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靖国刀怪奇異聞  作者: 菊藤耕太郎
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【靖国刀】

 靖国刀。それは、昭和八年、荒木貞夫陸軍大臣によって、有事に際しての軍刀を整備するために組織された財団法人日本刀鍛錬会により製作された日本刀の総称である。第二次世界大戦が終結するまでの十二年間に八千百振の日本刀が製作されたとされている。財団法人日本刀鍛錬会に所属し、靖国刀の製作に従事した刀匠は『靖国刀匠』と呼ばれた。


 靖国刀の特質とはどのようなものか。


 財団法人日本刀鍛錬会には、笠間一貫斎繫継系宮口靖廣派、横山祐義系梶山靖徳派及び池田一秀系池田靖光派の三派があり、流派の異なった刀匠たちが一つの組織の下で、鎌倉後期の名刀の作風を求めて高度な技法を確立していったという。


 靖国刀には、具体的な目標となる刀の姿があったとされている。長さは六六.七センチメートル前後で、反りはおよそ一.七センチメートル。切先が小切先で、身幅は狭め。室町時代の末期から安土、桃山期にかけて作られた日本刀に見られるようなやや小振りな姿の刀剣がそれであった。


 財団法人日本刀鍛錬会の主な目的は、先述のとおり有事に際した平素からの軍刀の整備であったが、靖国刀の中でも特に出来の良い刀は売却や授与等の対象にされず、同会において長期保管されることになっていた。いわゆる保管刀というもので、靖国刀匠は皆、自作の刀が保管刀に指定されることを名誉と捉え、鍛冶場ごとに切磋琢磨をして技術を研鑽していったという。


 一方で、陸海軍大学校で優秀な成績の卒業者には天皇より靖国刀が下賜されてもいた。この刀を『御下賜刀』という。海軍大学校の卒業生には短刀、陸軍大学校の卒業生には刀がそれぞれ授与されていた。


 靖国刀は、靖国神社の境内で作刀され、材料は出雲の靖国タタラ製の玉鋼が用いられている。世にいう軍刀はそのほとんどが粗悪であると云われているが、靖国刀は違う。日本軍人の誇り、あるいは魂として扱われることを主眼に製作されたもので、当時の日本刀製作の技術の粋が結集された逸品であった。


 日本の敗戦により、遺憾ながら日本刀は恐ろしい凶器というイメージが広まってしまったものの、たった一振の刀に託した日刀匠を初めとする刀剣関係者たちの苦心惨憺ぶりとそれがもたらした絶大な成果は、漏れ無く日本史に明々と刻まれるべき輝かしい功績として称えられるべきものなのである。

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