十七歳・残された日々(1)プロローグ
「十八歳・ふたりの限りなく透明な季節」
( https://ncode.syosetu.com/n1757ft/)
の冒頭話「十七歳・残された日々(1)〜(10)」のもうひとつのストーリーです。
(1)〜(9)までは変更箇所はなく、(10)(11)でストーリーが変わります。
私はいつも気紛れだと思う。
すぐ冷めやかに気が変わる。
心が一つに定まらない……。
誰を愛しているのかすらわからずに。
されどかつては彼の人を、あの日の時から愛した自分。
***
季節は五月。
日射しが少しづつ強くなり、新緑が目に鮮やかな風薫る五月。
私は済陵の三年生になった。
限りなくグレイな受験生。
クラスは、私文コースと言える英語重視のコースを選択し、二組になった。数学は週四時間、最低限の国立対策が行われ、主要の英語は週九時間みっちりしごかれている。
その状況を、受験生としての自分の立場を、私は流されるまま甘受していた。
大学は国立を受ける。
遅くとも夏までには、はっきりと志望校を決めなければならないだろう。
しかし、二年の後半以来、明らかに成績を落としてしまった私は、三年生になってからというもの気の重い日々を過ごしている。
もうじき最後の体育祭が迫っているけれど、心は晴れない。
私はまだ、二年の頃の想いを引き摺っている。
私は……。
遣り場のない想いが募れば、それは捌け口のない不満へと形を変える。
本当に心から愛していたと、私は最近になって改めて冷静に自分の心を掴めるようになり始めていた。
そして、それは即ち、今も愛しているということと同じ意味を持っているのかも知れない。
愛していた。
愛している。
そして。
愛されたい……。
そう欲する自分を、私は春から夏へと移り始めている初夏の頃、徐々に意識し始めていた。