俺たち(私たち)入れ替わってる!?
主な登場人物だけ書かせて頂きます。
※一話目で全員出てくるわけではありません
北条大地……主人公
足利青空……ヒロイン
天海瑠璃……ソラの親友
安達澪……大地のクラスメイト。
「これはどういうことかしら?」
ソラはとても驚いていた。
「なんだか、変な感覚だな。自分の顔が目の前にあるっていうのはさ。男女が入れ替わるって、漫画とか映画にあるけど、まさか自分たちで体験するとは思わなかったよな」
「大地、なんで、そんなに冷静なのよ!」
ソラは俺の体を強く揺さぶった。
「おいおい、これは君の体なんだ。元に戻った時のことを考えて、もっと大切に扱いなよ」
「うるさいわね。こんな状況、発狂したくもなるわよ! 私たち、入れ替わっているのよ!?」
「君の名は? って、言えばいいかな?」
「ボケるなんて、余裕があるわね!」
ソラはいつものように俺を叩く。
「痛い! 加減しろ! お前、今俺の体! 高校三年生七月まで野球でそれなりに鍛えていたんだぞ!」
俺はかなり必死に訴えた。
いつものソラの文芸部パンチなら何ともない。
だけど、元高校球児のパンチは普通に痛い。
「ご、ごめんなさい。つい、いつもの癖で……」
ソラは本気で申し訳なさそうだった。
「とにかく、一度、状況を整理しよう」
俺とソラは現在、登校途中にある神社にいる。
神社の石段に腰を下ろした。
今日はいつものように二人で登校中、いきなり雷雨に襲われ、一旦、神社に避難した。
直後、超至近に雷が落ち、二人が入れ替わってしまう。
「うん、わけが分からないわよ!」
ソラは頭を抱えた。
「よし分かったぞ」
対して、俺はドヤ顔で言ってやった。
「私の顔で気持ち悪い表情にならないでくれるかしら?」
「そんなことを言うと泣いちゃうぞ」
俺はぶりっ娘っぽい言い方をしてみた。
直後にソラは俺(ソラの体)の右肩を漫画なら「メキメキ」という擬音を使われそうなくらい思いっきり握った。
「痛い痛い。ソラ、いいのか!? 自分の体だぞ!」
「そんな脅し文句を言われることがあるなんで思わなかったよ。……それで何が分かったの?」
ソラは俺を解放してくれる。
「さっきの落雷。実は俺たちを直撃していたんだ。それで俺たちの体は四散して、死亡し、現在は霊体のような状態で……ソラさん、なんで両手の関節をパキパキとさせているんですか!?」
「大地の理論が正しいか、確かめる為に首を絞めてみようと思って」
「馬鹿な真似は止せ!」
まぁ、さっきから痛いし、苦しいから多分生きている。
「とにかく、一旦、家に帰ろうか。こんな状態じゃ、学校どころじゃないだろ?」
俺は立ち上がった。
「駄目……」とソラが呟く。
「駄目ってなんだよ?」
「無遅刻無欠席じゃ無くなっちゃう……」
それを聞いて、俺は溜息をついた。
「そんなことか。それはしょうがないだろ」
「でも……」
ソラは歯切れが悪かった。
学校へ行くことを諦めていないようだ。
「じゃあ、行くか」
「えっ? いいの?」
「ここで強引に欠席したら、ソラが落ち込みそうだからさ。それにいつ戻れるか分からないから、ずっと学校を休むわけにも行かないだろ。三年生二学期の九月にさ」
「あ、ありがとう…………!」
ソラはとても安心したようだった。
「だとしたら、早く学校に行こう。遅刻もしたくないんだろ?」
「うん!」
俺とソラは神社の石段を降りて学校へ向かう。
時間がギリギリなので俺たちは走った。
学校まで大した距離じゃないはずだが…………
「はぁ……はぁ……」
俺はすぐに息切れを起こした。
分かっていたが、この体、って体力無さすぎだろ……
「何しているの、早く!」
対して、俺の体を得たソラはとても元気そうだった。
「ソラ、お願い……俺の荷物を持って……」
俺はバッグをソラに渡そうとする。
「だらしないな……」
だらしないのはお前の体だ!
いやらしい意味ではなく、運動能力的な意味である。
「それにしても大地の体、すっごく動きやすい。体が軽い、もう何も怖くない、って感じだわ」
じゃあ、駄目じゃないか?
元ネタのアニメは知らないけど、死亡フラグらしいじゃん。
「それにしてもお前の体、本当に重い……」
「女の子の体を重いって言わないでよ」
「特にこれが重い……」
俺はあまり考えずに胸を触った。
「おお! 凄い!」
昔、一緒にふろに入った時はぺったんこだったのになぁ……
女の子って凄い!
「凄い! ……じゃない!! 何、ナチュラルに私の胸を触っているのよ!?」
「今は俺のだ!」
「うっさい! って、本当に時間が無くなって来たわ! 荷物は持つから、頑張って走って!」
結局、俺は絶望的な運動能力のソラの体で学校まで必死に走った。
俺の努力は無駄にならず、予鈴とほぼ同時に教室へ到着する。
「大地……じゃなかった。ソラ、バッグ!」と言いながら、ソラがバッグを俺に向かって投げる。
「わっ、うわっ!」
俺はバッグをどうにか受け止めた。
一言、文句を言おうとしたら、もうソラは自分の教室へ行ってしまった。
俺が自分の席に着くと隣の席の田口が驚く。
んっ?
どうして、そんなに驚いて……あっ!
「ソラ……じゃなくて、大地! 教室、逆だ!」
いつもの癖で、お互いに自分の教室へ行ってしまった。
今回は中編小説の予定です。
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