レイモンド王子
読んでいただきありがとうございます。ラブラブは次回になりそうです。
傷心のリリエルの元へ従兄弟の第三王子レイモンドがやって来るようになった。
「リリエル、久しぶりだね。婚約したと聞いたから会うのを我慢していたけどすっかり綺麗な令嬢になったね」
「レイモンド様も素敵な王子様になったわ。絵本の中の王子様がそのまま大人になったみたい」
「昔は王宮の庭を走り回っていたのに今ではレディになってお淑やかなお姫様だ」
「からかわないで、私の噂を知っているのでしょう。傷物になってしまったわ」
「リリエルは傷物ではない、綺麗なままだ。相手が酷すぎた」
「世間的には傷物だわ。でも負けないわ。これから女伯爵になって生きていかなくてはならないもの」
「その調子だ。でも不思議なんだけど相手の彼女って一年もずっと視線を受けていたのに、どうして侯爵家に抗議しなかったんだろう。いくら格下だからといって婚約者がいるわけだし、我慢しなくても良いと思うんだ。気持ちが悪いと思うのが普通だと思うんだよね」
「私もそう思ったんだけど気にならないくらい婚約者様のことがお好きだったのかなと考え直したの」
「本当に綺麗なままだね君は。決めたよ、リリエル結婚してくれないかな」
「婚約破棄したばかりで心の準備が整っていないわ。レイモンド様少し待ってくださる?」
「待つよ、心の整理がつくまで。でも攻めさせてもらうから覚悟しておいて」
「レイモンド様のような素敵な方がどうして今迄婚約者もいらっしゃらなかったのか不思議なんだけど、お伺いしてもいいかしら」
「好きな人がいたんだけど婚約者がいてね、心に蓋をしていた。三番目だしこのまま外交官になって国の役に立とうかなと考えていた」
リリエルはレイモンドに好きな人がいることを聞いて心に鉛を飲み込んだような気持ちになった。まただ、いつか分からないが裏切りをまた目にしなくてはいけなくなる。涙をぐっと我慢してリリエルはレイモンドに告げた。
「レイモンド殿下、申し訳ありませんがこのお話聞かなかったことにしてくださいませ」
「リリエルごめん。少し意地悪をしてしまった。好きな人は君だ。婚約者がいたから我慢していた。君が婚約をした日に僕は外国へ行っていた。帰って婚約を申し込もうと思っていたのに、君は他の奴と婚約をしてしまっていた。その時の絶望と僕以外を選んだ君に少し意地悪をしたくなった。ごめんね、泣かせる気はなかった」
「私ですか?本当に?他の人ではなくてわ・た・し・なのですか」
「君しかいらないよ、リリエル。やっと告白するチャンスを貰えたんだ。逃がさないから、覚悟して」
レイモンド殿下がハンカチで優しく涙を拭いた。私は泣いていたのかしらとリリエルはやっと気がついた。
「リリエルがまた誰かのものになったら嫌だから返事が欲しい。泣くくらいだから僕のことは嫌いじゃないよね」
「元婚約者は他の女性を美術品の様に綺麗で目が離せなかったと言いました。一年間ずっと目で追ってたんです。私には恋をしているようにしか見えませんでした。
私とは正反対の綺麗な方でしたのでああいう方がお好みなら関心がなくても仕方がないかと諦めがついたのです。レイモンド様にも想う方がいてまた捨てられてしまうかと思ったら苦しくなってしまいました」
「ごめんね、許して。君の心を傷つけてしまった。僕は君しか見ない。一生君だけを愛すると誓うよ。心配なら君の心が決まったら精霊の契約をかわそう、破ったら死んでしまうというものだ。それなら信じてくれる?」
どうにか頷きポロポロと涙をこぼし泣き続けるリリエルを抱きしめて髪を撫でながら、ハロルドとローズマリーのことを調べてみようと思ったレイモンドだった。ローズマリーという女は怪しすぎる。早速王家の諜報を使って調べさせた。
リリエルはプロポーズを受けたので準王族になり護衛が付けられることになった。公爵令嬢の時も付いていたがそれ以上になった。影も付くようになった。リリエルには秘密にしている。怖がらせて逃がすわけにはいかない。
公爵令嬢だったので王子妃教育は簡単に終わった。レイモンドは婚姻を結ぶ前に公爵位を貰いリリエルと結婚するつもりだ。
諜報の報告によるとハロルドは騎士団で真面目に働いていた。
ローズマリーの方は怪しげな薬で見目のいい高位貴族令息の視線を集めて悦に浸るという変わった性癖が明らかになった。ハンカチに薬を隠し目当ての男が飲むだろうワインに夜会などで近づいた時に仕込んでいた。かなり強力で一月は持つらしい。媚薬ではないので効果が長持ちするのだろうと薬学研究所から報告が上がってきた。
数えきれないカップルが破綻していた。
薬を押さえローズマリーを逮捕し、伯爵家を抜打ちで捜査した。結果違法薬物を大量に所持していたので伯爵家は取り潰した。
精神に作用する薬を使っていたローズマリーと伯爵は処刑した。伯爵家の領地はかなり荒れていて領民は貧しさに喘いでいた。
早急に手を打つ必要があり食糧支援を王家から行った。管理者を王家から送り平民の暮らしが立ち行くように手を打った。
忙しく日々が過ぎリリエルとの結婚式まで半年になっていた。プロポーズしてからリリエルと街歩きやレストランでの食事、オペラの観劇などを時間を見つけて楽しんだ。
街歩きの時は恋人繋ぎで歩いた。真っ赤になったリリエルが可愛らしすぎて帰したくなかったが鋼の意志で我慢をした。もう少しで結婚をするのだし手を出さなければ良いのではと悪魔の囁きが聞こえたが我慢した。
前から綺麗だったがますます綺麗になっていく婚約者に心は蕩けていた。
なのに自己肯定感が低すぎるのだ、リリエルは。毎日可愛いよと囁いているのに自分は地味だと思っている。
元婚約者のせいか、奴は見目だけは良かったらしいから。
騎士団に行って叩き潰してやろうと思ったが、街で暴漢に襲われることが多いらしい。
公爵家の護衛にでもやられているんだろう。公爵家に行ったときに忠誠心の強そうな護衛がいたから奴かもしれない。婚姻をしたらリリエルの専属として付けようと考えた。女性の護衛もリリエルのために欲しいところだ。
レイモンドは考えを巡らせた。
出ました、王道の幼馴染の王子様です。
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誤字報告ありがとうございます。とても感謝しています。