美少女(壁)がしゃべりかけてきた。おれはにげだした。しかし…
初投稿です
「やあ、おはよう」
朝起きたら、壁がしゃべった。
「壁とは何だ壁とは。君は、ラブコメで使い古された、誰も面白いとは思っていないうえにデリカシーに欠ける貧乳いじりをしたのだぞ、今」
申し訳ない。
「わかればいいんだ」
だが、そういうことではなくて、本当に壁がしゃべったんだ。
「ふーん、どうやら懲りてないようだね」
ほら、今も。
「…」
あ、黙った。
「…ここまで暴力的にいじられることはそうないね。ブチギレそうだよ」
千切れる乳房もないのにか。
「は?」
すみませんでした。
「はあ、私が優しくてよかったね。ほかの子にやったら絶交ものだよ」
絶交も何も、君と会ったのは今日がはじめてじゃないか。
「…次は記憶喪失ごっこ?00年代アニメあるある縛りでもしているのかい」
そもそも記憶喪失があるあるすぎる。
「だったらたとえが悪かったね。それなら、激イタキモ作家が現実の幸せから目を背けて、空想の悲劇に浸ろうとする、古代ギリシャから続く伝統的なリビドーに襲われたのかい」
悲劇に親でも殺されたのか。
「ああ、父と母と兄弟と姉妹と妻と娘と息子と夫と親友と恋人と宿敵と相棒を」
感情移入しすぎだろ。
「まあ、それはいい。しかし君、私を覚えていないというのはどういうことだ。私たちは毎日のように顔を合わせていたし、なんなら、毎朝一番に顔を合わせるのは私だった。明日の自分が新しい自分だというなら、新生した君という雛鳥は毎朝私が母であると刷り込まれていたはずなのだが」
実は俺、6000日前の俺なんだ。
「タイムリーパーみたいなノリで言ってるが、つまり寝ていないのか、君。だめだぞ、ちゃんと寝なければ生まれ変われない。」
寝れない理由はできたけどな。
「しかし、本当にどうして私を覚えていないんだ。あんなに一緒だったのに」
覚えていないというのは正確ではないか。俺は確かに君の姿は覚えているからな。
「ならば思い出を忘れてしまったということか」
そもそも思い出がなかったというべきか。
「なに?」
だって君は、
壁なのだから。
6畳半のぼくのへやの
窓付きの南面の
少し日焼けた
壁なのだから。
―遠くでカラスが鳴いている。夕暮れさす部屋の中、ベッドに影一つ。独りうずくまるのみ…―
「…最初に見るのは天井だ、バカ…」
なにこれ?
連載せんけど評価くれ。