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怪獣使いの弱者たち  作者: 楠本恵士
黎明の 怪獣旅団
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第三話・暗黒暴食獣『グラトニー』を協力して排除せよ!

 着陸したホシノフネの怪獣客車のドアが開いて、中から降りてきたのは、大会優勝候補のチームの一つ。


 宇宙人や、地底宇宙人や、海底宇宙人や、異次元宇宙人で構成された〔知のチーム〕

【十三の秘宝】


 片方の肩に裸の人間の女性が、うつ伏せで埋め込まれたような姿の巨大宇宙人、

 十三の秘宝のリーダー『ディス・ノミア』がアグラの方に近づいてきて冷ややかな声で言った。

「おや、どこかで見た顔だと思ったら……乱暴者のアグラじゃないですか、どこのチームからも弾かれて……『黎明の怪獣旅団』に拾ってもらったのですか」

 ディス・ノミヤは、エアルの方を見て言った。

「あなたも、物好きですね……アグラをチームの迎え入れるとは、もっともチームメンバーの全員に、怪獣名の名乗りを認めている──変わり者のあなたのチームには、お似合いですね」


 怪獣バトル大会に参加するチームは、黎明(れいめい)の怪獣旅団(りよだん)を除いて。

 怪獣名を示せるのは実力を持ったリーダー怪獣のみで、他のメンバーは自分の怪獣名を名乗るコトは認められていない。

 ディス・ノミアが言った。

「わたしはね、怪獣と宇宙人がゴチャ混ぜの扱いをされているのが気に入らないんですよ……知性的な宇宙人が、野蛮な怪獣と同等に見られているコトが不愉快です……怪獣は宇宙人に操られる存在ですよ」

 ディス・ノミアは、片方の肩に埋め込まれたような形の人間を、カサブタでも剥がすように少し引っ張り剥がして、また元の状態に戻した。


 アグラが口から、溶解液みたいな緑色の液体を垂らしながら言った。

「おっと『怪獣は宇宙人に操られる存在』だなんて聞いたから、腹が立って思わず宇宙人を溶かす、溶解液が出そうになったぜ……あぶねぇ」


 アグラの言葉を聞いたディス・ノミアが、テレポーテーションで客車近くに移動して客車に乗り込む。

「それでは、黎明の怪獣旅団の、みなさんと戦えるのを楽しみにしています……もっとも、みなさんが予選を勝ち残ればの話しですが……ふふふっ」

 十三の秘宝が乗っている客車の扉が閉じると、舌打ちで口から火花を散らしたアグラが呟く。

「チッ……いけ好かない野郎だ」

 エアルが言った。

「それでは、わたしたちもホシノフネに乗り込んで、大会が開催される惑星に向かうとしますか」

 アグラが振った尻尾で岩を砕いて言った。

「おう、オレたちが乗るのは、どんな豪華客車だ? 寝台ついているのか? 食堂車は?」


  ◆◆◆◆◆◆


 ホシノフネの家畜貨物車の中で、膝抱えで座ったアグラは、不満顔で聖霊鳥エアルを睨みつけている。

 アグラたち、黎明の怪獣旅団の周囲には牛のような角を生やして柵の中に入った二足歩行の怪獣家畜たちが、一緒に乗せられていた。

 アグラが、エアルに言った。

「なんで、家畜知能の食用怪獣と一緒の貨物車両なんだよ」

「お金が無いんです……我慢してください」


 牛の角を生やした家畜怪獣が、人懐っこそうにアグラに鼻息をかけてくる。

「鼻を近づけるな、家畜ども! 食っちまうぞ!」

 その時──ホシノフネが急停車した。

 連結されている、各列車内に女性の声でホシノフネのアナウンスが流れる。

《前方に【暗黒暴食獣『グラトニー】の群れが通過しているので、列車はグラトニーが通過するまで停車します》


 アグラが言った。

グラトニー(暴食)かよ……グラトニーの群が流れているってコトは、親グラトニーが先頭と後方にいるってコトだな……厄介なヤツに遭遇しちまったな」


 暗黒暴食獣『グラトニー』──暗黒物質生物の一種、黒い煙のような微粒の生物で知性はあまりない。

 普段は単体で宇宙空間に浮かんでいて、数日で消滅する無害な生物だが。

 時に集まって大群状態になって、大河のような移動をはじめると、栄養豊富な小惑星暴食の悪玉怪獣となって害獣扱いされる。

 さらに宇宙大河化したグラトニーは、微粒が集結してムクドリサイズに変化する。


 ホシノフネの前方を流れていくグラトニーの大河を見て、ズノウが呟く。

「グラトニーは怪獣を捕食するコトはないので安心ですが、微粒子が電子機器に付着するのは苦手です……入りこまれるとムズムズします」

 その時──列車内にアナウンスが聞こえてきた。

《怪獣バトル大会本部からの通信です……グラトニーを、ホシノフネが運行可能な程度の排除作業を【十三の秘宝】チームと【黎明の怪獣旅団】チームから、各一体列車外に出てきて排除作業をするように指示がありました》


 アナウンスを聞いたアグラが言った。

「ホシノフネが次の星に到着するために、グラトニーの大河にホシノフネが通過できるほどの、でっかい穴を開けろってコトか……おもしれ、誰が宇宙空間に出る?」

 黎明の怪獣旅団の怪獣たちは、一斉にアグラを指差した。


  ◇◇◇◇◇◇


 列車からアグラが宇宙空間に出ると、腕組みをしたディス・ノミアが頭を下にして浮かんでいた。

 ディス・ノミアが言った。

「やはり、アグラが出てきましたか……不本意ですが、ここは協力してグラトニーを排除しましょう……次の怪獣チームが待つ惑星に、ホシノフネが到着しないと困りますから」

「てめぇ、頭を上にしろよ」

「宇宙空間では、上下左右は関係ありません……あなたの方こそ、向きを変えなさい」

「やなこった……このまま、グラトニーの一部を排除するぜ……『口から何か出る攻撃』!」

 アグラの開いた口から、二重螺旋(らせん)の七色光線が発射されると。


 ディス・ノミアは慌てて、手からアグラの光線を少し相殺するディス光線を、アグラの光線と融合させるように発射する。

 光線はグラトニーの大河に、ホシノフネが通過するのに十分な大きさの穴を開ける。

「反物質を含んだ光線で、この宇宙を消滅させるつもりですか! アグラ!」

「ワリィ……つい、ランダムに変なのが出ちまった」


 アグラの『口から何か出る攻撃』は、その時の状態でランダムに何かがでてくる。


 アグラが開けたグラトニーの穴を、ホシノフネが通過して──グラトニーの穴がふさがったのは、数日後だった。

ディス・ノミアのCVイメージは、声優の中尾隆聖〔なかお りゅうせい〕さん《フリーザの声》の声をイメージしながら書きました。

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