12.
学校が終わり、芹香たちはお昼休みに話したカフェにやってきた。
「それじゃあ、まず……」
芹香が芽衣から手順を聞きながらスマホを操作する。特に苦労なくそのサイトに登録を行う。無事登録が終わると今度は自分のページから写真を投稿する。ハッシュタグやコメントを添えたりしていくつか写真を投稿する。
「まぁ、このサイトは大手企業が運営しているわ。だから、セキュリティ対策はちゃんとなっているし割と安心よ。後は、定期的に投稿してコメントが来たら返事を返したりする感じね」
「なんか、ワクワクするね!」
最初はあまり乗り気ではなかった芹香も何処か楽しんでいる。その様子に芽衣と真奈美が安堵のような顔をする。
そして、何かを感じた真奈美がある事を言う。
「………芸大に行くってどうかしら?」
「「……え……?」」
突然の真奈美の発言に芹香と芽衣の声が重なる。
「芸術大学よ。芹香がカメラマンになるかならないかは本人次第だけど、その美的センスをより磨くために芸大に行くのもいいんじゃないかってことよ」
「……確かにそれもアリよね」
真奈美の発言に芽衣が頷く。
「え?え?」
二人の言葉に芹香が戸惑う。
「まぁ、これはあくまで提案だから決めるのは芹香よ。良かったわね、こーんなに沢山の手を差し伸べてくれる女神さまが二人もいて芹香は幸せ者ね」
「自分で女神ゆうなー!!」
「あらあら、内心は嬉しいくせにねぇ」
「そんなことないんだからね!!」
優雅にコーヒーを啜る真奈美が言う言葉に顔を赤くしている芹香がその顔を誤魔化すために怒り口調で突っ込む。
――――――ピコン!
そうやってふざけ合っていると、芹香のスマホから音が鳴った。「なんだろう?」と思い芹香がスマホを開く。すると画面に先程のサイトからのお知らせがきていた。
『いいねスタンプが100個になりました!』
「ひゃ……く……?」
芹香が声を上げる。そして、芽衣と真奈美に先ほど投稿したばかりの写真に「いいね!」が100を超えたことを伝える。
「……えらい早いわね」
「やっぱりそれだけ目を惹くってことよね……」
芽衣と真奈美が驚きの声を上げる。
その後も、スマホに「コメントが入りました」とか「拍手スタンプが入りました」というお知らせが届いた。
芹香たちがカフェでお喋りしている頃、透は家に帰り、趣味の考察をしていた。そして、ふとパソコンを開きお昼休みに見ていた資料のサイトを開く。
そのサイトを見れば見るほど、行ってみたい気持ちが膨らむ。ぼんやりとそのサイトを眺めていると部屋のドアがノックされた。
――――こんこんこん……。
透が返事をすると、父が部屋に入ってきた。そして、透が見ているサイトを見て声を掛ける。
「どうだ?受ける気はないか?」
「………」
透が父の言葉に詰まる。
「だいぶ悩んでいるみたいだな。でも、本当に守りたいのなら透は成長すべきじゃないのか?それに、いつまでもこの状態が維持されるわけではない。成長のためにも必要な事だよ。守りたいもののためにもね」
父が優しく諭す。そして、更に言葉を続ける。
「とりあえず、試験に受からなければ行きたくても行けないわけだから、試験を受けるだけでもいいんじゃないか?決めるのはその後でも遅くないよ?」
父はそれだけ言うと、部屋を出ていった。
透は部屋の天井を眺めながら思案する。
もしかしたら、悩みが解決するかもしれない。
自分のやりたいことが仕事としてできるかもしれない。
それに悩みが解決したら、やっと言うことができる。
ずっと、言いたかった言葉を言えるかもしれない………。
「………よし!」
透は父に試験を受けることを伝えるために部屋を出た。




