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愚者達の戦記  作者: 六三
皇国編
153/443

第64話:偶発

 ドゥムヤータ王国とロタ王国。両王国の戦いが始まり、それがドゥムヤータの勝利で終わる間にも他の国々の時が止まっていた訳ではない。人生の砂時計の砂は皆平等に流れ続ける。だがその質は平等ではなかった。


 ある者は無為に過ごし文字通り唯の砂を堆積させ、ある者は価値ある時間を過ごし砂金を積み上げる。宝石の粒で満たす者も居る。砂から始まり宝石へと層を成す者も居れば、宝石を砂へと変えてしまう者も居る。


 リンブルク王国公爵シュバルツベルクは、ドゥムヤータとロタとの戦いの最中にも精力的に動き、その間の砂時計の砂を黄金に近い物とするに成功した。無論、そのまま金となるか、砂に成り果てるかは今後の動き次第である。


 リンブルクを分かつベルトラム派と反ベルトラム派の派閥工作は更に進み、ほぼ色分けは済んだ。いまだどの色にも染まらぬのは、信用出来ぬと両勢力から声をかけられなかった者達だ。


 反ベルトラム派の盟主たるシュバルツベルク公爵はその勢力を大きく伸ばしたが、ベルトラムの動きは鈍かった。元々リンブルク内の勢力比では3対1でベルトラム派を上回っていたが、その差は更に開いたのだ。現在の勢力比は5対1。反ベルトラム派の圧勝である。


 シュバルツベルク公爵は、シモンを通じリンブルク王ウルリヒとも連絡を取り挙兵の準備を進めている。だが、これがなかなか難しい。リンブルク内では優勢だが、ゴルシュタットまで含めれば戦力で大きく劣る。不意を突かねば勝算は無く、しかもただ勝つだけではなくゴルシュタット軍に大打撃を与える必要があった。国内からゴルシュタット軍を追い出してもすぐに再侵攻されては意味がないのだ。


 とはいえ常時軍勢を待機させていれば容易に事は露見する。ゴルシュタット軍に大打撃を与えられる機会を探り、それに合わせて準備しなくてはならない。その機会がなかなか巡って来ないのだ。


 勢力では圧倒的になった反ベルトラム派だが、雌伏の時を過ごした。そして、巨大になり過ぎた勢力は細部にまで目が行き渡らなくなるのも道理である。


 最近反ベルトラム派に参加した若い貴族達が、その中でも首領格と目されるマンフレート・ゲーゲンバウアー伯爵の屋敷に集まっていた。公式にはゲーゲンバウアー伯爵と記される彼だが、社交界ではもっぱらマンフレート伯爵と呼ばれる。彼の父は現役の公爵家の当主でゲーゲンバウアー公爵と名乗る。数多くの領地を持つ父から伯爵領を譲り受けた息子のマンフレートが伯爵位を得たのだ。現在は伯爵だが、将来の公爵位と広大な領地が約束されており取り巻きも多い。


 本来、秘密裏の集まりは外に漏らさぬ配慮が必要なのだが、日々取り巻きに囲まれ過ごす若者の傲慢さゆえの無警戒で、彼らの間を酒を運ぶ侍女が行きかい、さながら宴会の有様だ。


「マンフレート伯爵が反ベルトラム派に立った今、必ずやリンブルク王国の再建はなりましょう」

 男爵の父を持つ今は無爵位の青年貴族コンツが煽った。将来マンフレート伯爵が公爵位を継いだあかつきには、自分が空いた伯爵領を譲り受けられれば、いや、爵位だけでも貰えればと、主人に忠実な犬すら真似が出来ぬほど尻尾を振っている。


「ベルトラムの背後、ゴルシュタットに大軍があろうとも、このリンブルク国内では我らの勢力が圧倒しております。それも皆マンフレート伯爵が反ベルトラム派に立ったからこそ」

 デリウス子爵も負けずに続く。彼の父もまだ現役で更に息子に名乗らせる爵位も有していたが、それでもマンフレート伯爵に取り入って損は無い。そしてこの2人だけではなく多くの若い貴族達からの伯爵への追従は続くのだった。


 もしこの場が演劇の舞台ならば、彼らの役名は差し詰め主人公の取り巻きA、B、Cだ。観客達からは滑稽な奴らよと嘲笑され名前すら気にされない。そして彼らの中の幾人かはそれを自覚していた。だが、それがどうした。


 人の行いを笑うだけで自身は何もしない利口ぶる者達よりも、ずっと有意義に時の砂を輝かせている。武に秀でた者は武で出世を目指す。知に優れた者は知で高位に就く。しかし自分は武も無ければ知も持たない。ならば将来を諦めろというのか。諦めるものか。たとえ他の者から滑稽と笑われようと、これが自分の戦いなのだ。笑う者は、精々人を馬鹿にして無為に人生を過ごし老いていけばよいのだ。


 彼らの人生を賭けた迫真の追従にマンフレート伯爵の心が浮つく。20歳を過ぎたばかりの若造であり、取り巻きには年上も多い。こんな環境ではどんなに素質ある者でもその素質を腐らせる。マンフレート伯爵が反ベルトラム派に付いたといっても正しくは父であるゲーゲンバウアー公爵が参加し、息子の伯爵は言わばおまけである。だが、彼らは意図的にその事実を無視した。


「当たり前だ。我がゲーゲンバウアー家が立ち上がったからには、ベルトラムなどに好きにはさせぬ」

 マンフレート伯爵自身もまるで自分が公爵家当主かのような態度だ。取り巻き達が大げさに感嘆の声を上げる。


「ゴルシュタット軍は強大だが、王都に居るのはその極一部。他は国内の要所を押さえる為に派兵されているのだ。我々反ベルトラム派が総力を上げればベルトラムを倒すのはそう難しくは無い。問題は残るゴルシュタット軍だ。ベルトラム殺害を口実に攻められては、リンブルクはその名すら消えうせ真にゴルシュタットに併呑されるだろう」

「なるほど。さすがはマンフレート伯爵。見事なご見識です」


 取り巻き達は大きく頷き、争って褒め称える。ゴルシュタットがリンブルクに軍勢を置いている根拠は、デル・レイからの侵略から守る為。ゆえにリンブルクが大人しくしたがっている間は完全には潰せないのだ。


 もっともマンフレート伯爵の言葉は、理屈の上では正しいが、実は父に伴って参加した反ベルトラム派の会合で聞いた話の盗用である。だが伯爵にその意識は無い。書物で読んだ知識を己の知識として人に語るように、耳にした瞬間それは自らの見識となったのだ。無論、将来都合が悪くなれば、耳にしただけの他人の意見に格下げされる。


「リンブルクは今半国をデル・レイに奪われ、残りをゴルシュタットに支配されるのが現状。だが、病で手足が腐れば、生きる為にはその手足を切り落とさねばなるまい。いかに惜しくともな」

「と、申しますと?」


「腹立たしいが、我らから領土を奪ったデル・レイのアルベルド王は奪った領土は元々デル・レイの物であり取り返しただけと主張した挙句、ランリエルのケルディラ侵攻には異を唱え賢王とも聖王とも呼ばれているとか。ならば、それを逆手に取るのだ」

「逆手ですと?」

 取り巻き達は、面倒だと思いながらも伯爵の言葉に一々相槌を打ち興味津々の表情を苦労して作る。


「デル・レイに奪われた領土は諦め、むしろデル・レイを我が国の後ろ盾とするのだ。奪われた領土をデル・レイの物と認めた事になるが、このままでは滅亡を待つのみ! 半国でも独立を果たせるならばそれが最善の道であろう!」


 どうだこの策は! とマンフレート伯爵は自信に満ちた顔を皆に向けた。アルベルド王はケルディラに救援の兵を送り賢王の名声を得た。ならば、リンブルクへの救援も断らぬはず。半国の権利を放棄してまでの救援依頼なのだ。賢王の名を保ちたいならばなおさら断れぬ。


 無論、この策も反ベルトラム派の会合で聞いたものだ。そしてその後マンフレート伯爵は会合が退屈だと眠りこけ話の先を聞いてはいなかった。


「なるほど! それは名案に御座います。早速反ベルトラム派の会合にてご進言致してはよろしいかと」

「さよう。マンフレート伯爵の智謀に、皆も目を見張るでしょう」


 取り巻き達の中にも知恵のある者はいる。彼らは褒め称えながらも巧みに伯爵が暴走しないように抑えていた。とにかく会合の場で話させれば、盟主のシュバルツベルク公爵らが止めてくれる。実行するにはあまりにも馬鹿げた策である。


 ベルトラムはデル・レイに領土を奪われた者達を相手にしておらず、領土を保っている者達ばかりを集めている。自然、領土を奪われた者達は反ベルトラム派に流れた。その者達は持てるだけの財産をもって逃れ、家臣達と共に領土奪還を夢見て親類の貴族の屋敷に身を寄せているのだ。


 反ベルトラム派と言っても最終目的はリンブルク王国の完全復活であり、デル・レイに奪われた領土を放棄してなどと言えば内部崩壊を起こす。反ベルトラム派にとって余りにもありえぬ策である。


 伯爵は夢の世界に漂っていたので聞いてなかったが、会合でこの案の発言者は寄ってたかって反対され大いに面目を失い、公爵の取り成しが無ければ首をくくっていたかもしれないほどだったのだ。


 そしてマンフレートも、他者が’自分と同じ策’を先に会合で発言したのは分かっている。あくまで仲間内でいい顔をしたいだけであり、本気で提案などする積もりはない。


 その後もマンフレート伯爵の独演と取り巻きの太鼓持ちは続き、第三者から見ればまったく意味の無い、だが、取り巻き達に取っては伯爵を煽てて心象を良くする有意義な宴会は朝まで行われたのだった。


 白み始めた空の下を、伯爵の屋敷からぞろぞろと馬車が出て行く。その中の1台に3人の若い貴族の姿があった。将来の大貴族の取り巻きに選ばれるだけあって馬車の1台も所有せぬ貧乏貴族ではないが、彼らは次男、三男達であり今日はそれぞれ父や長男が馬車を使用し3人で1台の馬車しか用意出来なかったのだ。その惨めさに彼らの表情は暗い。


「カウフマン兄弟などもう十分ではないか。伯爵に取り入ってこれ以上何を望む……」

 クリーゼルが拳を強く握り締めた。父は子爵であり他の爵位は持っておらず、それは兄が継ぐのだ。このままでは生涯無爵位の冷や飯食いである。


 取り巻き達の中でも伯爵の親友(という名の最上位の取り巻き)と呼ばれるカウフマン兄弟などは、今日の宴会でもそれぞれの馬車で来ていた。兄は子爵位、弟は男爵位を持ち、兄が父の伯爵位を継げば、弟が子爵に繰り上がる。無爵位の彼とは雲泥の差だ。


 将来継ぐ爵位も領地も無い彼らは、大貴族に尻尾を振り気に入られて引き立てて貰わなくてはならない。だが、取り巻き達の中ですら純然たる格差があった。


「噂では、弟の男爵殿はコンスタンツェ嬢との結婚を伯爵に取り入って貰うと食い下がっていると聞く」

「馬鹿な! コンスタンツェ嬢と結婚だと! どこまで強欲な奴め! 男爵だけでは足りぬというのか!」

 子爵の父と2人の兄を持つドゥンケルがうんざりしたように言い、クリーゼルが再度叫んだ。怒りのあまり眼球に血管が浮かび上がる。


 コンスタンツェ嬢は、エーベルヴァイン子爵の長女だ。更に言えばエーベルヴァイン子爵に息子は居ない。コンスタンツェ嬢の夫が子爵家の養子となり、爵位と領地を継ぐ事になるだろ。


 それは爵位を継げぬ貴族の次男坊以下の者達にとって、コンスタンツェ嬢の腰周りの円周が胸囲と同じであると言う問題を帳消しにするに十分な魅力だった。もっとも噂では、コンスタンツェ嬢は元々は痩せておりすらりとした美しい容姿だったのだが、爵位と領地狙いの男達の求婚に嫌気がさし、あえて暴飲暴食を重ねて自ら太ったとも言われる。


 その噂を信じた者達の中には、結婚したあかつきには痩せさせて美しい容姿を取り戻させようと考える者も居るが、実際にコンスタンツェ嬢の痩せていた頃の姿を見た者は居らず、コンスタンツェ嬢が自分で流した噂なのではとの意見もある。だが、噂の真偽がどうであれ馬車に相乗りする3人にとって、コンスタンツェ嬢が彼らの幸運の女神である事に変わりない。


「やるか……」


 精悍な顔でヴィルフェルトが呟いた。この男爵家次男は23歳と彼らの中では最年少だが、寡黙で落ち着いた雰囲気を持ち一見3人の中では最年長者にも見える。他の2人の髪色が茶色で彼は黒髪なのもそう見える要因の一つかも知れない。


「やるって何をだ?」

「まさか、コンスタンツェ嬢をさらおうと言うのではなかろうな? それは貴族の振る舞いではないぞ」


 年長の2人は戸惑った。カウフマン兄弟への怒りはあるが、さりとてコンスタンツェ嬢を誘拐してまで手に入れようとは考えない。そもそも、今までにもコンスタンツェ嬢を力ずくで手に入れようとした者が居たが、全て庭に放たれた猟犬によって大怪我を負ったという。


 その年長者達のお門違いの忠告に、ヴィルフェルトは苛立ったように再度呟いた。


「ベルトラムをだ」


 その擦れた声に年長者達は戸惑い、顔を見合わせた。


「お前マンフレート伯爵の話を聞いていなかったのか? 無計画にベルトラムだけを倒しては状況が悪くなるだけと、伯爵は仰っていたではないか」

「そうだ。ベルトラムを倒したところで何の手柄にもならないんだぞ。それどころか、リンブルクは滅亡だ」


 いつもは冷静な年少の友人に2人は言い聞かせたが、ヴィルフェルトにとっては分かりきった話だ。分かりきった忠告に更に苛立ち吐き捨てた。

「知るか」

 と、突き放す。


「俺には叔父が居る。何をするでもない。父に金をせびりに来るだけの男だ。祖父から僅かに分け与えられた財産を早々に食い潰した。俺は叔父が嫌いだった。型遅れのほつれた礼服で舞踏会に出席してはただ飯にありついて食いつないでいる男だ。屑のような男だ」


 肘掛を掴むヴィルフェルトの腕がブルブルと震えている。


「10歳の時だ。叔父がまた父に金をせびりに来た。屋敷の2階からそれを見ていたら叔父が俺の視線に気付いて、俺に媚び始めた。お前からも兄さんに言ってくれとな。10歳の子供にだ! 10歳の子供に媚を売ってまで金をせびろうとしたのだ! 俺は、叔父上は貴族としての誇りは無いのですかと断った。叔父は怒るでもなく、お前にも今に分かると言った」


 ヴィルフェルトはまだ震えていた。年長の2人は、それが情けない叔父への怒りからと思っていたが、そうではなかった。その震えは恐怖が引き起こしていた。


「分かる訳がないと。あんな情けない男の気持ちなど分かるものかと思っていた。だが、今は分かる。あの時の叔父の姿は将来の俺だ。このままでは……俺はああなる」


「俺にも……叔父が居る。似たようなもんだ」

 ドゥンケルが言った。クリーゼルは無言だった。彼には叔父は居ないが、それでもたまに遠い親戚とやらが金をせびりに来ていた。


 貴族として生活出来るだけの財産が無いのなら働けばいい。誰もがそう考える。いや、ヴィルフェルトの叔父はそうしたのだ。しかし、長年商売をしてきた商人を相手にど素人の貴族がどうやって立ち向かえる。


 始めは危険を考え小額ずつを分散して投資していた。その1つが他の数倍の利益を上げ始めた。だが、他の投資を解約しそれに全てつぎ込んだ途端に事業が失敗したのだ。


「俺の金を返してくれ!」

 訴える叔父に商人は道理を弁えぬ幼児に言い聞かせるように、笑みさえ浮かべて言った。

「利益が出れば受け取り、損失が出れば補填して貰える。そんな投資があるならば私だってしたいですよ。それに私は貴方に増資しろと強要した事はありません。貴方がどうしてもと仰ったのではないですか」


 叔父は唇を噛んだ。確かにそうだ。商人は叔父が増資したいという度に、損をする事も有るから止めておけと言った。だが反面、その取引で自分がどれだけ利益を上げたかを叔父に囁き続けた。莫大な利益を上げている者を目の前に、自分は僅かな配当しか貰えない。まるで、貰える筈の金を貰えず損をしているかのような焦燥に苛まれ、商人の足元に縋り付く事までしたのだ。


「分かりました。そこまで言うならば良いでしょう。しかしそうなるとある程度まとまった金額を用意して頂かないと、こちらも投資先に話が出来ません。何せ、投資したいという者は後を絶たないのですからな」


 叔父はもっともだと頷き、そして全てを失ったのである。


 商売でも駄目、今更農民になどなれない。中途半端に培われた貴族としての誇りがそれを阻む。そして事実、親類縁者に頭を下げ金をせびって生きれば、農民よりはましな暮らしは出来るのだ。だが、それで本当に生きていると言えるのか。


「ベルトラムを倒し、それでゴルシュタットが混乱してリンブルクから手を引くかも知れぬでは無いか。そうなれば俺達3人はリンブルクを救った英雄だ。コンスタンツェ嬢のお父上から是非にと向こうから言ってくる」

 それどころか、名誉欲の強い父は理由をつけて兄を廃嫡し、救国の英雄たる自分を跡取りとするだろう。だが、そこまでの野心を友人達に明かしはしない。


「それはそうかも知れぬが、ゴルシュタットが手を引かず攻めて来たらどうするんだ? 英雄どころか、俺達は亡国を招いた愚か者だぞ」


「知った事か」

 ヴィルフェルトが先ほどと同じ言葉を繰り返した。やはり苛立った口調だ。


「もし、ゴルシュタットが手を引かずリンブルクに攻め寄せれば、俺達はこの国から逃げ出せばいい。どうせこのままでは先が見えている。だったら、一か八かの賭けをやってやる」


「しかし、そうなれば俺達が真っ先に捕らえられるじゃないか」

「そうだ。知った事かで済まされる問題じゃない」

「ベルトラムを殺っても、すぐには俺達がやったと名乗り出なければいい。ゴルシュタットが手を引いたと確認してから名乗り出るんだ」


 ヴィルフェルトの強い口調に、2人は最後顔を見合わせた。心がある方向に動き始めた。このままでは自分達の将来は、ヴィルフェルトの叔父と同じだ。将来を切り開く為にはどこかで博打を打つ必要があった。


 まず始めにドゥンケルが頷き、続いてクリーゼルも頷いた。それを見て取ってヴィルフェルトが微笑み頷く。今日初めて笑みを浮かべた。


「やるぞ」

「ああ」

「やろう!」


 こうして高度な政治的判断、見識によって微妙な均衡を保っていたリンブルク王国の権力闘争は、若者達の暴発によって大きく動こうとしていた。偶然を操り策略とするベルトラムすら、この時それを予測出来ては居なかった。

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