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戯言

 おっ。

 ってことは、単純計算だけど、俺は一般的な警備兵さんの四倍は強いってことか。ちょっぴりいい気分。


「やっぱ、元魔物だからかな?」


「うむ。シルバーメタルゼリーは特殊なモンスターだ。その強固な防御力は、強いオーラにも裏打ちされたものでもある。あと、オーラは本人の精神力に、多分に影響を受ける。ぬしは気が強いし、これまで何度も死にかけるような経験をして、精神的にもタフになっているからな。それが良い方向に作用しているのだろう」


「なるほどなるほど。んで、イングリッドは?」


「うむ。12103くらいだな」


「マジで桁が違うじゃん!」


「だからそう言っているだろう」


「俺の六倍はあるな。かぁー、こりゃ、もうどうしようもないか。いっそのこと、素直にごめんなさいって謝って、服従した犬みたいにお腹を見せて寝転がったら許してくれないかな」


 両手を軽く曲げ、ハッハッと舌を出して犬の真似をする俺を、ジガルガは呆れたジト目で見る。


「ぬしにプライドはないのか……」


「あるにはあるが、プライドのために死ぬ気はない」


「まあ、ぬしに寄生している我としても、宿主にはなるべく死んでほしくはないがな」


「なるべくって、そこは絶対死んでほしくないって思うところだろう。寄生してるお前も一緒に死んじゃうんだぞ」


「どうかな。生きていたところで、我にはもはや、することはないからな。いっそのこと、ぬしと共に消え去るのも悪くないかもしれん」


 どこか遠くを見つめ、寂しげに言うジガルガを、俺はピシャリと一喝する。


「馬鹿、縁起でもないこと言うな。それに、することならあるだろ」


「なんだと?」


「今みたいに、これからもお前の知識で、俺をサポートしてくれよ。俺は色々と、無鉄砲に行動することが多いからな。お前みたいな参謀がいると心強い」


「人類滅亡のために作られた我に、元魔物とはいえ、人類のお前を助けろというのか?」


「人類滅亡は、厳密にはお前の意思じゃなくて、お前の創造主が子孫に託した意思だろ? その子孫が、もう人類滅亡を望んでいないなら、お前は自由だ。そんで、特にすることがないってんなら、俺と一緒に冒険するのも悪くないだろ?」


「ふむ……」


 そこでジガルガは言葉を切り、黙って俺の顔を、じっと見つめてきた。

 頭の中で、今言われたことを、反芻しているのだろう。


 ……なんとなくだが、俺はこいつと、上手くやっていけるような気がしていた。


 なんだか、妙に馬が合って、話してて楽しいのだ。話し方は古風でちょい偉そうだが、聞いたことはなんでも素直に、それも根気よく教えてくれるし。


 自惚れかもしれないが、ジガルガも、俺のことを嫌ってはいないように思う。

 さっきも、『ぬしと共に消え去るのも悪くないかもしれん』って言ってたしな。


 普通、嫌いな奴と一緒に消え去りたいとは思わないだろう。

 しばらくして、ジガルガは静かに唇を開く。


「……どうせ、やることも、存在意義も失った身だ。ぬしの戯言に付き合ってみるのも、一興かもしれんな」

「よしっ、じゃあ決まりな。はい、握手握手」


 俺は、ジガルガの小さな手を、親指と人差し指で握って、可愛い握手をした。

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