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3.

 朝、芹香が教室に入ると透を見つけて思わず視線を向けてしまう。透がその視線に気づき、睨み返してくる。その様子を近くにいた真奈美が言葉を発する。


「いかにも熱視線を送ってくんじゃねーよって視線で訴えているわね、透くん」


 そこへ、教室のドアが開いて芽衣が入って来る。芽衣は透を見つけると透の傍まで近寄って行った。そして、透と芹香の様子で何かを感づいたのか、芹香に振り向く。



 そして、ドヤ顔を浮かべると透に向き直して仲良くおしゃべりしていた。



 その様子に胸が締め付けられる思いに駆られる。隣にいる真奈美が言う。


「ホントに告白して想いが実ったってことかしら……?でも、あれ?」


 真奈美がどこか腑に落ちないような表情をする。芹香は透と芽衣の様子にぽつりと呟く。



「そっか……、付き合うことになったんだ……」




 放課後になり、芹香は未だに気持ちが沈んでいるのを感じながら家に帰った。家に着くと部屋に行き、ベッドに倒れ込む。そこへ、階段の下から母親が声を掛けた。


「芹香ー!良かったら夕飯後に透くんの家に行ってくれるー?」


 母親の言葉に芹香は「はーい」と返事する。そして、部屋に置いてある姿見用の鏡の前に立って、自分の顔が鬱蒼としていることに気付く。



「こんな顔してたら駄目だよね……」



 パシッ!と、顔を叩いて自分で自分に喝を入れる。



(透にこんな顔を見せたくないよ……)



 そう心で呟き、いつも通りの笑顔を姿見の前で作った。 


 夜になって、芹香は母親に野菜を届けるように言われて透の家にやってきた。


 インターホンを鳴らすと、玄関から透の妹である中学二年生の颯希さつきが顔を出す。


「いらっしゃい!芹香ちゃん!!」


「やっほー、颯希ちゃん!」


 そう言って、颯希は芹香を家に招き入れた。


「あら、芹香ちゃん、いらっしゃい」


 透の母親に野菜を渡す。


「いつもありがとうね~。お母さんにお礼を言っておいてね!」


「はい!」


 芹香が笑顔で返事をする。そして、リビングに透がいないことをおずおずと聞いた。


「あの……、透は?」


「あぁ、透なら自分の部屋にいるわよ。行ってくる?」


 そう言われて、透の部屋に行きノックする。



 ――――こんこんこん……。



 部屋をノックするが応答がない。おかしいなと思ってそーっと部屋のドアを開ける。



 透はベッドでスヤスヤと寝ていた。机を見ると開いたままの本とノートとペンが置いてある。おそらく、趣味の考察をしていて疲れたから少し休むことにしてベッドに横になったら寝てしまったのだろう。


「……寝顔、かわいいな~」


 小さく囁く……。サラサラのストレートの髪、長いまつ毛、綺麗に通っている鼻筋。本当に綺麗という表現が似合う透。芹香はぼんやりと透を見つめる。


(キスしたくなっちゃうな……)


 そんなことを考えてしまう。そして、無意識のうちに寝ている透の顔に自分の顔を近づける。



 ――――ぱちっ!!



 突然、透の目が見開いた。芹香の顔がすぐ近くにある事に対して、静かに低い声で怒るように言う。



「……芹香、お前、何しようとしてやがるんだ?」



 透の声色に、芹香は慌てて顔を離す。


「ごめんなさい~!!その、えっと、ナニをしようと……。いや!ナニしようなんてこれ~っぽっちも考えてないですよ~!!あはは!!」


 変な日本語と笑いで誤魔化そうとする芹香。透が起き上がり芹香を睨みつけるように言う。


「お前は油断も隙も無いな……」


 そう言い放つ透。芹香がその背中に抱き付きたい衝動にかられるが、ぐっと抑える。



 (透は芽衣の彼氏なんだから……)



 分かっているけど、気持ちがごちゃごちゃする。透はそんな芹香の様子に言葉を投げかけた。



「で?いつまでここにいる気なんだ?」


 透が「とっとと出てけ」と言わんばかりのオーラを放つ。でも、芹香はそこから動こうとしない。


「あのさ、透……」

 

 芹香の声の雰囲気がいつもと違うことに気付き、透が芹香の方を向く。芹香はちょっと悲しそうな顔をしながら、でも、笑顔を作って言葉を話した。



「芽衣ちゃんとお幸せにね!」



 絞り出すようにその言葉を言う。透がその言葉に言葉を返す。



「は?何のことだよ?」



「え??」



 透の返答に目が点になる芹香。透は何のことを言ってるんだ?という顔をしている。


「え……?だって、芽衣ちゃんと付き合ってるんでしょう??」

「は?付き合ってないけど??」

「え?だって芽衣ちゃん、透に告白するって……」

「されたけど、断ってるが?」

「え?」

「……」

「……」


 しばらく沈黙が流れる。そして、その沈黙を芹香が破った。


「えぇぇぇ~~~~~~!!」




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