのエドゥアルドの出自がゴルシュタットなのではないか。以前からそういう噂はあった。理由は単純明快。エドゥアルドという名前がゴルシュタット風だからである。そして、アルベルドもゴルシュタット人の血が流れている。たったそれだけを元に、皇祖エドゥアルドの再来。アルベルドはそう呼ばれ始めていた。己の名声も掛け合わせ、アルベルド自身が流させたのだ。


 封建社会では人の感情が重要だ。時には、法より権力者の支持が優先されるのだ。法による継承順位を越えて皇帝になるには、その支持が必要である。アルベルドの異母弟には、さらにルシオとウルバーノがいるが、以前は皇帝パトリシオ、宰相ナサリオ、皇太子カルリトスが居た。彼らは、有能、無能以前に権力を握るのを早々に諦め能力を磨く努力すらしていない。尤も、能力を磨こうとしない事自体が無能を表しているともいえた。有能な後ろ盾もなく次期皇帝候補の名簿に名前が記されてすらいないのが現状だ。そしてアルベルドも本来なら名簿対象外。


 衛星国家の王を、皇国の国政にかかわらせない。その皇祖の遺訓がある。皇国は皇祖の遺訓により運営されている。それを人々の支持により乗り越えなくてはならないのだ。


 しかも6歳と幼いとはいえ、前皇帝パトリシオの息子カルリトスがいる。皇帝の椅子は一時カルリトスに預けるしかない。心もとないその幼い皇帝が成長し、人々の信頼を得るまでが勝負だ。


 アルベルドの当初の計画では、ランリエルと戦いつつ勢力を拡大し、その後パトリシオ、ナサリオを亡き者とする。拡大した勢力を背景に皇国の権力を握る。そのようなものだった。だが、思いの外ランリエルが手強い。計画ほど勢力を拡大出来なかった。それどころか、ランリエルは不敗の皇国軍すら破って見せたのだ。計画は大きく変更された。しかしそれはアルベルドの不利にならない。


 不敗の皇国軍が敗北し、皇帝が実弟の宰相に毒殺される。後を継ぐは幼い皇太子。確かに今、皇国は建国以来の危機。だからこそ活路がある。正常ならば衛星国家の王となったアルベルドに皇国への道はない。だが、今は異常事態。異常の道が開けた。


 アルベルドはその異常の道を進む同行者を求めた。衛星国家の王。その中でも下位国家の王だ。


 バンブーナ、ブエルトニス、エストレーダの国王が皇都でのアルベルドの屋敷に集まった。人の目を忍んでというほど秘密裏にではない。衛星国家が集結し反抗するのを警戒して様々な方策を講じる皇国だが、衛星国家の王同士が会ってはいけないという決まりまではない。そしてアルベルドが用意したのは4人しか入れぬ狭い密室ではなかった。


「酒と料理を用意させました」


 アルベルド自ら他の3王を案内したのは、数百人は招待し舞踏会が開催できるほどの大広間である。その中央に円卓が置かれていた。バンブーナ王は怪訝そうな顔だが、他の2王の表情は読めない。彼らを一瞥したアルベルドは、背を向け先導する。


「密室などでは誰が聞き耳を立てているか分かったものではありません。それを案じ警護の騎士を置けば、その者が話を聞きましょう。これならば、誰かが近づけばすぐに分かります。ですが、広間を越えるほどの大声で話しては本末転倒。お声にはお気をつけて下さいますように」


 中央に辿り着き、王達が囲む円卓には最高級の料理と酒が用意されているが誰一人として手を伸ばさなかった。会談を主導するデル・レイ王アルベルドがまず口を開く。


「皇国史上、未曾有の危機。そう言って過言ではないでしょう。今こそ我らの皇国への忠誠心が試される時」

「それは言われるまでもない。我がバンブーナは無論、ブエルトニス、エストレーダも同じ考えで御座ろう」


 言われた両王が頷く。


「方々の忠誠を疑う心は微塵もありません。ですが、忠誠が必要なのは当然として、嘆くべきは、その心があれば良いというものではないという事です。忠誠篤いからこそ諍いが起こり、団結が損なわれる事があるのも事実」

「何を仰る。我らの団結に一筋の傷もありませぬ。それはアルベルド王もご存知で……。ふむ」


 バンブーナ王オダリスが言いかけ、頷いた。他の2王は口を閉ざしたままだ。だが、それは2王が愚鈍なのではない。沈黙は時に金に勝る。自分達を招待したアルベルドの真意が分かるまで、迂闊に口を開くべきではない。


「はい。問題は、衛星上位国家のアルデシア、カスティー・レオン、バリドット、ベルグラード。ランリエル討伐時にも彼らと我らの総司令達に少なからぬ諍いがあり、敗因の1つになったのではないか。我が国の総司令クリストバルも、そう申しておりました」


 実際、ナサリオと皇国軍総司令バルガスは彼らを上手く制御していた。敗因とは言えない。強いて彼らに問題があるとすれば、ナサリオの命令を厳守し過ぎたと言えるが、それも意地の悪い姑が自分で命じて置きながらケチを付ける嫁いびりのようなものだ。だが、原因の全てといわず、1つと言えば、そういう事もあるかと納得してしまう。


「上位国家の方々とも手を携え協力していかなくてはなりません。ですが、彼らの地位の高さを誇る意識は強い。ここは、我らが下手に出てでも彼らの協力を得るべきでしょう」

「我らが下手に出ると? 確かに今こそ我らは一致団結すべき。それは当然です。ですが、こちらが頭を下げる必要はありますまい」


 ブエルトニス王エウセニス、エストレーダ王セルセニオは、沈黙を守る。


「仰る通りです。確かに道理で言えば、我らが一方的に下手に出る必要はあるません。ですが、彼らがその道理を理解してくれるかどうか。道理を求めたその挙句に我らに亀裂が入れば、それこそ皇国への忠誠が疑われましょう」

「確かに、今は些事に捕らわれるべきではない。我らが下手に出るのも必要でしょうな」


 口を開いたのはエストレーダ王セルセニオ。在位30年近い老人だ。即位した時は軽薄な人柄を危ぶむ声もあったが、今ではその老練さを讃える声も少なくない。ブエルトニス王は、まだ沈黙を守る。


「何を仰る。力を合わせる為に下手に出るのが皇国への忠誠ならば、上位国家が忠誠心を発揮し我らに歩み寄るべきではないか」


 オダリスの声は大きいが、広間の端に届くほどではなかった。アルベルドは少し待ち、セルセニオが口を開かないのを確認すると自らの口を動かした。


「オダリス王のお言葉、真に正しい。ですが、相手がある事。相手が納得しなければ事は進みません」

「私とて納得出来るものではない」


「そのお気持ちは私にも分かります。しかし皇国への忠誠はその口惜しさに勝ります。今は衛星国家8ヶ国が力を合わせる時。その最短距離を進むべきでしょう」

「いくら距離が短くとも、棘≪いばら≫の道では進むに進めまい。多少遠回りでも易き道を進むべきだ」


 皇国にタランラグラ制圧を命じられたバンブーナである。水や飼葉すら現地調達出来ぬ荒れ果てた土地への出兵は、予想を遥かに超える戦費を消費し財政を圧迫した。しかもその挙句タランラグラはランリエルの手中に収まり、皇国からは労いの言葉どころか叱責を受けた。皇国、そして前皇帝パトリシオへの不満は小さいものではなかった。


 だが、バンブーナはあくまで皇国の衛星国家。皇国に忠誠を誓うかと問われれば誓うと答えるしかなく、しかし、その為に気に食わぬ上位国家に頭を下げねばならぬとなると、我慢の限度も越える。


 そしてアルベルドは、実はオダリスが不満を持っているのを既に知っていた。元々情報収集に余念ないアルベルドだが、最近ではそれが急速に強化されていた。彼の聖王の名を、神が如き敬い狂信的な忠誠を誓う信奉者達。それが国境を越え体陸全土に広がっていた。


 各国に送り込むのではない。アルベルドに感化され、人種を超え各国に発生するのである。その者達を使う。先祖代々そこに住む者達なのだ。他国の情報を集めるのに、これ以上の適任はない。


「その棘の道を進むのが皇国への忠誠というものではないですか」

「言うだけならば、いくらでも言えよう」


 皇国への忠誠を訴え続けるアルベルドに、オダリスの声に苛立ちが混じる。


 セルセニオが一瞬、探るような視線をオダリスに向けたのをアルベルドは見逃さなかった。先ほどの彼の発言も、オダリスの反応を見る為か。そして、そのような発言は、得てして己の真意とは逆なものだ。


 ならばセルセニオも皇国、いや、この場合は上位国家にか。不満を持っていると見てよい。もう少し確証を得るべきではあるが……。今だ分からぬのはブエルトニス王エウセニスだ。


「エウセニス王は、どうお考えですか?」

「いえ。私など聡明な方々に飲まれるばかり。口を挟む言葉などありませぬ」


 やはり一番食えぬのはこいつか。そういえば、ナサリオの妻フィデリアの従兄に当たるはず。前ブエルトニス王に男子がおらず、甥に継がせたのだ。しかし前国王の甥は彼1人ではない。競争相手を押す者も多く、エウセニス王は国内の支持を得る為、ブエルトニスの国益に敏感だ。


 ランリエル討伐時にはナサリオの本陣に張り付き、ナサリオの太鼓持ちに饒舌だったという。その男の口数が少ない。単純な男ではなさそうだ。


「とはいえ、我らは自身でも気付かぬ内に意見が偏っているのかも知れません。これからは上位国家の王達との交渉も必要になってくるでしょう。エウセニス王のような方にこそ、我らの代表として交渉にあたっては頂けませぬか。オダリス王もセルセニオ王も異論はないものと考えますが、如何ですかな?」


 アルベルドが自分でなると言えば警戒もするし、自分が矢面に立ちたい訳ではない。他者を薦められては拒否する理由もなく、他の2王も頷きエウセニス王に視線を向ける。


「滅相もありません。交渉するには、自らの軸というものが必要でしょう。私のような意見なき者が交渉すれば、相手の言うがままになるのは火を見るより明らか。交渉にあたる代表を決めるなら意見あるお三方の誰かが適任で御座いましょう」


 強引に引き摺り出してもやはり逃げるか。そして、本当に無策とは思えぬ落ち着きがある。その隠した本心がどこにあるのか。上位国家への不満か。ただただ皇国への忠誠か。下位国家が上位国家に好意を持つのは考え難い。皇祖自身が、上位国家と下位国家をいがみ合わせ協力させないように今の体制にしたのだ。それとも、それを覆す余程の事情があるのか。


 そしてセルセニオ王もなかなか食えない男だ。自分に矛先が向く前に外してくる。


「ならばアルベルド王が適任ではありませんかな。アルベルド王は新皇帝カルリトス陛下の叔父上にして、その後見人。席次の高さを誇る上位国家の王達にも侮られる事もありませぬ」

「確かに皇帝の後見人とはなりましたが、それはあくまで皇国を支える為のもの。それによってデル・レイや衛星国家の立場を代弁しようとは思いません」


 衛星国家の王は皇国の政治に干渉しない。それが皇祖以来の国是だ。それを表には出さない。そして事実、アルベルドにデル・レイに優位な政策を皇国に押し付ける考えはない。デル・レイなど皇国という母屋を乗っ取る為の道具でしかない。道具を磨く為に、母屋を壊しはしない。


「なに、アルベルド王のお心がそうであっても、人は自身の器によって他者を計るもの。上位国家の王達が自身の器でアルベルド王を計り、逆らっては皇国が自分達に不利な政策をとるかも知れぬと怯えるのは彼らの勝手。そうではありませんかな?」


 セルセニオ王の真意は、やはり上位国家に対抗したいというところか。とはいえ自分がその矢面に立ちたくないと。老獪と言えば老獪だが、そうなれば状況が見えてくる。エウセニス王も辞退しているので、残るはオダリス王か自分しかいない。そして皇国への影響力を考えれば、敗戦したばかりのバンブーナという選択はない。


「上位国家の王達が、それほど愚かとは私には思えません。もし私が我らに優位な政策を進めれば、彼らはそれこそ皇祖のご遺訓に逆らうのかと糾弾しましょう」

「何を仰る。我らに優位な政策をして欲しいのではありません。そうなされるかも知れないと、彼らが考えるのは彼らの勝手と申しておるのです」


 選択肢が1つならば、こちらが引けば食らい付くしかない。セルセニオ王も手強いかと思ったら、結局はこの程度。となるとやはり警戒すべきはエウセニス王。一応は、私が代表になるのに反対ではないようだが……。


 その後も辞退するアルベルドと薦めるセルセニオの攻防は続く。結局、セルセニオがオダリスも説得する形で下位国家の代表はアルベルドと決まった。その間、エウセニスは終始無言だった。


 王達が引き揚げた後、アルベルドは学芸員とも呼ばれる諜報員を呼び寄せた。


「ブエルトニス王エウセニスの周辺で使える者が居ないか調べろ。多ければ多いほど良い」


 無論、使える者とはアルベルドへの信奉者だ。彼らは大陸全土に絶えず発生している。難点を言えば、アルベルド自身、彼らがどこに発生しているのか分からない。その為、以前から雇っている諜報員達の最近の主な任務は、アルベルドの信奉者を探し当てる事だった。


「かしこまりました」


 恭しく跪きながらも、その顔には不満の色が濃い。彼らは、求められた役柄を完璧に演じる技能集団。その意味では、信奉者など素人でしかない。それが自分より重要視されると心穏やかではない。


「そう、気に病むな。私も彼らがお主達に及ばぬのは分かっている。人に犬の真似をさせるより、犬が居るなら犬を使うというだけだ。お主らにはお主らにしか演じられぬ役割がある。決してお主達を軽んじる訳ではない」


 面倒な奴らとは思いつつ宥める。部下は無条件に雇い主に従うはず。そんな馬鹿げた幻想を持ってはいない。気に食わぬ部下を毎日のように切り殺す。そんな児童向けの話のような暴君が居れば、数日で部下に寝首をかかれる。いや、一晩でか。


 部下を納得させ下がらせたアルベルドは、ナサリオが入れられている監獄へと向かった。前回と同じく看守を下がらせた。ナサリオは精神的、肉体的疲労でやつれ果てていた。頭髪も半分近くが白くなり、息子のユーリですら、一目見ただけでは、それが父だとは気付かぬだろう。


「アルベルド。違うのだ。本当に私は兄上を、皇帝を殺そうなど考えてはいなかったのだ」


 過酷な環境に、ナサリオの知性が擦り減っていた。鉄格子にしがみ付き何度も聞いた弁明を繰り返すその姿に、皇国宰相の面影はない。


「分かっています。ですが、兄上を無実として牢から出すのは不可能です」

「どうにか。どうにか、ならないのか」


「出来るとすれば、密かに兄上を脱獄させるしか手はありますまい」

「で、出来るのか!?」


「考えはあります。ですが、条件が厳しく、もう少し確実になればお話します」

「今すぐは駄目なのか? 今も看守を遠ざけておろう。このまま牢から出してくれれば良いではないか」


 本気か? 牢獄暮らしで、ここまで阿呆になったのか? アルベルドは、呆れる思いが顔に出るのを何とか耐え切った。


「今、兄上が牢から姿を消せば、私の仕業と一目瞭然ではありませんか。私はデル・レイを背負っているのです」

「え、あ、ああ。そうだな」


 流石にナサリオも迂闊さに気付き、赤面し俯く。だが、それを感じる知性が復活しても諦めきれぬのか、苛立ちに神経質そうに鉄格子を拳でこつこつと小突く。


「それに、フィデリア義姉上、ユーリの安全も講じなくてはなりません。今のところ理由をつけデル・レイに留めておりますが、皇国に連れて来られては私も庇いきれません。早く手を打つ必要があります」

「う……うう。どうすれば良いのだ」


 皇帝殺害犯の妻と息子。どう贔屓目に見ても死罪である。ナサリオが逃げればなおさらである。そして、一時知性の復活したナサリオも理解した。デル・レイにいる2人が姿を消せば、真っ先に疑われるのがアルベルドだ。


「1つだけ……。手があります」

「そのようなものがあるのか!?」


「はい。ですが、外道、鬼畜の手段です。兄上と義姉上、そしてユーリも辱める事になります」

「我が家族を辱める? それはどういう事だ?」


「兄上は、男性として不能。義姉上との婚姻当初からそうであったと、公表するのです」

「な、何をいう! 私は不能などではないぞ!」


 男にとって、これほどの侮辱はない。事実、妻フィデリアを数え切れぬほど愛し、息子も授かっているのだ。


「分かっています。ですが、義姉上とユーリを救うにはそれしかありません。義姉上は実質的に兄上の妻ではなく、ユーリも兄上の血を引いていない。そう主張するしか2人を救う道はないのです」

「だ、だが、では、フィデリアは誰の子を産んだというのだ! フィデリアに、どこぞの名も知れぬ男と不義を働いたとでも言わせるきか!」


 鉄格子にしがみ付き、怒りをぶつけ懸命に揺らすがびくともしない。


「私です。兄上。義姉上は我が妻であり、ユーリは我が息子。そういう事にするのです」

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