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12/22

練習


「白雲!ダブルス組まないかい?」


ある日、部長が団体戦に向けてダブルスの練習を提案してきた。実力のバランスも考えて、経験者3人はペアを組んで男子と試合形式の練習をすることに。


「今日は私と組もう!」

「はい!」


先輩が連れてきた相手はいつかの五十嵐先輩と、石橋くんだった。五十嵐先輩は私の顔を見るなり青ざめて、石橋くんの後ろにさっと隠れた。視線が全然合わない。

そんなに怖がらなくても……


「作戦どうする?」


部長が私に声をかけてきた。


「部長の最大の武器はスマッシュの威力とスタミナです。なのでコートを自由に動き回ってもらえれば、空いたところは私がカバーします」


自分で言っておいて、先輩にこんな指示していいのかと一瞬戸惑う。けれど、勝つためには遠慮していられない。部長はにっこりと笑って


「実は私もそう思ってたんだよ。流石白雲だな〜!」


と、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。まるでお姉ちゃんみたいなその仕草に、思わず笑ってしまう。


「ラブオール・プレー!」


審判の声で、試合が始まった。


作戦通り、部長がコートの隅から隅まで駆け回り、相手の動きをかき乱す。その隙を見て、私が前後左右のスペースを埋めてシャトルを拾う。試合は拮抗していたが、最初の中盤は11対8と私たちがリードしていた。さすがはインターハイ出場の二人。簡単には点をくれない。特にラリーが続くようになってからは、部長の呼吸も少し荒くなってきた。

いくら体力おばけの部長でもきついか。

長期戦は不利かも……


「先輩、今から私も前に出て攻めます。動き方を変えましょう。きっと相手も戸惑います」

「いいね!のった!」


それからの私たちは、攻めだけでなく守りにも転じた。ドロップ、スマッシュ、フェイント……に加え、レシーブにロブ。持てる技術を総動員して、攻守を切り替えながら相手に揺さぶりをかける。

点差は15対11。リードは広がった。

だが、そう簡単には終わらせてくれない。

今まで後ろでスマッシュを打ち続けていた石橋くんが、急に前に出てきたのだ。


「背……高っ!」


思わず漏れた言葉に、彼は少し笑った。私の視界の半分を占めるような長身。その背中にコートの奥が隠れてしまい、ボールの行方が読みにくくなる。

それに、立っているだけでプレッシャーがすごい。


「ぶ、部長ーー!」

「どうした!?」

「作戦変更、お願いします……」


毎日一緒に練習してきたからこそ、彼は私の弱点を知っていたのだろう。やられた……と思ったが、今は後悔より対処が先だ。


19対17。


あと2点──。ここからが勝負だ。


───────────


「あーーまた負けた。やっぱ白雲には勝てねーや」


試合後、座って水を飲んでいると、隣に石橋くんが腰を下ろした。五十嵐先生と部長は奥でまた睨み合って口論をしていた。


「やった。また勝てた」

「あと少しだったんだけどな」

「最後の追い上げ、すごかったよ。粘り強さがあって、正直焦った」


実際、最終スコアは21対18。勝ったものの、激しい試合だった。


「やっぱ楽しいな」


彼がポツリとつぶやく。


「わかる。てか、石橋くんの前衛めちゃくちゃ威圧感あったし。あれ絶対作戦でしょ?」

「威圧感?あー……まぁな」

「あー、やられた〜」


シャトルの音、体育館に響く応援の声。

その中でも、彼の声だけは妙に鮮明に響いてくる。まるで、自分の中に残ってしまうような。


もっと話したい。もっと知りたい。


どうして、そう思ってしまうんだろう。


「そういえば、大会の日程見た?」

「え?出てたの?」

「ああ、日程は一緒だけど、時間帯は違った」

「じゃあ応援行けるね。差し入れもいる?」

「……あると嬉しい」

石橋くんはまたそっぽを向いて言った。

「OK!期待してて!」


新人戦まで、残り──2週間。

このまま気を引き締めて頑張ろう



 

「その前に期末テストのこと……忘れてねえよな?」

「…………へ?」

 

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