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愚者達の戦記  作者: 六三
皇国編
212/443

第123話:道化

 宰相ベルトラムの娘であるクリスティーネはリンブルク王国第一王子フリッツと婚約。それと同時にリンブルク王ウルリヒの養女となった。しかも王位継承権をも与えたのだ。女性に王位継承権を認めないこの大陸では異例中の異例である。


 リンブルク南部で起こった反乱にウルリヒ国王、フリッツ王子の関与が疑われ、それを不問とする事との引き換えにこの条件を飲んだと噂された。


 そしてこの決定にフリッツ王子は不満だった。つい数ヶ月前は親ゴルシュタット派だった彼だが、愛すべき一見無愛想だがその実不器用で頑張り屋の侍女に感化され、今では立派な反ゴルシュタット派である。今日もその侍女を部屋に連れ込み愛を語らい愚痴をこぼしていた。


「お前という愛する者が居るというのに、ベルトラムの娘と婚約など反吐が出る」

「ですが、ベルトラム様といえば、近頃ではご子息が大国ゴルシュタットの国王陛下になられたとか。逆らってはいけません。私はこのように殿下のお傍に居られるだけで幸せなのです」

「シモン。お前はなんと健気な女なのか」


 フリッツ王子は侍女を抱きしめ押し倒した。彼女の純潔を奪ってからというもの彼はシモンの身体に溺れていた。普段は控えめな彼女が事が及ぶと思いの外反応がよく、しかも彼女自身それを恥じているのか必死で耐えようとしているのが更に情欲をそそる。


 もっともその純潔の印というのが、いざ事が始まるというその直前に彼女が自らの爪で傷を付け出血させたのをフリッツ王子は気づいていない。


 しかもその愛しい侍女は夜にはフリッツ王子の父であるウルリヒ王の相手もしていた。以前はいつの日かベルトラムを打倒しゴルシュタット軍を追い払う希望もあった国王だが、今ではその望みも消えうせ、その鬱憤を侍女にぶつけていた。


「ベルトラムを討ち取ると申していたではないか! この馬鹿者め!」


 国王の苛烈な責めに人形のように表情を変えぬ侍女が顔をゆがめ苦悶に耐える。


「お、お許しを……」


 だが、許しを請うその声には隠しきれぬ快楽の色も混じっていた。混じりそれが国王を更に猛らせ侍女を責める。


 昼は王子、夜は国王。侍女達を管轄する侍女長がそれに気付かぬはずは無く人道を外れた行為に青ざめた。しかしだからこそ口外できずに居たが、親子共に侍女を呼びつける頻度は増していく。そして遂に王子の耳に入った。


 以前にも、侍女自身から父に本を読んでいるとは聞いており疑った事もあったが、その時は侍女の言葉を信じた。しかし、夜な夜な国王の部屋から快楽に耐える女の呻き声が聞こえるとまで耳にすると疑いも深くなる。


 王子が、深夜こっそりと侍女の部屋を見張っていると侍女は部屋を出た。そしてその足で国王の部屋に入ったのだ。その瞬間、目の前が怒りで朱に染まる。


 やはりそうか! い、いや、ここまでは問題ない。彼女が父に本を読み聞かせているのは前から分かっていた事ではないか。


 愛する侍女を信じる心を奮い立たせ、何とか冷静になると扉にへばり付き耳を当てた。曲がりなりにも一国の王子がこそ泥のような真似だが、今は自らを省みる余裕は無い。そしてしばらくすると、確かに本を読み上げているような侍女の声がする。


 ふっ。やっぱり、彼女の言葉は正しかったのだ。聞いていた通り本を読み聞かせているだけではないか。それを誰かが早とちりしたのだ。


 馬鹿馬鹿しいと立ち去ろうとした時、その声の質が変化した。


「勇者は、む、村人に勇気を……あた……与え、村の者達も」


 言葉は途切れ途切れとなり、苦悶の色も混じる。


 なんだ!? と再度、扉に耳を当てた。そして侍女の声は益々途切れ途切れとなり意味すらも成さなくなる。遂には、苦悶の呻き声ばかりだ。


「どうした。はやく続きを読まぬか」

「も、申し訳ありません。ですが、ベルトラム様にお国を獲られたのは私の所為では……」


 ベルトラム様? 国を獲られ? なんの会話をしているのだ? 確かにベルトラムに国は獲られた。それがどうして彼女に関係があるのだ?


「黙れ! 黙れ!」


 国王はいつものように侍女を責める。だが、侍女の反応はいつも通りではなかった。


「だ、誰か助けて!」


 なんと助けを呼んだのだ。もっとも決して大きな声ではない。精々扉の向こうで聞き耳を立てている者が居れば、その者には聞こえる程度の大きさだ。


「父上! 何をやっているのですか!」


 飛び込んだフリッツ王子が見たものは、半裸で逃げる愛する侍女とそれを追いかける父の姿だった。


「殿下!」

 王子を見るなり侍女はその胸に飛び込んだ。それをうろたえた国王が言い訳しながら追いかける。流石に息子に見られて良い姿ではなく、何とか言いくるめなくてはならない。


「ち、ちょっと、その、ふざけていただけで」


 しかし王子は取り合わない。侍女を背に庇おうと前に進み出た。だが、侍女の方といえば、彼女なりに国王から逃げようと動いて王子の前を遮るばかり。結果、王子は侍女を押すようにして前に進み続ける。


「陛下が、陛下が国を奪われたのも何もかも全て私の所為だと……。償いに私の身体を差し出せと……」


 侍女がそう言って改めて王子の胸に顔を埋めた時には、国王と王子は侍女を挟んで間近に迫っていた。しかも王子は愛する者の訴えに怒り、父に詰め寄った。


「あ、貴方はなんと卑劣な! だいたい彼女に何の責任がある!」

 彼女が国王と公爵との橋渡し役をしていたのを知らぬ王子は父に掴みかかり、怯えた父は逃げようとする。間に挟まれた侍女はもみくちゃだ。


「ち、違うのだ。フリッツ。私の話を聞け」

「何が違うだ!」


 その時、国王親子から見えぬ侍女の目が光った。怒鳴りあう親子の間で侍女の足がすっと動く。足を取られた国王が体勢を崩したところに侍女ものしかかる。国王に掴みかかっている王子も後に続く。狙い済ましたように国王の頭は机に強打し鈍い音が響いた。そのまま倒れ、自身も床に打ち付けられた王子が身体を起こし見たものは、頭から血を流し動かなくなった父の姿だった。


 国王が息子である王子と侍女を取り合った挙句、もみ合いとなり転倒して頭を打ち死亡。王家の名誉を考えれば闇に葬られそうな醜聞。だが、それは公表された。リンブルク王家の名誉は地に落ちた。


 当然、その国王の養女となり王子の婚約者となったクリスティーネの耳にも入る。父からは、リンブルク王子は立派なお方だと言い聞かされ一度も会った事の無い婚約者に恋焦がれていた。それが結局合わずじまいのままこの結末である。


「よく分かりました。フリッツ殿下には憎しみもありません。どうか、その侍女と一緒に暮らせるようにして差し上げて下さい」


 そう言ったクリスティーネ王女は表情を変えなかった。


「分かったお前の言う通りにしよう」


 父でありリンブルク宰相でもあるベルトラムは気丈に振舞う娘の言葉に従った。亡き妻の全てを引き継ぐこの娘も、やはり妻と同じ優しさと強さを持っていた。


「所詮この世の男達は皆同じなのです。信じられるのはお父様だけなのですね」

「なに、どこかにお前に相応しい男はいる」

「いえ。私にはお父様だけ……」


 その言葉に父の胸に顔を埋めた娘は、父が身に纏う絹の衣装を涙で濡らしたのだった。


「父王をその手にかけたのは許されざる大罪ではあるが、状況から見ても事故と考えられる。とはいえ不問にも出来ず。フリッツ王子は王位継承権を剥奪し、ゴルシュタットにて余生を静かに過ごして頂く。その際に事件の発端となった侍女を連れて行く事を許すが、それはクリスティーネ王女の格別のご配慮によるものである」


 その発表に人々のクリスティーネへの評価は、

「お優しい方ではないか」

 との好意と

「元々押し付けられた婚約者。許される覚えはないわ」

 との敵意が相半ばした。


 もっともベルトラムには計算通りだ。そもそもクリスティーネの言葉が無くてもフリッツ王子は殺さない積もりだった。国王と王子が続けざまに死んでは流石に不味い。どうせ国王殺しはフリッツ王子自身が自分がやったと信じているのだ。それを下手に王子まで殺せば、国王殺しまで怪しまれる。


 そしてクリスティーネの言葉が無ければ、民衆は彼女に敵意は持っても好意は持たなかった。半分味方に付ける事が出来ただけでも良しとすべきである。


 そして国王、第一王子が共に居なくなれば王位は誰が得るのか? 決まっている。クリスティーネ王女しかいない。すぐさま戴冠式が行われ、ここにボルディエス大陸では現在唯一の女王が誕生したのである。



 全てが済んだ後、ゴルシュタット王都に屋敷を与えれたシュバルツベルク公爵は居間にてくつろいでいた。その傍らには忠臣グレルマンの姿も見える。主人を見極められなかったと恥じ入る彼に、

「お前の目を欺くとは、リーデンバッハ伯爵はよほど私に似た男を用意したらしいな」

 と、公爵は気にするなという態度だ。


 その言葉にグレルマンは深く感謝し更なる忠誠を誓った。だが、それと同時に公爵は変わられたとも思った。以前の公爵は部下に要求する事苛烈であった。それにより実績を挙げ勢力を広げたのだ。今の公爵は以前よりも肩の力が抜けているように見える。


 以前の公爵にならば決して言えぬ事だが、今の公爵ならば許されるかも知れないと、ついグレルマンは主人に問うてみた。そして予想通り公爵は激さない。


「なに、この世に決してかなわぬ者が居ると知れば肩の荷がおり気が楽になるというものだ」

 そう言って苦笑が浮かぶ。


「かなわぬ者? それは誰なのですか?」

 しかし公爵はグレルマンの問いかけに答えず、その時の事を思い起こしていた。


 それはリーデンバッハ伯爵がリンブルク南部で反乱を起こし、ベルトラムに自分はリンブルク王都に留まれと命ぜられた日の深夜だった。既に屋敷はゴルシュタット兵に囲まれ脱出も出来ず覚悟を決めていると、なんとベルトラムが数名の騎士達と共に屋敷に乗り込んできたのだ。


「このような夜更けに何の要件ですか?」

「なに、会員として会長にお話がありましてな」


 その言葉に公爵は訝しげな視線を向けた。


「会員?」

「お忘れですかな。確か私はリンブルクを憂い将来を考える社交倶楽部の会員となったはずですが」


 なるほど。そういうものもあったなと、公爵に自嘲の笑みが浮かぶ。もはや今となってはそれも馬鹿馬鹿しい話だ。その会長とは、今となっては道化である。その道化を前にベルトラムは今更何を語ろうというのか。


「リンブルクにとっても悪い話ではありません。それには是非公爵のお力をお借りしたい」

「良い条件でゴルシュタットに併合して貰えるとでも言うのですかな? それを私が他の貴族達を説得しろと?」


「まさか。それではリンブルクにとって良い未来とは言えぬでしょう」

「ほう。では、まさかリンブルクの独立を認めて頂けるのですかな?」


「それでは過去に戻るだけ。未来を語るとは言えませぬな」

「では、リンブルクがゴルシュタットを支配しますか」


 自暴自棄に公爵は吐いた。所詮自分はもう終わりである。多少の暴言を吐いたところで何が変わる訳でもない。


「はっはっはっ」

 ベルトラムも公爵の言葉が面白かったのか大笑する。


「流石は、聡明なるシュバルツベルク公爵。このベルトラム感服いたしました」


 何を言うか空々しい。公爵は舌打ちを我慢しなくてはならなかった。


「ご明察です」

「なに?」

「ゴルシュタットをリンブルクによって支配致します」


 こいつは何を言っているのだ? 大国ゴルシュタットを小国リンブルクが支配だと? しかも肝心のリンブルクは今2つに割れ、片方は滅亡寸前、片方は軍勢を取り上げられている。


「リンブルク南部の者達は王家に対する忠誠心が強い。邪魔なので消えて貰いましょう。そして利に聡い協力的な北部の貴族や私の腹心にその領地を分け与えます」


 こいつは何を言っているのだ? 無能ではない公爵だが話の展開に頭が付いて来ない。ベルトラムの顔を凝視するばかりである。


 ベルトラムは笑み、更に説明を続けた。


「ゴルシュタット軍の有力者で私に非協力的な者達には、リーデンバッハ伯爵と内通していたとの嫌疑をかけ我が城で軟禁いたします。なまじ殺してしまうより、手も足も出ぬはずです。そして徐々に領地を取り上げ、リンブルク貴族達にも分け与えようではありませんか。勿論、公爵にもです」


 それを持って軍事力の過半を超えるという訳ではないが、ゴルシュタットにもベルトラムに組する者は多い。併せれば最大勢力になる。だが、大きな問題がある。


「しかし、ゴルシュタット国王が黙っては居ますまい。そこまでの事をすれば流石に――」

「王は邪魔なので殺します」


 公爵は絶句した。それはまるで、庭に出た害虫を駆除するという程度に何気ない口調だった。


「リンブルク王にも死んで貰います」


 ベルトラムはどうすれば相手を殺さずに役立たせるかを考える男である。だが、生きていては邪魔で、殺した方が都合が良いならば躊躇しない。


「ゴルシュタット王家は姫を1人だけ残し他は殺しましょう。その姫と我が息子を結婚させてゴルシュタット王とするのです。リンブルクはフリッツ王子と娘を婚約させ王位継承権も認めさせましょう。リンブルク王を殺すのはその後で良いでしょう」

「し、しかしいったいどうやって。確かにリンブルクはいまや宰相の手の上。どうとでもなるでしょう。しかし、ゴルシュタット王にを手にかけるのは難しいのでは」


「分かっております。ですのでリンブルクの、公爵のお力を借りたいと申しておるのです」

「私の……ですか?」


「はい。今日このまま甲冑を身に纏って姿を隠し私と共に屋敷を出るのです。貴方の屋敷を見張っているのはすべて私の部下。その者達が公爵は屋敷に居るといえば誰も疑わないでしょう。その後貴方はゴルシュタットに移動させるリンブルク軍と合流し、貴族達の総意だと言ってゴルシュタット王都を攻めるのです。ゴルシュタットの軍勢のほとんどは、今こちらに向かっており王都は手薄。そこに1万の兵で奇襲をかければ雑作も無いでしょう」

「しかし、その後はどうするのですか。ゴルシュタット王を殺害したとなれば、宰相も皆の支持を失いましょう。まさか全ての罪を私にかぶせるお積もりではないでしょうな」


「まさか。罪はリーデンバッハ伯爵にとって貰います。リンブルク南部の軍勢を倒した我が軍がゴルシュタット王都に到着するその直前に貴方は替え玉と入れ替わって王都を脱出し我が軍に合流して下さい。その間は、こちらも公爵が居るように見せかけておきます」


 ベルトラムの口調はあくまで淡々と、まるで掃除の手順を説明するかの如きである。


 つまり一時期にゴルシュタット軍とリンブルク軍の両方にシュバルツベルク公爵が居たという事になる。ではどちらが本物か? 最終的に本物が居た方がずっと本物で、そうでない方はずっと偽者だったと皆は判断する。途中で入れ替わったとは誰も思わない。


 リンブルク軍に居た公爵は顔に傷を負って包帯で隠していたというが、実は公爵家お抱え医師をも巻き込んでいた。グレルマンは用意してあった血を頭から浴びてのた打ち回って見せた公爵を目撃し、その後は医師の言葉を信じたのだ。


 公爵家の家臣達にも事情を話し協力させればこのような手間はかけなくて良いのだが、万一ゴルシュタット王を殺すように命じたのは偽者ではなく本物だと露見しては計画が破綻する。計画を知る者の数は少ないに限る。無論、偽公爵を演じた男には、密かに脱出させて十分な報酬も与えると約束していた。その約束を破って殺したが、もし事が露見してはと考えれば当然の処置である。


 そしてリンブルク王はリンブルク王子によって不慮の事故死を遂げる。反ベルトラムに鞍替えした王子が王を殺すのだ。不幸な事故以外に考えようが無いではないか。


 その後で、’偶然降ってわいたこの状況’を利用してゴルシュタットを支配しようとリンブルク貴族達に持ちかけるのである。


 確かにリンブルク北部の貴族達は、長年のベルトラムの工作により利益を優先させ、王家から心が離れている。しかしゴルシュタットに虐げられてきた鬱憤も溜まっている。だが、ベルトラムの策に乗れば更に利益を得られ、しかも自分達が逆にゴルシュタットを支配できるのだ。


「豪胆なお人だ」


 今まで敵だった者達を自分の権力の後ろ盾としようというのだ。確かにこれほど豪胆な策は有るまい。


「それでは、話が纏まったと考えてよろしいですかな?」

「ええ。良いでしょう」


 公爵は頷いたが、実際他の選択肢は無い。ベルトラム自身それが分かった上で話を持ってきている。ここで断れば、即座に殺されるだけである。


「これで我らは一蓮托生。と言う訳ですな。ならばもはや隠し立ては不要。胸中を見せあおうではありませんか」

「胸中ですか?」


 公爵は首を傾げた。策は今語ったのではなかったのか。他に何を隠す事がある。そもそも自分にはもはや語る策などありはしないのだ。


「はい。私には腹心の部下がおりましてな。その者が影として動き、実は今回の南リンブルクの動きも事前に掴んでおりました」

「なるほど」


 確かにベルトラムが有能でも、これほどの策を瞬時に考えたとは思えない。事前に知っていたからこそ策を立てられたのだ。今更驚く事は無い。


「これへ」

 その言葉に部屋に入って来たのは男だった。どんな男かと言えば男である。特徴の無い顔立ち、特徴の無い体格、特徴のない動作。男としか言いようが無い。


「ダーミッシュと申します」


 その声もどこかで聞き覚えがあるように思える特徴のないものだ。


 こちらでいうところのシモンだな。自分も影として使い策を弄していたが、ベルトラム側の情報収集まで手が回らなかったのが敗因か。しかしそれも結局はベルトラムに手玉に取られていた事に変わりない。シモンは紹介するまでも、いや、ここは隠しておいて今後も活用する方が良い。何も馬鹿正直に見せる必要は無いのだ。


 だが、公爵の考えが分からぬのか、隣で控えていたらしいシモンが今度は自分の出番と思ったのか部屋に入ってきた。


 ちっ! まったく勝手な事を。やむを得ない。正直に紹介……。いや、どうしてここに居る? 王宮に、いや、リンブルク王とフリッツ王子と共に南リンブルクに行ったはずでは――。


「そしてこの者が私の娘です」


 ダーミッシュの隣でシモンが小さく頭を下げた。


「ふっ」


 公爵が噴出し、それは次第に大きくなる。狂ったかのように大声で笑った。確かに自分は道化だ。

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