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対等な条件

 二割。

 それは結構な数値だ。

 やはり服は脱ぎべきだろう。


 でもパンツ一丁はやっぱり嫌だ。

 しばらく思案した結果、俺は目の前の脳筋女騎士に相談することにした。


「あのぉ……その決闘用の正装ってやつ、もう1セット持ってたりしない?」


 イングリッドは、何故そんなことを聞くと言った感じで首をかしげるが、素直に答える。


「決闘用の運動着はこれだけだ。少し質が落ちるが、よく似たトレーニング用のものならもう一着あるが」


 決闘用とトレーニング用で分けてるのか、意外とマメな女だ。


「そうなんだ。それで……その……言いにくいんだけど、良かったらそれ、貸してもらえないかな。ほら、俺ってこのヒラヒラの服しか持ってないから、こんな格好じゃ、決闘にはふさわしくないかなって思って……」


 俺は、自分でも図々しいと思ったが、頼むだけ頼んでみることにした。


 どうせダメもとだ。

 断られたら、潔く服を脱いで戦うまでだ。


 しかし、そんな俺の逡巡はまったくの杞憂だったようで、イングリッドは驚くほどあっさりと了承した。


「構わんぞ。私も、お前の恰好は気になっていた。格闘戦の場合、その服では不利だ。そんな相手を決闘で叩き潰しても、自慢にならんからな。ほら、使え」


 ステージの脇に置いてあった荷物袋から、今現在イングリッドが着ているのとそっくりな黒いタンクトップとショートスパッツを彼女は取りだし、俺に向かって放り投げた。


 なんだ。自分勝手な女だとばかり思っていたが、案外いいところもあるじゃないか。これが騎士道精神ってやつか。


 俺はそそくさと精霊の服を脱いで、イングリッドのトレーニング着を身に着ける。ちゃんと洗濯しているようで、柔軟剤の良い香りがした。


 大柄なイングリッドの物だから、サイズが合うかどうか心配だったが、それは意外なほど俺の体にフィットした。


 思わず、感心した声を上げてしまう。


「へぇ、不思議だな。俺とあんたじゃ体のサイズが違うのに、まるであつらえたみたいにぴったりだ」


「着る者の体格に合わせて、自由に伸縮するツァル繊維で作ってあるからな。それに、柔軟な素材だが、衝撃や引き裂きにはかなり強いぞ」


「なるほど。確かにこいつは頑丈そうだ。ありがたく使わせてもらうよ。……それにしても、そんな優れものを、これから戦う相手に渡しちゃっていいのかい?」


 イングリッドは、くだらないことを聞くなと言わんばかりに鼻を鳴らす。


「今さっき言ったばかりだろう。不利な状態の相手を叩き潰しても、何の自慢にもならん。対等な条件で勝負してこその決闘だ。……初めに言っておくが、私は剣術に関しては一流だと自負しているが、格闘術に関してはそれほどでもない」

「えっ、そうなの?」


 わざわざ素手で決闘したがるくらいだから、格闘術も相当なものだと思っていたのに、そいつは意外だ。


「ああ。そして、見たところ、お前も格闘術に精通しているとは思えない。だからこそ、素手での決闘を望んだのだ。お互いに不得手ふえてな項目で戦ってこそ、対等な条件で勝負ができるというものだからな」

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