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第30話 スイーツチョイス

 

 落ち着いたところで、お品書きの中からメニューを選ぶ事にする。


「抹茶クリームのケーキ……」


 黒木(くろき)さんが呟いた言葉を聞いて、僕もその商品が載ったページを開く。


「これだ」


 白いスポンジケーキの中からは溢れるほどのたっぷりの抹茶クリーム。ケーキの上には抹茶のパウダーが掛かっている。いかにも和カフェの定番メニューというように、デカデカとおすすめの文字が書き出されている。

 スイーツはどれもお茶とセットになっているらしく、そのスイーツに合ったオススメのお茶なども一緒に載っていた。


「どれも美味しそうだね。黒木さんはこのケーキにする?」


 黒木さんは小さく首を縦に振る。


「ケーキ好きなんだ?」

「……うん、好き」


 ニコッと笑う彼女に僕も釣られて笑みが(こぼ)れる。


「失礼します」


 水を運んできてくれた若い店員さんが僕たちの様子を見て、注文票を手に取った。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「私は……、この抹茶のクリームケーキで」

「お飲み物はどうしますか?」

「じゃあ、ほうじ茶を……お願いします」

「かしこまりました」


 手元の紙に記入を終えて、お姉さんが僕に視線を向ける。


「彼氏さんの方はお決まりですか?」

『か、彼氏⁉︎』


 店員のお姉さんの言葉に僕と黒木さんは声を揃えて反応した。

 そんな僕たちに、お姉さんも目をパチクリさせている。


「そ、その僕たち付き合っているわけじゃ……」

「そう……です。友達、です」


 僕が最初に言葉を切り出すと黒木さんも訂正してくれた。

 男女が二人でいるとそう見えてしまうのだろうか。

 勘違いされる事くらい僕は構わないけれど、黒木さんがどう思うかは分からない。

 それに、付き合っていないのは本当なのだから否定しなくてはいけないのは当然だ。


「……まだ」


 最後に黒木さんが微かな声でボソッと呟いたみたいだけど、何と言ったのか分からなかった。


「そうでしたか。これは失礼しました。でも男女お二人での来店という事ならカップル割引というものがあるのですが……」

『カップル⁉︎』


 つ、付き合ってもいないのにカップルという単語を僕らは向けられていいものなのだろうか。


「そ、それは恋人同士じゃなくても……」

「はい、対象になります。当店の特別サービスです」


 色々と疑問は残るが、僕たちは顔を見合わせる。

 確かに僕たち以外にもお客さんはいて、よく見れば男女で座っている率が高い。

 もしかして、この店が若い人たちに人気があるのはこれも理由の一つなのか?


「ど、どうしようか」

「私は……いい、よ。(かなめ)くんは?」

「黒木さんが良いなら……」

「じゃあ、カ、カップル割引……お願いします」

「かしこまりました。それでメニューの方はどうされますか?」


 未だ僕のみが注文できていないことを思い出して、すぐにメニューをもう一度見通す。


「えっと、僕は抹茶ティラミスと緑茶のセットでお願いします」

「かしこまりました。ご注文は以上でよろしいですか?」

「はい。お願いします」

「少々お待ちくださいませ」


 それを最後に、お姉さんはカウンターの方へ注文内容を知らせに席を離れていく。


「…………」

「…………」


 ふう、秋に入ったというのに顔が熱い。

 室内の暖房が効きすぎているのではないだろうか。


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