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放課後、例の神社

 ――放課後。


「ちょっと、大地! いつも安達さんってあなたにあんな感じなの!?」


 俺たちの入れ替わりが起きた例の神社に到着して、一番初めの話題が安達さんについてだった。


「あんな感じって、どんな感じだよ?」


「なんか、大地と話すのが凄く嬉しそうだったわ。なんていうかしら……そう、メスの顔!」


「お前はすぐに安達に謝ってこい。それにしても安達が俺のことを……その……好きだって、初めて知ったよ」


「ふ~~ん、そうなんだ」


 俺が言うとソラは途端に不機嫌になった。

 理由は分かっている。


「結構、安達さん、好き好きアピールしていたみたいだけど、気付かなかったの?」


「今日、天海さん経由で教えてもらうまで気付かなかった。今まで意識していなかった。確かに距離間は近かったけど、同じ運動部だし、そういうノリなんだと思っていたよ」


「鈍感ね……んっ? 瑠璃?」


 ソラは俺が天海さんの名前を出したら、何かを思い出して、サーッと血の気が引いていた。


「大地、瑠璃は他に誰かが大地を好きだって言っていたかしら?」


 ソラは恐る恐る、俺に尋ねる。


「…………言ってなかった」


 俺は思わず、視線を逸らしてしまった。


「嘘だ! 大地が嘘を言う時はいつだって、視線を逸らすから分かるわよ!」


 すぐにバレてしまった。


「ねぇ、瑠璃は誰が大地のことを好きだって言っていたの!?」


 ソラは俺に詰め寄って来た。

 てか、この詰め方、もう気付いているだろ!


「………………ソラが、俺のことを好きだ、って聞いた」


 俺は観念して自白した。


「…………そう」


 もっと騒ぐと思ったけど、ソラは落ち着いていた。


 徐に立ち上がり、柱の強度を確認し始めた。


「うん、大丈夫そう。大地、ロープって持ってる?」


「いや、ないよ。何に使うつもり?」


「もちろん、首を吊るんだよ」


「!?」


「しょうがない。神社の境内を探そうかな」


 ちょっと待って!


「いきなりどうしたんだよ!?」


「死ぬんだぁ……」


「えっ?」


「大地にこんな形で、私が好きだって知られて、もう生きていけない!」


 全然、冷静じゃなかったーー。

 かなり思いつめていた。


「落ち着け! お前、今、俺の身体! 俺が戻れなくなるだろ!」


「大地は私のことなんてどうだって良いんだ! 私の身体、目当てなんだ!」


 おい、変な言い方はしないでくれ!


「俺がお前に死んでほしいはずないだろ! お前は俺の幼馴染で、初めての友達で……」


「うん、私にとっても幼馴染で、初めての友達だった。それで初恋で……でも、こんなこと言われても迷惑でしょ?」


 少しだけ冷静さを取り戻したソラが泣きそうになりながら言う。


 多分、「そんなことない」とか「気にしないよ」とかっていう言葉じゃ、この状況を好転させられないだろう。

 それにこれから先、俺とソラの男女逆転が元に戻った時、関係が修繕できる気がしない。


 イレギュラーなこととはいえ、ソラの本心だけ知るのはフェアじゃないと思った。


「ソラ、俺も素直な気持ちを伝えるよ」


「な、なによ? …………もしかして、絶交宣言?」


「違う。…………俺もさ、ソラのことが好きだ」


「…………それって〝like〟じゃなくて〝love〟ってこと?」


「もちろんだ」


「同情して言っているだけじゃないの?」


「えっ?」


「だって、今日、大地の友達の田口君とか谷君と話をしたけど、私のことはただの幼馴染としてしか認識していなかったよ?」


 田口も谷も元野球部のチームメイトだ。

 仲も良い。


 だけど、言うわけないじゃん。

 

「言えば、広まるだろ。もしそんなことになって、ソラと疎遠になるのが怖かった。今だって、高校ではほとんど話さないのに……」

 

 学校で話さなくなったのは、中学時代に周りから「カップル」とか「夫婦」とか言われたからだ。

 言っていた奴らに悪気はないかもしれないが、中学生の俺とソラはそれが嫌だった。

 だから、学校ではあまり話さないようになった。


「もう一回言う。俺だって……その……ソラが好きだった……」


 言っていて、顔が熱くなる。


「じゃあ、証明して」とソラが言う。


「どうやって?」


「私のことが好きなら……その……キス、出来るでしょ?」


 ソラは視線を逸らしながら言う。


「でも、俺は今、お前の身体なんだぞ?」


「それを言ったら、私は大地の身体だよ。でも、お互いに好きで……恋人になるなら関係ないよね……!」

 

 関係なのか?

 

 それにしても恋人……その単語を聞くとさらに体が熱くなる。


「いいよ、だけど、今の俺じゃ、ソラの方が背が高いからキスできない。ソラからしてくれ。あと、自分の顔がキスをしてくるのは嫌だから目を瞑るから」


 俺は出来るだけ背を伸ばして、目を瞑った。


「こういうのって男からじゃないのかしら?」


「今はソラが男だろ」


「ズルい……」


「しないのか?」


「…………する」


 ソラの言葉を最後にお互いに無言になった。


 そして、ソラが俺の両肩を優しく掴む。


 あっ、今、目前にソラ(まぁ、顔は俺だけど)がいるな、と思った次の瞬間、唇が触れた。


 その瞬間、雷が落ちたような感覚、というか本当に雷が落ちたらしい轟音がした。


 それは今日の朝と同じだ。


 びっくりして目を開けると目前のあったのはソラの顔だった。


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