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20/22

諦めない心が大切


「白雲! 準決勝進出、おめでとう!」

「ありがとうございます」


部長が頭をわしゃわしゃと撫でてくる。

その手はちょっと強引だけど、嬉しい。


「スコアもすごいね。全部10点未満に抑えてる!」


副部長も少し興奮気味に声を上げた。

結果だけ見れば順調そのものだけど、気は抜けない。


 


部の他のメンバーの状況はというと──


遥ちゃんは残念ながら1回戦で敗退。

でも、それでも彼女は笑っていた。


「やっぱり強かったなー。でも、課題がたくさん見つかったから出てよかった!」


その笑顔は、眩しいくらいまっすぐで、ちょっとだけ羨ましかった。

だけど、彼女はふと寂しそうに呟いた。


「けど……やっぱ悔しいな」


──その悔しさが、きっと次に繋がる。

負けることは悪じゃない。負けを無駄にしなければ、それでいい。


「大丈夫だよ。次こそ勝とう!」


 


副部長は2回戦まで進んだけど、かなりの強敵に当たって敗退。


「悔しいけど……1回勝てたのが嬉しかった!」


と満足そうに笑っていた。


 


今、ここまで勝ち残っているのは、私と──部長、そして楓の3人だけ。


部長はさすがの安定感。技術も体力も、ほとんど他を寄せつけない。

楓ちゃんも、いつも通り淡々としたプレーで、危なげなく勝ち進んでいる。


「このままいくと……準決勝で京子と楓ちゃんが当たっちゃうね」


副部長のその一言で、空気がピタリと止まった。

いや、正確には──部長と楓ちゃん以外の私たち3人が凍りついた。


当の本人たちは、というと……


メラメラと火花を散らしながら、無言で睨み合っていた。


やる気満々じゃん……


顔に「絶対に負けない」の文字が浮かんでる。


 


男子の方はというと──

意外にも、あの五十嵐先輩がすでに敗退していた。

残っている部員はほとんどおらず、応援モードに入っている様子。


「唯ちゃん、呼ばれたよ」


遥ちゃんが声をかける。


アナウンスが響いた。





 

──次の相手は、飯島咲良。


その名前を聞いた瞬間、胸の奥が少しだけざわついた。


『よろしくお願いします』


軽く一礼してラケットを握り直す。


飯島咲良。

 

インターハイ2回戦で戦った相手だ。


あのときの試合は、今でもよく覚えてる。

強かった。冷静で、隙がなくて、何より自信に満ちていた。


勝てるかは──正直、わからない


でも。


ここまで来て、負けるわけにはいかない。

ここで終わるつもりも、ない。


シャトルが空を裂いて飛ぶ。


打ち返すたびに、腕が痺れた。


速い……


飯島咲良のプレーは、やはりインターハイ選手のそれだった。

一つひとつのショットが、鋭くて正確で、どこにも甘さがない。


――だけど、負けてない。


 


最初の数点は圧倒された。


相手の鋭いスマッシュに足がすくみ、守りに入ってしまった自分がいた。


違う……このままじゃ駄目だ!


攻めなきゃ勝てない。


私は守るためにここに来たんじゃない。

勝つために、挑むために来たんだ。


 


息を吐き、ラケットを握り直す。


次の瞬間、クロスに鋭く切り込んだ。

相手の意表をつくドロップショット――決まった。


「ナイスショット!」


観客席のどこかから聞こえた声が、背中を押す。


そこから流れが少しずつ変わってきた。


飯島の表情が、少しだけ険しくなる。

でも怖くはなかった。むしろ燃えた。


──────────


 

──スコアは17対18。


試合は佳境を迎えていた。


息が切れる。足も重い。

それでも、諦めるという選択肢だけはどこにもなかった。


飯島のスマッシュがネット際に落ちた瞬間、反射的に飛び込む。


ギリギリで拾ったシャトルが、高く上がって相手コートに落ちた。

よし!思わずガッツポーズをしてしまった。

 

18-18。ついに並んだ。


 


汗が頬をつたう。

心臓の音がうるさいくらいに響く。

こんなに緊張するのはいつぶりだろうか。


逃げた日々。バドミントンから目を背けた日々。

でももうあの時の私じゃない。


 


試合は終盤。

20対18

あれからマッチポイントまできた。

互いにミスすることなくラリーは続く。


コートの外から仲間たちの声が聞こえる。


「唯ちゃん、落ち着いて!」「あと1点!」


あと1点……!


 


飯島のスマッシュ。


それをネット際で上手くすくい上げる。


相手の戻りが遅い──今しかない。


大きく踏み込んで、クロスへ鋭く叩き込んだ。


──シャトルは、ライン際に吸い込まれるように落ちた。


 


「……ゲームセット!」


審判の声が響く


勝った……?

そっか私勝ったんだ。

勝利したことに喜びつつもまだ試合していたいという気持ちが強くある。



すると客席から遥の叫び声が聞こえた。

振り返ると部長も副部長も、笑いながら拍手している。


 


飯島が歩み寄る。


「久しぶり、やっぱ強いや!」


「飯島さんこそ……!楽しかった」


お互い言葉をかわさなくてもまたやろうという気持ちになっているのがわかった。

 

胸がいっぱいだった。

やっぱり戻ってきて良かった。

やっぱりここが私の居場所だ。

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