序 新聞記事
十一月二日 明星新聞朝刊 社会面より一部抜粋
神奈川警察署の捜査本部は、四年前に神奈川警察署内で、同署地域課の巡査長、井上源七郎(当時、三一歳)が、同署の警備課の巡査部長、八木聡さん(五八歳)の胸部を刃物で突き刺し死亡させた事件で、一日午後十一時二十五分、東京都月見市内で井上容疑者を殺人及び公務執行妨害罪の疑いで逮捕したことを発表した。
捜査本部によると、井上容疑者は一日午後十時ごろ、月見市内の飲食店で食事をしていたところ、店の客と口論を始め、井上容疑者が刃物を出したことから争いとなり、客が井上容疑者から刃物を奪い、取り押さえたとのこと。その後、駆け付けた警察官に井上容疑者を引き渡したところ、指名手配犯であることが発覚した。
井上容疑者は供述の中で、四月の大阪府堺市の会社役員、島田実さん(七六歳)、八月の兵庫県小野市の建築会社社長、加藤隆さん(四五歳)、十月の三重県伊勢市の無職、安田琴美さん(九二歳)が殺された事件のほか、愛知県内と京都府内で発生した複数の殺害事件についても関与をほのめかしており、連続殺人事件として裏付け捜査を急いでいる。
井上容疑者は警察官時代、高い実績を残す剣道家として有名で、警察官としての心技体を培うための技術が凶悪な犯行に使用されたことを受けて、政府与党からは高校などの教育現場において武道の教育を控えるべきとの慎重論も唱え始められており、今回の事件は今後の日本社会における武道教育の方向性だけでなく、その是非についても考える契機となっている。




