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恐怖のグレートデーモン

「実を言うと、今朝勤め先を辞めて、安全で快適な新天地を探して旅に出たんだ。……酷い労働環境でね。今まで命があったのが不思議なくらいだよ」

「そうなのですか……お若いのに、苦労なさっているんですね」


 年寄りじみた彼の物言いに、俺は軽く吹き出してしまう。


「『お若いのに苦労なさっている』のはお互い様じゃないか? きみ、見たところ12~13歳だろう? その若さで魔王討伐なんて、無茶にもほどがある。悪いことは言わないから、やめときなよ」


 そこまで一息に言い切ってから、随分と上から目線で感じの悪い言い方だと気がついた。


 いけないな。

 酒場のマスターと会話していた時も思ったが、俺は少々軽口が過ぎるし、態度もよろしくない。


 今朝まで身も心も魔物だった影響か、はたまた前世の俺もこんな性格だったのか……


 しかし、レニエルは気を害した様子もなく、俺に頭を下げた。


「僕の身を案じてくださるのですね。ありがとうございます。でも、どうしても、行かなければならないのです。それでは、僕はこれで失礼します」


 そう言って、もう一度頭を下げると、レニエルは町の出口に向かって歩き出した。そこから街道に出て少し行けば、凶悪な最上級モンスターたちが待ち受けている。


 おいおいおい。

 こんな子供、奴らなら小指一本でズタボロの雑巾みたいにできるぞ。


 俺は、レニエルを追いかけた。


 自分には関係のないことだし、放っておけばいいとも思ったが、やはり見殺しにはできない。


 先程ピンチから救ってもらったということもあるが、それ以上に彼が『良い子』だったからだ。


 聖騎士だということを鼻にかけ、ほどこしのつもりで俺を助けたような奴なら無視しておいただろう。


 しかし、レニエルの澄みきった瞳には、思い上がりも嘲りもなかった。

 本当に、心からの善意で俺を助けてくれたのだ。


 子供ゆえの純真さもあるのだろうが、それにしたって、こんな好人物、そうはいない。ここで彼をみすみす死なせては、バチが当たりそうだ。


 俺は、レニエルの背に追いすがりながら、諭すように言った。


「なあ、おい、待てって。俺は、これまで何度も見てきたんだ。凄腕の冒険者どもが、魔王城につくどころか、この先の街道でモンスターたちにむごたらしく殺されるのを。言っちゃ悪いが、お前が連中より強いとはとても思えない。なあ、やめとこうぜ。その若さで死ぬこたねえよ」


 うーむ……

 やっぱりどことなく感じの悪い言い方になってしまう……

 チンピラか俺は。


 しかし、俺の粗野な言葉も多少は効果があったらしい。『惨たらしく殺される』という響きに、毅然としていたレニエルの歩みが若干鈍った気がした。


「し、しかしそれでも、僕はいかなければ……」


 レニエルの言葉には、先程より明らかに力がなかった。


 しめた。

 おじけづいたか。

 俺は、畳みかけた。


「まず、街を出てすぐのところにたむろしてるのは、グレートデーモン。怪力と俊敏さを併せ持った化け物だ。おまけに、ある程度の魔法も使いこなす。でもそんなことは大した問題じゃない。あいつらの一番怖いところは、その残忍さだ。奴ら、獲物をすぐには仕留めずに、動けなくしてから○○して○○すると○○を○○するんだぜ……」


「そ、そんな……酷い……」


「いやあ、こんなのまだまだ序の口さ……考えてもみろよ、ただの街道にそんなのがうろついてるんだぜ。魔王城付近には、もっともっとヤバイ奴がゴロゴロいる」

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