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ヒスイ(仮)

作者: ざるそば

筆者はアンチ流紋岩です。4〜5時間頑張ったのに拾ったのは全部流紋岩でした。


 俺は流紋岩。今俺は男の子のポケットの中にいる。なぜかって? またヒスイと間違われて拾われたところだ。

 そう、「また」なのだ。今まで俺は数多くの人に拾われ、ヒスイ鑑定で弾かれるたびに捨てられてきた。その回数は数えるのも億劫なほどだ。

 俺を拾う皆が嬉しそうな顔をして拾い、捨てるときはイライラしていたり、残念そうな顔をしていた。ある者は俺を地面に叩きつけ、ある者は俺を蹴り飛ばした。暴言を浴びせられることもあった。その度に俺は自分の存在価値の無さを突きつけられているような気がしてとても辛かった。


 さっき俺を拾った男の子も、とても嬉しそうに俺を拾い上げ、ポケットに入れていた。

 俺を拾う人の笑顔を見るたびに俺は自分が存在してもいいのだと思えて嬉しかった。


 昔の俺は今よりもっと大きな存在だった気がする。だが長い年月をかけて荒波に揉まれ、随分と角が取れて丸くなってしまった。たぶんイライラするたびに周りに当たり散らしていたからだろう。


 今俺は男の子のポケットの中にいる。このあと鑑定されてまた残念そうな顔をされながら捨てられてしまうかもしれない。だが今は長い長い石の生のうち、あと何度経験するかもわからないヒスイ(仮)でいられるこの束の間の幸せを噛み締めたいと思う。この幸せを知らない石は多い。少なくとも、俺はヒスイ(仮)でいられる間は幸せなのだから。



筆者が拾った流紋岩は持ち帰られて金魚の水槽の中にいます。

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