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オーラ

 そのまま、一……二……三……四……五秒。

 ジガルガは、頭を離す。


「ふむ、だいたい分かった。ぬし、なかなか数奇な運命をたどっておるようだな。元は異世界の人間で、こちらの世界に転生してからは魔物、それがまた人間になるとは、なんとも奇妙なことよ」

「えっ、うそっ、今ので、俺のこと、一気にそんだけ分かっちゃったの!?」


 驚嘆する俺に、ジガルガは不敵な笑みを向ける。


「ふふふ、それだけではない。ぬしと戦う、聖騎士イングリッドとやらのことも、だいたい分かったぞ。ぬしの記憶を探り、映像から、体格とオーラ、そして身のこなしを分析して、ある程度の戦闘力は分かるからな」


「すげー……さすが、封印されし最強の人造魔獣……の頭脳担当」


「ふふふ、よさんか馬鹿者。照れる」


 馬鹿者と言いながらも、ジガルガは非情に嬉しそうだ。

 長い間ずっと封印されていて、自らの知識と能力を活かして褒められたのは初めてなのだろう。


 なんにしても、これは頼もしい参謀だ。

 俺は、意気揚々と尋ねる。


「それでそれで、どうすれば、俺はイングリッドに勝てる?」


「ふふふ、無理だ」


「はっ?」


「ふふふ、ぬしの勝ち目は、万に一つもない。実力が違いすぎる」


「そ、そんなぁ~」


「ふふふ、あの女、相当な猛者よ。作戦でどうにかなるレベルではない」


「おい、いつまで笑ってんだ」


「ぬっ、すまぬ。褒められたのが嬉しくてつい……」


 ジガルガは、緩みっぱなしだった口元を、やっとこさキュッと引き締める。

 俺は、不満を隠すことなく、ぶーたれた。


「あーあ、なんだよ。せっかく、戦闘技術の差を埋める最高の作戦を考えてくれると思ったのに」


「仕方あるまい。ぬしとあの女では、戦闘技術がどうこう言う前に、オーラが桁違いなのだ。勝負にならんよ」


「ふーん……そういえば、イングリッドも言ってたけど、そのオーラってなに?」


「分かりやすく言うなら、闘気そのもののことだ」


「その、闘気そのものっていうのが、そもそも良く分かんないんだけど……」


「闘気というのは、戦いの際、あるいは平常時でもだが、生き物の体内から溢れるエネルギーが、強い力の……」


「あー、ストップストップ! 難しい理屈はいいから、いっちばん簡単な感じで教えて」


 ノリノリで説明してたのに制止され、やれやれと肩をすくめるジガルガだが、出来の悪い生徒を辛抱強く教える先生のように苦笑を浮かべて、素直に俺の要求に応えてくれた。


「まったく、困ったやつだ。そうだな……理屈をすっ飛ばし、もっともわかりやすく言うなら、オーラが強ければ強いほど、そいつは強いということだ。強力なオーラは、攻撃力も防御力も倍増させるからな。どうだ、これで理解できたか?」


「はい、大変分かりやすいです、先生。ちなみに、俺とイングリッドって、そのオーラがどれくらい違うの?」


「言っただろう。桁違いだよ。そうだな……ぬしのオーラを、仮に数字で表すなら、2068といったところか」


「ほうほう」


「一般的な警備兵のオーラが500前後であることを考えると、なかなか悪くない数値だ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白いです。物語がしっかりしていて、現実的で堅実な世界観がすごくいいと思います。
2020/11/20 07:57 退会済み
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