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第54話 変化

 

「要くん!」


 しばらくして、一人で二度目の見回りをしていたところ背後から呼ばれた声に振り向く。


「黒木さん?」

「……よかった。急に、いなくなったから。探した」

「えっ、僕の事探してたの。お母さんは?」

「さっき帰った。要くんにも。よろしくって」


 美沙子さん。本当に忙しい中来てくれたんだな。

 後日改めてお礼を言わないとな。


「要くん。今日は本当にありがとう」


 そんな事を考えていると、黒木さんからそう言われた。


「お礼を言われる事じゃないよ。勝手な事しちゃったし、黒木さんだって僕の事が嫌いに、」

「なるわけない!」


 と、いつもなら考えられない程に大きな声で黒木さんに否定された。


「要くんは、いつも私を助けてくれる。それなのに、嫌いになんて……なるわけないよ」

「でも、僕。黒木さんのこと、また泣かせて」

「そんなの関係ないよ。要くんは私にとってヒーローだもん。初めて話した時から」

「!」


 そんな大層な言われ方をされると、なんだか照れる。


「それに……。要くんとはこれからも一緒に遊んだり、お出掛けしたり。もっと、一緒にいたい。だから」


 先程の大声が嘘のように、だんだんとまた声が小さくなっていく黒木さん。

 長年静かな自分を貫いてきたんだ。そう簡単に抜けるものじゃないよな。


「いいの? 僕、自慢じゃないけど。そんなに友達多くないし、勉強に運動だって平凡。帰宅部のエースなんて呼ばれてるんだよ?」


 よくよく考えれば、そんなのが友達って黒木さんの印象を悪くする点しか思いつかない。


「人の気持ちは……、決めつけちゃいけないよ」

「あ……、ごめん」


 黒木さんに指摘されて、僕は一旦冷静になる。

 確かに、今のは僕が喋りすぎた。

 黒木さんの事なのに、彼女の考えを無視するのは間違っている、よな。


「要くんとはこれからもっと、思い出を作りたい。誰がどう思ってたって私の一番は要くんだから」

「えっ……。一番って?」


 その言葉が何を意味しているのかはわからないけれど、黒木さんが僕の友達としての関係を続けていこうと思ってくれている事だけはわかった。


「だ、だから、これからもよろしくね。真吾……くん」

「うん。……え、今僕の名前」


 僕の耳には確かにそう聞こえた。


「駄目……かな。これからは、下の名前で」

「僕の名前、覚えててくれたんだ」

「当たり前……だよ。それで、どう……かな?」

「……うん、いいよ。岬、さん」

「!」


 僕はそれに応えるように、彼女の名前を口にする。

 名前呼びをするからって優劣があるわけじゃないのはわかってる。それでも、僕と黒木さんの距離がより近づいている事はわかった。


「うん……」


 顔を赤くした黒木さんは、はにかみながら返事をする。

 そして、感謝を伝えるように僕の両手を握った。


 どうやら、無口なボーイッシュガールだったはずの彼女は僕の前では少し、積極的になったらしい。


(おわり)


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