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怪獣使いの弱者たち  作者: 楠本恵士
黎明の 怪獣旅団
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第二話・黎明の怪獣旅団

 アグラが、黎明の怪獣旅団の仲間が待機している。

 オッ火山の(ふもと)に到着すると、そこにいた怪獣の数体が少し嫌そうな顔でアグラを見た。


 インテリ眼鏡をかけた、女性の上半身裸体がカプセル状のケースの中に入っている。

 会計経理電脳獣『ズノウ』が、機械体の一部を流れるイルミネーションのように点滅させて言った。

「本当に仲間に加えるのですか? 聖霊鳥エアル、その暴れ者を」

 エアルがズノウの質問に答える。

「アグラは、テストに合格しました……性格に多少の問題はありますけれど、パートナー融合した人間が制御してくれるでしょう」


 アグラの尻尾の先端に上半身が融合した男性が、自分のコトを言われていると理解した。

 アグラが、チラッと尻尾の先端を見て言った。

「なあ、本当に大会に登録出場するには、この邪魔なオプション必要か? 本体のオレだけじゃダメなのか? 岩に擦りつけて、このニンゲンを無理やり剥がすってのは」

「ダメです……それが開催される〝怪獣バトル大会〟の規定ですから」

 エアルの言葉に炎の舌打ちをするアグラ。

「チッ、面倒くせェな」


 アグラは、ズノウの他にアグラの旅団入りを快く思っていなさそうな、雪男とネコが合成されたような姿の白毛のモフモフ冷凍獣『ニャーラ』に向って片手を挙げる。

「よっ、ニャーラ、元気だったか……相変わらず、寒そうな顔をしているな」

 ニャーラが胸の長毛を掻き分けると、中から不機嫌そうなパートナー少女が顔を覗かせる。

 爽やかな男性声優の声でニャーラが言った。

「あまり近づくな、おまえはすぐに火を吐いて熱い……それにオレは、オスだ! その愛玩動物を見るような目はやめろ!」

 ニャーラは、外見がメスのモフモフ獣に見られるのを極度に嫌う。

「なんで、オレのパートナーがシンクロしたからって人間の少女なのか理解に苦しむ」


 アグラがニャーラを、からかうような口調で言った。

「おまえには少女がお似合いだ……冷凍怪獣」

「なんだと、ここで決着つけるか! 暴魂獣!」

 二体の間に仲裁(ちゅうさい)に入ったのは、サンゴとフジツボが合成されたような外見をした、六次元超獣『ヘキサゴン』だった。


 ヘキサゴンの額にあたる部分に埋もれた、男性老人の上半面の目が柔らかく弧を描く。

「まあまあ、お二人とも仲間同士で争ってもしかたがあるまい……大会は近いのだからのぅ」

 ヘキサゴンの肩には、服を着た人間の少女が特殊なロープで体を縛られて、プカプカと空中に浮かんでいた。

 少女の剥き出しになった腹部には、灰色の風船のようなキノコ胞子生物が脈動している。

 大食小型ペット獣『バル』……本体は腹部の膨らんだ胞子の方で、浮かぶ人間はバルのオプションだった。

 バルは、あらゆるエネルギーを吸収して巨大化していく、風船怪獣だった。


 そして、怪獣たちの足元には執事姿で雑用を担当する、一人のコンシェルジュ少年が立っていた。

 少年の名前は『ナマエハ マダナイ』──マダナイはエアルがどこからか、クチバシで(くわ)えて連れてきた無口な少年だった。


 エアルが言った。

「これで大会参加メンバーが揃いましたね……他の怪獣チームも着々と準備を進めています」

 エアルが見ている視線先の空には、霧雲の中から汽笛のような声を発しながら降下してくる。

 大会参加怪獣チームの運搬専用貨物獣『ホシノフネ』の姿があった。

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