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7.

 颯希の言葉に、芹香は目が点になり変な声を出してしまった。


「学校から帰って来た時、なんだか表情がおかしかったのですが、夕飯が終わった辺りで芹香ちゃんを呼ぶように言ってきたのですよ。自分で呼んだらいいのではないのですか?と言ったのですが、私の名前で呼んでくれって言われたので、それで………」


「………じゃあ、透が私を呼んだってこと?」


「はい。それで、来たら部屋に来るように言ってくれって言われています」


  

 颯希の言葉に透の部屋に向かう。その間色々と考えを巡らせた。怒らせるようなことをしたのか?何か気に食わないことをしてしまったのか?でも、最近は特に関わっていないから怒らせるようなことはしていないはず………。そんなことを考えながら透の部屋の前に行き、ドアをノックする。



 ――――こんこんこん………。



 ドアをノックすると、透が顔を出した。


「………とりあえず、入れよ」


 そう言って、芹香を部屋に促す。そして、部屋の座布団が置いてある場所に芹香を座らせ、自分はベッドに腰掛けた。


「あの……、話って……?」


 芹香が恐る恐る透に聞く。どことなく雰囲気で透の機嫌が良くないことは分かる。透は小柄でも威圧感はあるから、身長は芹香の方が高くても透の威圧感には勝てないのだ。透は低い声で言う。


「……モデルにスカウトされたんだってな」


「……え?あぁ……うん……」


 芹香が「何で知っているの?」という顔をする。でも、すぐに芽衣から聞いたのではないかという事が予測されたので、頷く。


「モデル、やるのか?」


「その予定だけど……」


 透がモデルの話を賛成していないことがその雰囲気で分かる。でも、芹香はモデルの何がダメなのかが分からない。


「透は、反対……?」


 芹香が叱られている子犬のような感じで言う。透は深くため息をつくと言葉を発する。


「名刺あるんだってな。ちょっと見せてみろ」


 芽衣と同じようなセリフを言う透に芹香は名刺を見せる。透はそれを受け取り、まじまじと確認する。


「……で、話はどこまで進んでいるんだ?」


 芹香に名刺を返し、透がそう聞く。


「えっと、ここに来る前にメールがきて今度の土曜日に○○ビルの三階に昼の一時に来てくださいって。持ち物は特にありませんって書かれてた……」


 おずおずと芹香が答える。


「……そっか」


 沈黙が流れる。その沈黙を芹香が破った。


「えっと、なんか稼げるみたいだし、そしたら欲しいモノややりたかったことも夢じゃなくなるかもしれないし……」


「あぁ、あの好きな可愛いものに囲まれて生活するってやつか……」


「うん。そんな生活も夢じゃなくなるかもだし……」


 嬉しそうに話す芹香に透はこれ以上何も言えなくなり、言葉を吐き出す。


「……勝手にしろ」


 透の最後の方の言葉が小さくて聞き取れなかったが、芹香は何を言ったかあえて聞かない。何故なら、勝手にしろと言われ、拒絶された感覚になり、聞くことができなかったのだった。



 

 しばらくはどこか気持ちが暗いまま、日々を過ごした。透はあれ以降、何も聞いてこない。芹香の不安が交差したまま日々が過ぎる。そして、約束の土曜日を迎えた。




 芹香はいつもの出掛ける格好で支度をして、少し早めに家を出た。街に行くために電車に乗る。電車に揺られながら気持ちが高ぶっていることを隠すために鞄に付けている人形を抱きしめる。


(うぅ~、緊張するな~……)


 そう心の中で呟く。電車が主要の駅に着き降りる。ホームをくぐりスマホのナビで調べながら○○ビルに向かう。


 


 その頃、自宅の部屋で本を読みながらゆったりとくつろいでいる透に芽衣から電話があった。


「もしもし、透くん?今、どこにいる?」


「家だけど、どうしたんだ?」


「自分のパソコンあるって言ってたよね?ちょっと、今から言うサイトを出してもらっていい?」


「あぁ」


 芽衣に言われたサイトを出す。そして、言われたとおりに検索項目を埋めて検索にかける。


 すると――――――、


「おい、これって………」


「えぇ、そうよ。多分、そういう事よね……」


「あいつ、そんなこと一言も……」


「多分、そうとは言われてないんだと思うわ」




「……芹香!」




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