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怪獣使いの弱者たち  作者: 楠本恵士
黎明の 怪獣旅団
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第五話・美の怪獣チーム【聖典ヴェーダ】

 ホシノフネは、宝石で作られたような輝く美しい惑星へと着陸した。

 サファイアやルビー。

 エメラルドやアメジスト、ダイヤモンドや翡翠などの鉱物が景観を作り出している星だった。

 アグラと一緒に、ホシノフネから降りたエアルが、絶景にタメ息を漏らして呟く。


「本当に美しい星ですね……なぜか、サンゴや真珠も地表にありますね? おや? アレは?」

 エアルの視線の先には、琥珀色や透明な結晶の中に閉じ込められた、数体の怪獣の姿があった。

 エアルの表情が強張る。

「大会出場前の【聖典ヴェーダ】に挑んで、敗北した怪獣たちでさね……死んではいないようですが」

 アグラが人間が先端に融合した尻尾を左右に振って、結晶を破壊しながら言った。


「情けねぇな……この程度の硬度結晶から出られねぇようじゃ、敗北したのは、たいした実力のヤツらじゃないな……結晶内に閉じ込めたのは【聖典ヴェーダ】のリーダーか? どんなヤツなんだ?」

「それは……あんな、顔をした怪獣です」


 エアルが見ている視線の先には、宝石の結晶山の後ろからフワフワと人間の女の生首が浮かび現れた。

 首の断面からジェット噴射の炎を噴き出して、浮かぶ女の首に続いて。

 分裂していた胴体が飛んできて、首を含む五つのパーツが合体して、美人の女巨人になった。

 最後に飛んできた天使の翼パーツが背中に合体すると、美のチーム【聖典ヴェーダ】のリーダー天使獣『チャミエル』が完成した。


 チャミエルが長い髪を掻き上げて、言った。

「はみゃ……エアル、久しぶり……本当に綺麗な飾り羽、美のチームに入りたかったら迎え入れるよ……はみゃ」

 容姿とはギャップがある、チャミエルの奇妙な語尾にアグラがコケる。

 アグラがチャミエルに質問する。

「おまえ、本当に怪獣か? 人間の姿をした巨人か? 天使か?」

「はみゃ……チャミエルは、ロボット怪獣……人間の人工皮膚をかぶって化けている……大会規定で、この姿でも大丈夫」

「そうか……ロボット怪獣だったのか、オレが知っている技のチーム【鉄火莫耶(てっかばくや)】には、サイボーグ怪獣がいたのを思い出した」


 天使獣チャミエルが、聖霊鳥エアルに言った。

「美のチームの仲間は、ホシノフネに乗るために、すぐに到着するみゃ……その間の待ち時間潰しに、軽いじゃれ合いバトルはどうかなゃ?」


「いいですね……大会規定に違反しない程度の、お遊びバトルなら……わたしも、列車にずっと乗ってきて、体が鈍っていたところです」

「それじゃあ、先制攻撃いくみゃ」

 五つのパーツに分割した、チャミエルがエアルに襲いかかる。

 エアルは羽ばたいて起こした強風竜巻で、チャミエルのパーツの動きを封じる。

「やるちゃ、それならこれでどうかな……はみゃ」

 チャミエルの口から、結晶化光線が発射され光線を受けたエアルの体が、結晶に閉じ込められる。

 結晶内に閉じ込められたエアルを見たアグラが呟く。

「おい、おい、マジかよ」


 合体して美人巨大天使の姿になったチャミエルが、エアルに近づき、腰に手を当てた屈んだ姿勢で結晶に閉じ込めたエアルを眺める。

「はみゃ……腕が落ちたかにゃ、風の厄災で二つの古代文明を滅亡させた、聖霊鳥の力はそんなもんだったかみゃ」


 結晶に亀裂が走り、チャミエルが飛び下がる。

 結晶を砕いて飛び出してきたエアルは、空中を旋回しながら黄金の鱗粉のようなモノを撒き散らした。

 チャミエルが、結晶の中に閉じ込めていた敗北怪獣たちの、結晶が溶けて。

 怪獣たちが復活する──復活した怪獣たちは、チャミエルの姿に怯えて逃げていった。

「はみゃ……なんだ、復活して向かってこないのか……期待外れ、まっ時間潰しにはなったから、いいか」


 チャミエルが、頭の後ろで手を組んでホシノフネを眺めていると、次々と美のチーム【聖典ヴェーダ】の美しいメス怪獣たちが到着した。


 チャミエルが仲間の美獣に向って言った。

「やっと、到着したみゃ……それじゃあエアル、続きはバトル大会で」

 そう言うと、美のチーム【聖典ヴェーダ】は、ホシノフネの客車に乗り込んで。

 ホシノフネは宝石惑星を離れた。

創作裏話


美のチームリーダー『チャミエル』のネーミングは決まるまで、かなり難航しました。

候補としてあったのは、インドの聖典リグ・ヴェーダの中に登場する、五人の夫を持つ美女「ドウラバディ」


〔ドウラバディは語呂が悪すぎて使えなかったです……チャミエルが五つに分離するという設定は、五人の夫の所有妻というところからの発想です〕


で、美の天使「チャミュエル」にしたんですけれど。

言いにくかったので少し変えて「チャミエル」にしました

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